前回、L(ルーク).モリス騎手の記事をまとめた際、冒頭で「短期騎手免許」について、少しお伝えしました。
そこで皆さんに質問です。
これまで短期騎手免許で来日した外国人騎手の中で1番に思い出されるのは誰でしょうか?
これには賛否両論があると思いますが、私的にはO(オリビエ).ペリエ騎手の声が多いかと思っています。
なぜならペリエ騎手の日本実績が、これまで短期騎手免許で来日したジョッキーの中でもズバ抜けて凄いからです。
ペリエ騎手といえば、2002年、2003年の有馬記念(G1)でシンボリクリスエス、翌2004年にはゼンノロブロイで史上2頭目となる“秋古馬三冠”を成し遂げたことで有馬記念3連覇の偉業も達成し、日本でも長きにわたり活躍し続けました。
※秋古馬三冠とは
同年内に開催される天皇賞(秋)・ジャパンカップ・有馬記念の3レースの総称です。
類似語に大阪杯・天皇賞(春)・宝塚記念の3レースをまとめた春古馬三冠もあります。
もちろん、日本だけではなく母国フランスの凱旋門賞(仏G1)は通算4勝、他にもイギリスダービー(英G1)などの大レースを数多く制しており、世界を代表するトップジョッキーの1人であることは言うまでもありません。
余談ですが、実娘のM(メガーヌ).ペリエさんも2020年に騎手デビューしています。父娘でジョッキーになることも凄いですね。
そんなペリエ騎手の名は日本で大いに浸透していますが、昨今では、D.(ダミアン)レーン騎手がペリエ騎手のような活躍に近いのではないでしょうか。
現在、短期騎手免許で初来日したジョッキーたちにも長期間にわたり日本で大暴れするほどの活躍を期待したいですね。
さて、前置きが長くなりましたが、今回は2022年にイギリスダービーを制したR(リチャード).キングスコート騎手(以下、キングスコート騎手)をご紹介します。
イギリスの名手といわれているキングスコート騎手。その実力や実績はどういったものなのかを紹介していきます。
- R.キングスコート騎手の生年月日や経歴が分かります。
- R.キングスコート騎手の海外における主な活躍が分かります。
- R.キングスコート騎手の日本における実績が分かります。
R.キングスコート騎手とは?
- 国籍 イギリス
- 出身地 イングランド
- 生年月日 1986年7月19日
- 身長 165cm
- 体重 54kg
キングスコート騎手は1986年7月19日、イギリス生まれの現在37歳です。
身長は165センチメートル、体重54kgで今回来日した5名のジョッキーの中では最年長になります。
もともと競馬とは無縁の家庭で育ちましたが、幼少期にイギリスの海辺の町ウェストン・スーパー・メアのビーチで母親が飼っていたポニーに乗ることがきっかけとなり、16歳の時にイギリス競馬学校に通うことになりました。
なお、1日に最大8時間も砂の上で乗馬をするほどの努力家だったそうです。
その後、現役時代にイギリスダービーを制したロジャー・チャールトン調教師の元で見習い騎手となり、2004年に騎手デビューしました。
そして、2008年にはクラシックブレードに騎乗しジュライS(英G2)で重賞初制覇を成し遂げると、2014年9月に、アイルランドのカラ競馬場で行われたアイルランド・セントレジャー(愛G1)にてブラウンパンサーでG1を初勝利しました。
しかし、同年11月に起きた落馬負傷により肘を5か所、左手首と鎖骨を骨折、さらには肺に2つの穴が開くほどの重傷を負いました。
ところが、翌2015年3月には肘に金属プレートを入れた状態でブラウンパンサーに騎乗し、ドバイゴールドC(首G2)を勝利、完全復活を果たしました。驚くべき回復力と忍耐力の持ち主ですね。
また、私生活においてはパティシエの奥様と結婚されておりお二人の息子さんがいます。競馬以外ではバイクに乗ることも趣味だそうで、“競馬場内外のスピードの達人”との異名があるほどです。
さらに、たくさんのタトゥーを入れていることもキングスコート騎手の個性ある特徴の1つといえそうです。
なお、今回の短期免許期間は1月6日〜2月29日までで身元引受人は美浦の木村哲也調教師で契約馬主は有限会社サンデーレーシングとなっています。
これまでの実績や主な勝鞍は?
キングスコート騎手の近年成績を見てみますと、2021年には55勝を挙げイギリスのリーディング17位。2022年には69勝でリーディング8位の成績を収めました。
そして、2023年シーズンは50勝でリーディング23位と低迷してしまっています。
※成績は、JRAのホームページより
そんなキングスコート騎手ですが、これまでG1を4勝しています。中でも2022年のイギリスダービーでナサニエル産駒のデザートクランに騎乗した際、1番人気に応える形で初制覇。
見事、デザートクラウンを3戦無敗にてダービー馬に導き、キングスコート騎手自身も2018年以来2度目の挑戦にてダービージョッキーの称号を手に入れました。
また、同年10月15日に行われたチャンピオンS(英G1)では当時10戦無敗を誇っており、断然の1番人気だったバーイードに対し、キングスコート騎手はベイブリッジを勝利に導きました。
当時の世界最強馬との呼び声高いバーイードを初めて土をつける形での勝利は、世界の競馬をアッと驚かせた好騎乗でした。
さらに2023年1月半ばから約1か月間をアメリカはフロリダ州マイアミで騎乗し、そして今年は日本での騎乗を選択しました。
ヨーロッパ競馬がオフシーズンの中でも世界各地に飛び回り騎乗をし続けるキングスコート騎手は、まさに競馬とバイクを愛するジョッキーといえそうですね。
日本での実績とは?
年明け早々に美浦トレセンに顔を出したキングスコート騎手は「施設がすごい。馬がキビキビと走っていて感動しています」とコメントしました。
また、日本の競走馬で印象に残っているのはイクイノックスだそうです。
さらには「日本競馬は競争が激しいので、どこまでやれるか不安はあるが、楽しみですね。勝つことだけを考えて頑張りたい」ともコメントされました。
※コメントは全てnetkeiba.comから引用
そんなキングスコート騎手の日本での実績は、1月20日までで30戦し、2着2回、3着4回と今のところ日本での勝ち星はありません。しかし、初勝利に向けて全くチャンスがなかったわけではなりません。
1月8日の中山5Rの3歳新馬では、少し抜けた存在だった1番人気のジュビランス(牝3)は3着、同月13日の中山11RのニューイヤーS(L)では、圧倒的1番人気だったダノンティンパニー(牡6)は5着と残念ながら勝利に導けなかったことは、キングスコート騎手自身が掲げた不安が的中したのかも知れません。
そして、翌21日に行われた中山5Rの未勝利戦では4番人気のカムフライで日本での初勝利を掴みました!
その日は7Rの1勝クラスでも7番人気のアヴィオンドールを勝利に導いており、一度勝利を掴んでからはレース勘を取り戻しつつあるように思います。
翌週の27~28日は人生初の東京競馬でしたが、28日に行われてたセントポーリア賞でペッレグリーニを勝利に導きました。
また、前日の東京7R(1勝クラス)では11番人気のダブルスナッチを3着に導いているように、調子を上げてきていますね。
重賞タイトルにはまだ届いていないものの、2月4日に行われるきさらぎ賞(G3)では有力馬のビザンチンドリームに騎乗するためチャンスもあります。
イギリスのダービージョッキーとして、日本の競馬ファンに“イギリスの名手・キングスコートここにあり!”との存在感をみせてほしいですね。
まとめ
今回は、イギリスのダービージョッキーであり、名手キングスコート騎手をご紹介しました。
ちなみに250年ほどの歴史あるイギリスダービーですが、これまでに最多勝記録は9勝を挙げている伝説の名ジョッキー、L(レスター).ピゴット騎手です。
1970年のイギリス三冠馬ニジンスキーをはじめ多くの名馬たちに騎乗し、通産の勝利数は4493勝。これはイギリスのみの勝ち星で他国を含めれば、5000勝を超えます。
なお、日本ダービー(G1)を史上最多の6勝を挙げている日本のレジェンド武豊騎手や世界ナンバーワンジョッキーとして呼び声高いL(ランフランコ).“フランキー”・デットーリ騎手など、世界的に大活躍する多くの騎手たちが幼少期に憧れた騎手として名を挙げるほど、ピゴット騎手は20世紀を代表する名騎手です。
また、日本でお馴染みのR(ライアン).ムーア騎手は3勝、デットーリ騎手が2勝です。そう考えると時代は違っても9勝がいかに凄すぎるかが分かります。
もちろん歴代勝利騎手には他にも名騎手がズラリと並んでいます。
今後、キングスコート騎手には歴代の名手たちと肩を並べるような存在になってほしいですね。