まだ記憶に新しい2024年のドバイ・ワールドカップ(首G1)では、日本最強のダート王者ウシュバテソーロが連覇に挑戦しましたが惜しくも2着に敗れました。
そんな日本のダート最強馬ウシュバテソーロに土を付けたのが、地元アラブ首長国連邦(以下UAE)のローレルリバー(牡6)です。
そして、ローレルリバーに騎乗していたT(タイグ).オシェア(以下オシェア)騎手が、短期騎手免許を取得し、2024年4月22日からの約2か月間、来日することが決まったと報道されました。
ただ、新たな海外騎手が来日する嬉しさの半面、UAEを拠点とするオシェア騎手って誰?という方がほとんどではないかと思います。
そこで今回は、オシェア騎手について紹介します。
UAEでトップジョッキーとして活躍するオシェア騎手とは、いったいどんな実力を持った騎手なのでしょうか。
- オシェア騎手の基本的な生い立ちや若い頃の活躍
- オシェア騎手の実績や勝ち鞍
- 騎手の日本における活躍
- 騎手の周囲で囁かれた引退話の真相
T.オシェア騎手とは?
オシェア騎手は、アイルランドのマロー町の外れにあるドロマヘインという小さな村で生まれました。なお、生年月日は不明ですが、現在42歳と公表されています。
そんなオシェア騎手は、両親と4人の姉妹、2人の兄弟といった9人家族の中で育ちますが、競馬に携わることのない家庭だったといいます。
ただ、両親と一緒に馬に関わるイベントに参加した時から競馬に興味を持ち始め、中学校の進路指導の先生に相談したことで騎手としての人生をスタートさせました。
その後、1998年に騎手課程の学校を無事に卒業。見習い騎手として、のちに妻となるデビー・ピアースさんと同厩舎に配属され、騎手としての腕を磨きます。
そして、2001年に見習い騎手としての年間チャンピオンに輝くと、当時のUAEのシェイク・ハムダン・ビン・ラシード・アール・マクトゥーム殿下から、全額負担旅行という形でドバイに招待を受けました。
それがキッカケとなり、オシェア騎手はUAEを拠点として20年以上も騎手生活を送ることになるのです。
ちなみにオシェア騎手が、UAEシーズンの中で1番好きな部分は?との質問に対し、ワールドカップの日の夜と答え、また、これまで活躍した競走馬に乗れるとしたら、どの競走馬に乗りたいかとの質問に対しては、ドバイミレニアム・フランケル・エネイブルの3頭を挙げました。
まさにUAEで大好きな景色の元で世界一に輝いたオシェア騎手にとっては、最高の夜になったのではないでしょうか。
なお、オシェア騎手の今回の短期騎手免許期間は、2024年4月27日から同年6月26日となっています。
また、身元引受調教師は、美浦の名門・国枝栄厩舎で契約馬主は、DMMドリームクラブ株式会社です。
これまでの実績や主な勝鞍は?
オシェア騎手の1番の実績といえば、UAEで12回もリーディングジョッキーに輝いていることでしょう。また、UAEでこれまでに約800勝を挙げています。
そんなオシェア騎手が脚光を浴びることとなったのが、先日行われたドバイワールドデーです。
オシェア騎手は、第9レースとなるメインレース・ドバイワールドカップの前哨戦・第6レースのドバイゴールデンシャヒーン(首G1)で9番人気だったタズに騎乗し、2着のドンフランキーに6馬身半差をつけて勝利を飾り、メインレースに弾みをつけました。
そして、迎えたドバイワールドカップでは、6番人気だったローレルリバーに騎乗し、レースでは積極的にハナを奪って、内ラチ沿いに付けるとそのまま逃げ切り態勢を図り、2着のウシュバテソーロに8馬身半差となる圧巻のゴールを見せつけ、賞金総額1,200万ドル(約18億円)のドバイワールドカップを制したのです。
これに対してオシェア騎手は「ディファンデッドを除いて、あのレースには多くの差し馬がいました。他のジョッキーはおそらく、ローレルリバーは2,000メートルを走るのが初めてで最後までは持たないだろうと考えたのではないでしょうか」と勝利の要因をコメントしています。
まさにローレルリバーを知り尽くし、信じ切った騎乗スタイルが功を奏す形で勝利に結びついたともいえる一戦でした。
もちろん、オシェア騎手にとっては地元なので、コースを熟知していたことが勝利への後押しになったともいえます。
ただ、いくらコースを熟知しているだけで勝てるような甘いレースではありませんので、コースを熟知しながら他馬との兼ね合いも考え騎乗したオシェア騎手の作戦勝ちだったといえるでしょう。
そして、この日のメイダン競馬場でG1を2勝する快挙を達成すると、その2日後には休む間もなく、はるか格下のアルアイン競馬場で純血のアラブ馬に騎乗してレースに出走しています。
その絶え間ない決意と努力、勝利への強い意志、そして、この国の5つの競馬場に関する抜け目のない知識の賜物こそが、UAEの競馬史上もっとも勝利数の多いオシェア騎手が、成功を収めた秘訣ともいわれています。
そのような人間性に騎手としての腕前を兼ね備えたオシェア騎手が、短期騎手免許で来日した際は、どのような活躍を見せてくれるのか、今から楽しみですね。
日本での実績は?
オシェア騎手の来日初勝利は、短期騎手免許取得初日となった4月27日、自身6戦目となった東京8レースにて、1番人気のジャミーレに騎乗し見事達成しました。
また、重賞では京王杯スプリングカップ(G2)と青葉賞(G2)に騎乗しましたが、いずれも勝つことはできませんでした。
特に青葉賞では、1番人気のへデントールに騎乗しましたが8着に敗れています。ただ、敗れはしたもののG2レースで1番人気に支持される馬に騎乗依頼があったことは、それだけ実力が認められている証拠だと思います。
そんなオシェア騎手の日本での成績は、来日初騎乗となった4月27日から2024年5月26日終了時点で72戦(6-6-4-56)という成績を残しています。
また、オシェア騎手は、ここまでの騎乗すべてが東京競馬場のみとなっています。
次にその他の数字をみてみますと、勝率は8.3%、連対率16.7%、複勝率が19.4%と決して悪いものではなく、さすがはドバイワールドカップを制した実力派といったところでしょうか。
まだ、騎乗回数が少ないため一概にはいえませんが、単純に勝率や連対率を現時点でのリーディングに当てはめてみると、11位〜15位あたりでしょうか。
個人的には、丹内祐次騎手や藤岡佑介騎手など、”いぶし銀”といったイメージがあります。
今のところ、日本の競馬には特に苦手意識などは見られず、順応に乗りこなしていると思います。
ここまで、G1レースでの騎乗はありませんが、まだ短期騎手免許期間中に騎乗するチャンスはあると思いますので、日本での重賞初制覇がG1レースとなれば、ドバイの夜景を愛するオシェア騎手ならではのドラマチックな展開になるかも知れませんね。
まとめ
今回は、オシェア騎手について紹介しました。
短期騎手免許にて、初来日となったオシェア騎手は、日本で体験する出来事がとても刺激的に感じ、競馬以外になると、少年のように楽しく日本を散策しているそうです。
また、オシェア騎手の騎乗スタイルは、アメリカンでもなく、ヨーロピアンでもない、ドバイでの競馬に合わせアレンジされた独特の騎乗スタイルだといわれています。
そのためか、ゲート出しがとても上手く先行集団に付けて早めに押し切るレースが多いとの印象を受けました。
今後、日本での騎乗に慣れ、その速さにより一層の磨きがかかれば、馬券的にも面白い存在になりそうです。
そんなオシェア騎手の独特な騎乗スタイルにもぜひ注目してみてください。