「カルストンライトオが逃げるぞ」最速のスプリンターの生涯を解説

2024年2月7日。

カルストンライトオが老衰で亡くなりました。

最近競馬を覚えた人は名前も聞いたことがない馬だと思います。

現役時代にスプリンターズステークスを制している馬ですが、主なG1勝ち鞍はこの1レースのみです。

他にも複数のG1を手にしている馬は多数いるので知名度が高くないにも無理はありません。

しかし、カルストンライトオには今だ打ち破られていない記録があります。

それは、芝1,000mにおけるレコードホルダーということです。

ここでは、カルストンライトオの命日を偲び、過去の戦績や偉業を解説していきます。

※年齢は新表記で表しています。

この記事で分かること
  • カルストンライトオの基本的な情報が分かります。
  • カルストンライトオの戦績が分かります。
  • カルストンライトオが競馬界に残した影響が分かります。
目次

カルストンライトオの概要

生年月日1998年5月3日
死没2024年2月7日
性別
ウォーニング
オオシマルチア
母父クリスタルグリッターズ
生産牧場大島牧場
戦績36戦9勝
主な勝ち鞍2004年スプリンターズステークス(G1)
2002・2004年アイビスサマーダッシュ(G3)
獲得賞金4億2,204万4,000円
登録抹消日2005年11月2日

カルストンライトオの血統

父ウォーニングはイギリス生まれの競走馬で、イギリスのG1競走サセックスステークスやクイーンエリザベス2世ステークスを制しています。

種牡馬としては英日で共用され、日本ではカルストンライトオ以外に2004年の高松宮記念(G1)を制したサニングデールがウォーニングの仔です。

また、現在兵庫競馬に所属し、2023年のJBCスプリントをはじめ、数多くの交流重賞を制しているイグナイターの母父もウォーニングでした。

母のオオシマルチアは現役時代に2勝クラスまでは勝利したものの、重賞には生涯出走することなく引退しています。

母の父クリスタルグリッターズはアメリカの競走馬で、現役時代は中距離G1のイスパーン賞を連破しました。

種牡馬としてははじめはフランス、のちに日本へ輸出されており、主な産駒に菊花賞馬のマチカネフクキタルやダートG1を複数制したアブクマポーロがいます。

カルストンライトオの戦績

ここからはカルストンライトオの戦績について紹介したいところですが、その前に同期にどのような馬がいたか簡単に紹介します。

カルストンライトオは1998年生まれの馬で、同期のクラシックホースにはアグネスタキオンやジャングルポケット、マンハッタンカフェがいます。

それ以外の馬で有名なのが武蔵野ステークスでダート馬としての素質を開花したクロフネが挙げられるでしょう。

これらの馬は種牡馬としても活躍しており、現在ターフで活躍している馬のなかはこれらを先祖に持つ馬も少なくありません。

しかし、カルストンライトオはデビュー時から短距離に特化したローテを組んでいたため一戦交えることはありませんでした。

リニューアルした新潟競馬場

カルストンライトオはデビュー当時から短距離戦を軸にしたローテーションが組まれました。

3歳春までは3勝、そのなかには現在G3競走に指定されている葵ステークスもあり、短距離馬としての堅実に結果を残していました。

そして、この年は短距離馬にとって大きな進展がありました。

新潟競馬場が大幅リニューアルオープンしたのです。

実は、かつての新潟には直線芝1,000m、いわゆる”千直“コースが存在しませんでした。

ところが、1999年秋にスタンド改修工事を行い、約1年半の工事期間を経てリニューアルした新潟にはこれまで見たことがないような芝コースが設けられたのです。

これがいまなお使用されている千直コースです。

そして、リニューアルと同時に日本初の直線1,000mで行われるアイビスサマーダッシュ(G3)が創設されました。

記念すべき第一回開催にカルストンライトオも出走し、1番人気に支持されましたが3着に敗れています。

しかし、1年後、カルストンライトオは再びアイビスサマーダッシュにチャレンジします。

2002年アイビスサマーダッシュ、伝説が生まれる

第二回アイビスサマーダッシュ。

カルストンライトオは2年連続で出走しました。

この年の1番人気馬は前年の安田記念(G1)で15番人気の低評価ながらも2着に入線したブレイクタイムです。

ブレイクタイムは1年近い休養を挟んでいましたが、復帰戦となるNSTオープン(OP)で2着入りしたことで1番人気に支持されます。

対するカルストンライトオは2番人気でしたが、生粋の短距離馬としてここでも注目されました。

カルストンライトオは13頭立ての12番、8枠に入ります。

スタートをうまく飛び出したカルストンライトオはロスなく外ラチ沿いを確保し、そのまま先頭に立って一気に突き抜け、最後は真ん中から追撃するブレイクタイムを寄せ付けずに優勝したのでした。

カルストンライトオの走破時計を1F(ハロン)ごとに見てみると、下記の通りになります。

  • 1F=12秒0
  • 2F=9秒8(!)
  • 3F=10秒2
  • 4F=9秒6(!)
  • 5F=12秒1

中間3Fの時計は29秒6(!)、1F辺り最速9秒6(!!)という驚異的な数値を叩き出して完勝したのでした。

ちなみに、1,000m53秒7を時速に換算すると約67km、100m9秒6だと瞬間時速は75kmに上ります。

これは、騎手を乗せてのものなのでカラ馬(騎手が騎乗していない状態)ならもっと時計を出していたことでしょう。

驚異的なスピードで勝利したカルストンライトオの勝ち時計53秒7はアイビスサマーダッシュのレコードどころか、2023の時点でいまなお破られていない日本レコードとなったのでした。

カルストンライトオ、G1馬に成る

カルストンライトオといった53秒7の時計で勝ち切ったアイビスサマーダッシュのイメージが強いですが、もうひとつ、自身初のG1制覇となった2004年のスプリンターズステークス(G1)にも注目したいです。

レコード記録を樹立したのは2002年の時でしたが、カルストンライトオは2004年のアイビスサマーダッシュも制しており、この時の時計は53秒9でした。

2年前と違って1Fあたり9秒台ではなく、インパクトは2年前に劣っています。

しかし、続くスプリンターズステークスは素晴らしい走りを見せてくれました。

もともとカルストンライトオは序盤から疾走するスタイルで競馬を行っていましたが道中失速することがしばしばありました。

そのため、一部ファンから”1,200mすら長い“といわれることも珍しくなかったのです。

また、カルストンライトオは京都や新潟といった直線上に坂がほとんどない舞台で好走しています。

坂のある舞台が完全苦手というわけではありませんでしたが、どちらかというと坂のない方が押し切りやすかったのです。

スプリンターズステークスの舞台である中山は中央10馬場のなかでもっとも上り傾斜がキツく、カルストンライトオにとってはあまり好ましくない舞台です。

また、同年内の高松宮記念(G1)を制した同じ父を持つサニングデールや前年のスプリンターズステークスの勝ち馬で”聖剣”の異名を持つ追込馬デュランダルなど、メンバー層も厚かったです。

この時点でカルストンライトオは日本レコード保持者であったものの、G3止まりの馬ということで5番人気の低評価でした。

ところが、いつものように好発を切って逃げると、そのままぐいぐい後続を突き放し最後の直線では2番手以降とかなりの差がありました。

後続組、中でも昨年の覇者であるデュランダルはその名の如く、カルストンライトオに斬り込みにかかりましたがセーフティリードは簡単に縮まることもなく、4馬身差の圧勝だったのです。

この年のスプリンターズステークスは雨の不良馬場で、追込勢不利の展開でしたが、そのなかで最後まで逃げきれたのはこれまでのレースを通して大きく成長したカルストンライトオの実力があってこそだと感じています。 

まとめ その後のカリストンライトオ

見事G1タイトルを手にしたカルストンライトオは翌年もレースに挑みましたが、勝利したアイビスサマーダッシュ、スプリンターズステークスともに馬券外に敗れたことで引退、種牡馬入りします。

種牡馬入りしてからは主に地方競馬で活躍する馬を輩出しましたが、残念ながら後傾種牡馬には恵まれそうにないでしょう。

種牡馬引退後は余生を送っていましたが、2024年2月7日に亡くなりました。

20年以上前に活躍した馬なので、その名を知らない競馬ファンは少なくありません。

しかし、新潟競馬のリニューアルとともに刻んだ53秒7の日本レコードはいまなお更新されていないので、競馬新聞や出馬表で新潟芝1,000mのレコード欄を見る限りカルストンライトオの名前は刻まれ続けます。

カルストンライトオの記録は何年維持できるか、また、塗り替えるのはどの馬か、今後も注目したいです。

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