【競馬用語】しんがり人気とは?しんがり人気の意味と過去の勝ち馬を紹介

皆さんは、『しんがり』といった言葉を知っていますか?

漢字では、『殿』と書き一番最後という意味です。

これは、昔から使用している言葉で特に戦国時代では、しんがりを務める武将は、敵から見ると最前線になりますので、追手から自陣を守る役目を果たしたことから、有能な武将が務める極めて重要な役割でした。

その中でも有名なのは、ある戦いにおいて、戦国の風雲児・織田信長を守るため、しんがりを務めた明智光秀や豊臣秀吉は、その任務を全うし君主の織田信長を守り切ったことで大きく評価されました。

ただ、これはあくまでも兵法上における言葉の意味ですが、兵法以外においては、特に競馬用語として用いられることが多いです。

そこで今回は、しんがりという言葉を用いた競馬の世界において『しんがり人気』、いわゆる最低人気で勝利した競走馬について解説していきます。

懐かしの昭和の名馬から、今では種牡馬として活躍中のあの馬まで登場しますので、ぜひ最後までお楽しみください。

目次

しんがり人気とは?

競馬の世界において、しんがり人気とは、冒頭のしんがりから由来して『最低人気馬』のことを指します。

また、競馬では”一番最後”という意味合いでレースでの位置取りが最後方になった場合『しんがりは、〇〇です』とアナウンサーがよく実況していますよね。

さらにレースの位置取りだけではなく、競走結果が最下位だった場合『しんがり負け』と表現したり、レースで最後方から追い込んだ競走馬に対しては『しんがり一気の末脚』などと表現したりします。

しんがり人気とブービー人気の違いとは?

本来、ブービー賞といえば、スポーツの大会などにおいて最下位に与えられる賞ですが、日本では最下位から2番目の競技者に与えられる賞であり、最下位はブービーメーカー賞となっています。

ただし競馬において、ブービー人気いえば、最下位から2番目の人気馬であり、しんがり人気が最下位人気馬となります。これがしんがり人気とブービー人気の違いです。

ちなみにG1レースでよく話題となるのが、しんがり人気=サンドピアリス、ブービー人気=ダイユウサクですね。もし、競馬歴が浅く知らなかったという方は、是非とも覚えておいて損はないかと思います。

しんがり人気の配当格付け

続いては、これまでJRAにおける重賞レースにて、しんがり人気馬の単勝配当ランキングを表にしました。

順位配当金レース名馬名騎手名頭数/人気
1位43,0601989エリザベス女王杯(G1)サンドピアリス岸 滋彦騎手20/20
2位35,5701998日経賞(G2)テンジンショウグン江田 照男騎手12/12
3位32,5502020ダイヤモンドS(G2)ミライへノツバサ木幡 巧也騎手16/16
4位27,2102014フェブラリーS(G1)コパノリッキー田辺 裕信騎手16/16
5位22,7302000スプリンターズS(G1)ダイタクヤマト江田 照男騎手16/16

こうしてみると、しんがり人気馬の勝利はめったに見ることができません。

ちなみに重賞以外のJRA単勝歴代配当金は以下のとおりです。

順位配当金レース名馬名騎手名頭数/人気
1位56,9402014.4.264歳500万下リバティーホール西田 雄一郎騎手16/16
2位55,8701955.10.224歳オープンタチバナヒメ谷 八郎騎手8/8
3位54,9402022.2.124歳以上2勝ヤマメ小林 脩斗騎手16/16
4位52,2801961.11.113歳競走タイコウオー浅見 国一騎手15/17
5位49,4101980.11.153歳未勝利シルバーシカイナミ柴田 政見騎手16/16

重賞レースと違って、単勝倍率もかなり高くなっていることが分かります。

なお、2位と4位に関しては、今から60年も70年も前の出来事ですので、現在のレートで考えると、どれくらいの金額なのでしょうか。

ただ、これだけの単勝高配当は、数十年に1度程度出るか出ないかの確率ですので、決して狙って獲れるものではないですよね。

しんがり人気で好走した競走馬とは?

100年以上も続く日本競馬史の中にはしんがり人気で結果を残し、後世まで名前を残している馬も少なくありません。

ここからは、これまでにしんがり人気で好走した代表的な7頭について紹介していきます。

サンドピアリス(エリザベス女王杯/1989年)

前述したとおり、JRAのG1競走における単勝配当の1位は、1989年のエリザベス女王杯を単勝20番人気で勝ったサンドピアリスの430.6倍で、35年経った今でも不滅の記録としてランキングの頂点に君臨しています。

現在では、フルゲートが18頭ですので、実現不可能な20番人気という超低評価を覆す豪快な差し切りを決めて、大波乱決着の立役者となりました。

杉本アナの「しかしビックリだ!これはサンドピアリスで間違いない」と目を疑うような実況も印象的でしたね。

ちなみに父は元祖アイドルホースのハイセイコーですので、大舞台に強い血が、このレースの時だけ騒いだのでしょうか。

ダイタクヤマト(スプリンターズステークス/2000年)

続いては、2000年のスプリンターズステークスをしんがり人気で勝利したダイタクヤマトです。

ダイタクヤマトは、ここまで函館スプリントステークス2着の重賞実績しかなく、前走のセントウルステークスでも負けていたため、除外対象となっていましたが、有力馬の取り消しが相次ぎ滑り込みで出走となりました。

レースでは、最終コーナーで先頭に立つと、アグネスワールドやブラックホークといったG1馬7頭の追撃を凌ぎ切って重賞初制覇がG1初制覇となりました。

なお、鞍上は『穴男』として有名な江田照男騎手でした。

江田騎手は、1991年の天皇賞・秋(G1)のプレクラスニー以来のG1通算2勝目となり、数々の重賞を人気薄で勝っている穴男に、また1つ勲章が加わりました。

そんな江田騎手は、1990年のデビュー年に、夏の新潟記念にてブービー人気のサファリオリーブで重賞初制覇を成し遂げました。

さらには、前述の通り1998年の日経賞では、しんがり人気のテンジンショウグンを1着に導く大波乱を演出。勝ったテンジンショウグンは障害帰りの8歳馬(現表記)でしたので、穴男との異名も頷けます

そして、勢いづいた江田騎手は、その日の最終レースでも11番人気のワールドピアザを1着に持ってきて連続波乱を演出しました。

このように江田騎手が、穴男と呼ばれている所以は、人気馬だけではなく、人気のない馬で数々の栄光を手にしてきたところにあったのですね。

ユウフヨウホウ(中山大障害/2001年)

続いては、あまり馴染みのない競走馬かも知れませんが、2001年の中山大障害(JG1)を10頭立てのしんがり人気で勝ったユウフヨウホウです。

このレースには、当時の障害チャンピオン馬だったゴーカイが圧倒的1番人気でしたが、レースでは、上位人気馬が次々と競走中止していく中で、早め先頭に立ったゴーカイを最後の直線でユウフヨウホウが一気に差し切り、最後は2馬身差をつけて勝利。鞍上の今村康成騎手は、重賞初制覇が障害G1となりました。

ちなみにゴーカイは、ユウフヨウホウの半兄にあたる血統ですので、1番人気が兄、しんがり人気が弟、そして、兄弟でのワンツーフィニッシュ。このようなところにも競馬のロマンが感じられますね。

しかし、その後のユウフヨウホウは一度も勝つことはなく、2005年の阪神スプリングジャンプ(JG2)を最後に引退しました。

結局、生涯で勝利したのはわずかに2回だったことを考えると、一発屋であったといえます。

余談ですが、手綱を取った今村康成騎手は、2022年の新人賞を獲得し女性騎手として年間最多勝利数も記録した今村聖奈騎手のお父さんです。

コパノリッキー(フェブラリーステークス/2014年)

2014年のフェブラリーステークスをしんがり人気で制したコパノリッキーです。

コパノリッキーは、1/2の抽選を何とかクリアし、ギリギリで出走枠に滑り込んだため、しんがり人気扱いでしたが、レースでは、内ラチ沿いで驚異の粘り腰を発揮します。

そして、ホッコータルマエやペルシャザールといった強豪馬の追撃を振り切る形でゴールし、大観衆の度肝を抜きました。

また、鞍上の田辺裕信騎手もこれがG1初制覇となり、現在の活躍につながっています。

ちなみにコパノリッキーは、翌年のフェブラリーステークスで武豊騎手を背に迎え、1番人気にて同レース史上初の連覇を達成しています。

まさに競馬はやってみないと分からないということを見せつけた1頭でした。

ミナレット(ヴィクトリアマイル/2015年)

しんがり人気で勝利したわけではないですが、2015年のヴィクトリアマイル(G1)で超大波乱演出の立役者となったのが、3着に入ったしんがり人気のミナレットです。

なお、1着は5番人気のストレイトガール、2着には12番人気のケイアイエレガントが入ったため、3連単の配当額は、G1レース史上最高払戻額となる2,000万を超えています。

そして、この時のミナレットの鞍上は『穴男』江田照男騎手でした。

さらにミナレットの凄いところは、デビュー戦でも単勝14番人気といった、低評価を覆す勝利で大波乱を演出したことです。この時の3連単払戻額は何と2,900万円を超え、2024年時点でJRA史上歴代1位の3連単最高払戻額となっています。

ミライヘノツバサ(ダイヤモンドステークス/2020年)

ミライヘノツバサは、まだ記憶に新しい2020年のダイヤモンドステークスを単勝オッズ325.5倍といった、しんがり人気で勝利しました。

レースでは、中団のインコースで脚を溜めて、最後の直線では、馬群を割って力強く伸びをみせました。そして、最後は外から2着に入ったメイショウテンゲンの強襲をハナ差で凌いだところがゴール。

2017年の日経賞では、シャケトラの2着もあった実力馬でしたが、その後、1年半ものブランクを経てからは当時の輝きが失せてしまい、凡走が続いていました。

そんな中で同レースの大金星は、ステイヤーとしての資質の高さを示す結果となりました。

現在は引退し、東京競馬場にて、その美しい芦毛の馬体を揺らしながら、誘導馬として活躍しています。

サイモンラムセス(鳴尾記念/2020年)

最後に紹介するのは、重賞勝ちこそはありませんが、10歳まで息長く活躍したサイモンラムセスです。

サイモンラムセスの生涯成績は68戦5勝で地方馬と引けを取らないくらい”走りに走り”続けました。そして、引退レースとなったのが、2020年の鳴尾記念(G3)です。

10歳と高齢馬でもあり、近走の成績をみても決して好走できる要素が、ほとんどなく、単勝オッズは600倍を超えていました。もちろん、しんがり人気です。

しかし、最後の意地を見せたサイモンラムセスは、それこそ”しんがり”からの競馬で最後の直線では、強烈な末脚をみせて4着に食い込みました。

なお、現役時代にみせた健全なところが評価され、引退後は日高のサンシャイン牧場にて種牡馬入りし、2022年にはニシノヘレンドとの間に牝馬が誕生しています。

競馬のしんがり人気のまとめ

今回は、しんがり人気の勝利と題して、配当面や競走馬を紹介しました。

やはり、強烈なインパクトを残しただけあってか、ある意味どの競走馬も知名度が高かったですね。そして、目が眩むほどの高配当にも驚愕の連続でした。

そんな”しんがり人気”で勝利した競走馬たちは、ある意味、日本競馬の歴史に大きく名を刻んだと思います。

この先、高配当が飛び出すたびに彼らの馬名が呼ばれたり、多くの競馬ファンに思い出され、話題になれば、本当に嬉しいですね。

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