夏競馬が終わると、いよいよ秋競馬に突入します。
秋競馬といえば、春競馬と同じく毎週のようにG1レースが目白押しとなり、2歳世代では、世代トップを決める争いを演じ、3歳世代は、三冠レースの最後の一冠をかけて勝負に挑みます。
また、古馬戦線は、スプリント・マイル・中距離とそれぞれの舞台でナンバーワンを目指す戦いが繰り広げられ、最終的には、年末の大一番・有馬記念(G1)で競馬のサイクルは一年を締めくくる流れです。
よって、秋競馬のG1レースは、競馬ファンがもっとも待ち遠しい時期でもあり、毎年楽しみが尽きないと思います。
そこで今回は、秋のG1(前編)と題して、各G1レースの紹介、過去に勝利した主な名馬、さらに名レースにおいての特徴や名勝負などを振り返っていきます。
- 秋に開催されるG1(スプリンターズステークスからマイルチャンピオンシップ)の情報が分かります。
- 秋のG1の勝ち馬が分かります。
- 過去のレースの中でも特に印象深いエピソードをまとめました。
スプリンターズステークス
1967年に4歳(現3歳)以上の競走馬による重賞競走として、中山競馬場の芝1,200メートルで第1回が行われました。ちなみに勝ち馬はオペデイエンスで、勝ちタイムは現在と5秒ほど差があります。
その後、1990年には、G1レースに昇格し、施行時期も有馬記念の前週に移行。
そして、2000年には、有馬記念の前週から初秋の中山開催最終週に施行時期が変更となり、現在では秋競馬の開幕を告げるG1レースとして定着しました。
◆過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
サクラバクシンオー | 1993年、1994年 |
ロードカナロア | 2012年、2013年 |
グランアレグリア | 2020年 |
デュランダル | 2003年 |
カレンチャン | 2011年 |
※JRAメモリアルヒーローファン投票より抜粋
真のスプリント王とは?
スプリンターズステークスは、文字通り最強のスプリント王を決めるレースのため、馬齢を重ねるごとに本来のスピードを維持することが難しいと思われます。
その中でサクラバクシンオーとロードカナロア、そしてレッドファルクスの僅か3頭しか連覇していないことを考えれば、競走馬がスピードを維持することは至極至難の業だといえるでしょう。
連覇を成し遂げた競走馬こそ、真のスプリント王と呼べるのではないでしょうか。
秋華賞
1995年まで牝馬三冠レースだったエリザベス女王杯(G1)が4歳(現3歳)以上の牝馬限定戦となったため、1996年に4歳(現3歳)牝馬限定のG1レースとして新設されました。なお、開催時期は、毎年10月中旬に施行されています。
◆過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
アーモンドアイ | 2018年 |
ダイワスカーレット | 2007年 |
アカイトリノムスメ | 2021年 |
ファインモーション | 2002年 |
クロノジェネシス | 2019年 |
※JRAメモリアルヒーローファン投票より抜粋
名牝の仔と単勝オッズ1.1倍だったあの名牝
近年の秋華賞で思い出されるのは、2021年の本レースを制したアカイトリノムスメです。
この勝利で母アパパネと母仔2代制覇となったことは、まだ記憶に新しいと思います。
また、2002年に本レースを制したファインモーションは、この時の単勝オッズが1.1倍に支持されていました。
G1レースでここまでの単勝オッズは、なかなか目にすることがありません。
さらにファインモーションは、次走のエリザベス女王杯でも単勝オッズ1.2倍で連勝し、この年の最優秀3歳牝馬に選ばれたのです。
菊花賞
英国の「セントレジャー」を基に1938年創設、1948年より現名称となりました。
皐月賞(G1)や日本ダービー(G1)とともにクラシック三冠競走の最終戦として毎年10月中旬に行われています。
なお、本レースは下図のように2度の坂越えと3000mの長丁場を克服することが求められ、スピードとスタミナを必要とされることから「最も強い馬が勝つ」と称されていることも特徴的ですね。
◆過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
ディープインパクト | 2005年 |
コントレイル | 2020年 |
キセキ | 2017年 |
ナリタブライアン | 1994年 |
オルフェーヴル | 2011年 |
※JRAメモリアルヒーローファン投票より抜粋
実力差が出やすいレース?
長い歴史を持つ菊花賞では、これまで多くの名勝負が繰り広げられてきましたが、その反面、三冠がかかったレースで実力の違いをみせた三冠馬のレースも圧巻的でした。
特に史上5頭目の三冠馬に輝いたナリタブライアンは、本レースを7馬身差で快勝しています。
これは、長距離がゆえに実力の差が出やすいレースといえるかも知れません。
天皇賞(秋)
1938年から1983年まで天皇賞・春(G1)と同じく芝3,200メートルで施行されていましたが、1984年から現行の芝2,000メートルに短縮されました。
なお、施行時期は、1981年から10月下旬頃となっており、古馬中距離王決定戦に位置付けられています。
また、2000年よりジャパンカップ(G1)、有馬記念(G1)とともに「秋の古馬三冠競走」とされ、同一年に行われる3競走を全て優勝した馬に褒賞金が贈られるようにもなりました。
◆過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
アーモンドアイ | 2019年、2020年 |
キタサンブラック | 2017年 |
ウオッカ | 2008年 |
エイシンフラッシュ | 2012年 |
エアグルーヴ | 1997年 |
※JRAメモリアルヒーローファン投票より抜粋
連覇した競走馬は僅か3頭だけ
シンボリクリスエスが、2002年から2003年に史上初となる連覇を達成した16年後、アーモンドアイが初制覇すると、翌年には連覇を達成しました。
さらに近年思い出されるのは、世界レコードを叩き出したイクイノックスの連覇ですね。
なお、約90年の歴史がある本レースにおいて連覇したのは、僅かこの3頭だけです。
エリザベス女王杯
1975年に英国のエリザベス2世が来日したことを記念し、翌1976年に4歳(現3歳)の牝馬限定レースとして創設されました。
その後、1996年に牝馬競走体系の見直しにより、秋華賞が新設されたことで本レースは、牝馬三冠路線を歩んできた3歳牝馬と古馬牝馬の実績馬が、その年の女王を決めるレースとして毎年11月の上旬〜中旬にかけて行われています。
◆過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
ラッキーライラック | 2019年、2020年 |
スノーフェアリー | 2010年、2011年 |
リスグラシュー | 2018年 |
ヒシアマゾン | 1994年 |
ダイワスカーレット | 2007年 |
※JRAメモリアルヒーローファン投票より抜粋
外国産馬の意地
往年の競馬ファンなら、エリザベス女王杯と聞けば、1994年のレースが思い出されるのではないでしょうか。
この時代はまだ外国産馬にクラシック出走権が与えられていませんでした。
そのため、世代最強牝馬と謳われながらも戦うことすら叶わなかった外国産馬のヒシアマゾンが、同年のオークス馬チョウカイキャロルとのハナ差決着の末に勝利。
世代最強牝馬としても鬱憤を晴らした形となりました。
マイルチャンピオンシップ
1984年に新設されたG1レースで春に行われる安田記念(G1)とともに秋のマイルチャンピオン決定戦として位置づけられており、まさにレース名が、そのままとなっています。
なお、毎年11月中旬に開催され、3歳以上の馬に出走資格があり、外国産馬の参戦も見られます。
◆過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
グランアレグリア | 2020年、2021年 |
タイキシャトル | 1997年、1998年 |
オグリキャップ | 1989年 |
デュランダル | 2003年、2004年 |
ダイワメジャー | 2006年、2007年 |
※JRAメモリアルヒーローファン投票より抜粋
アイドルホースの執念
1989年の本レースは、オグリキャップが断然の1番人気に支持されました。しかし、レースでは、最後の直線に入ると先に抜け出した2番人気のバンブーメモリーに離されてしまいます。
そこで諦めなかったオグリキャップは、バンブーメモリーとコース内側のラチとの狭いスペースを突き、最後は2頭並んでゴール。
写真判定の結果、オグリキャップが2つ目のG1タイトルを手にしました。まさにアイドルホースの執念だったといえるレースでしたね。
まとめ
今回は、秋のG1(前編)を紹介しました。
どのG1レースもそれぞれの歴史があり、魅力あふれるものばかりです。
そして、秋競馬のG1レースでは、多くの競馬ファンは、週末を待ち侘び、何度も予想を繰り返しながら1週間を過ごします。
今年も僅か数分間のドラマに感動を与えてくれる競走馬たちの走る姿が楽しみで仕方ありませんね。