競馬界において「三冠馬」とは、3歳馬限定のクラシック三冠レース――皐月賞、日本ダービー、菊花賞をすべて制した競走馬を指します。その中でも特に価値が高いとされるのが「無敗での三冠達成」です。
2024年終了時点で、無敗で三冠を制した牡馬はわずか3頭です。
それが、シンボリルドルフ、ディープインパクト、コントレイルです。
また、牝馬クラシック三冠(桜花賞、オークス、秋華賞)においても「無敗三冠牝馬」を達成した馬が1頭、デアリングタクトがいます。
この記事では、彼ら(彼女)がいかにして偉業を達成したのか、各馬の経歴とその後の評価を交えて解説します。競馬初心者の方も、歴史に名を残す名馬たちの歩みをぜひご覧ください。
【2025年版】無敗の三冠馬4頭

三冠馬の中でも「無敗」で三冠を達成することは、極めて稀な偉業です。
日本競馬の長い歴史において、その栄光を掴んだのは牝馬のデアリングタクトも含めたとしてもわずか4頭だけです。
ここでは、無敗のままクラシック三冠を制した伝説の競走馬たちを、時代順にご紹介します。
シンボリルドルフ

生年月日 | 1981年3月13日 |
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性別 | 牡 |
父 | パーソロン |
母 | スイートルナ |
母父 | スピードシンボリ |
生産牧場 | シンボリ牧場 |
戦績 | 16戦13勝 |
主な勝ち鞍 | クラシック三冠(G1) 1984年 有馬記念(G1) 1984・1985年 天皇賞(春)(G1) 1985年 ジャパンカップ(G1) 1985年 日経賞(G2) 1985年 弥生賞(G2) 1984年 セントライト記念(G2) 1984年 |
獲得賞金 | 6億8,482万4,200円 |
登録抹消日 | 1986年12月17日 |
シンボリルドルフは、1984年に日本競馬史上初の「無敗の三冠馬」となった名馬です。
父はヨーロッパの名血・パーソロンで、デビューから一度も敗れることなく皐月賞、日本ダービー、菊花賞を制覇し、皇帝の異名をほしいままにしました。
その後もジャパンカップや有馬記念などで好成績を残し、16戦13勝という驚異的な成績でターフを去りました。
特に有馬記念では、当時の最強メンバー相手に1番人気で堂々勝利し、名実ともに時代の頂点に立った存在です。
引退後は種牡馬としても活躍し、無敗でダービーを制したトウカイテイオーを送り出しました。
日本競馬を次のステージへ導いた王道の始まりとして、その偉業はいまも語り継がれています。
ディープインパクト

生年月日 | 2002年3月25日 |
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性別 | 牡 |
父 | サンデーサイレンス |
母 | ウインドインハーヘア |
母父 | Alzao |
生産牧場 | ノーザンファーム |
戦績 | 14戦12勝 |
主な勝ち鞍 | クラシック三冠(G1) 2005年 天皇賞(春)(G1) 2006年 宝塚記念(G1) 2006年 ジャパンカップ(G1) 2006年 有馬記念(G1) 2006年 弥生賞(G2) 2005年 神戸新聞杯(G2) 2005年 阪神大賞典(G2) 2006年 |
獲得賞金 | 14億5,455万1,000円 |
登録抹消日 | 2006年12月25日 |
2005年、無敗で三冠を制したのがディープインパクトです。
サンデーサイレンス産駒として登場し、デビューから圧倒的なパフォーマンスを披露しました。
そして、皐月賞では馬群の外から一気に差し切り、ダービーではラスト3ハロン33.4秒という末脚で後続を完全に置き去りにしました。
菊花賞では距離の壁をものともせず圧勝し、無敗のまま三冠達成という偉業を成し遂げます。
その走りは「異次元」と称され、競馬ファンだけでなく一般層にも絶大な人気を誇りました。
引退レースでは有馬記念を制し、有終の美を飾ったあと、わずか4歳でターフを去りました。
引退後は種牡馬入りしましたが、ジェンティルドンナ、サトノダイヤモンド、コントレイルなど、多くのG1馬を輩出し、種牡馬としても日本競馬の歴史を塗り替える存在となりました。
コントレイル

生年月日 | 2017年4月1日 |
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性別 | 牡 |
父 | ディープインパクト |
母 | ロードクロサイト |
母父 | Unbridled’s Song |
生産牧場 | ノースヒルズ |
戦績 | 11戦8勝 |
主な勝ち鞍 | クラシック三冠(G1) 2020年 ホープフルステークス(G1) 2019年 ジャパンカップ(G1) 2021年 神戸新聞杯(G2) 2020年 東京スポーツ杯2歳ステークス(G3) 2019年 |
獲得賞金 | 11億9,529万4,000円 |
登録抹消日 | 2021年12月4日 |
2020年に無敗の三冠馬となったコントレイルは、ディープインパクトの直仔です。
父の遺伝子を色濃く受け継ぎ、デビューから圧巻の走りで世代トップに君臨しました。
皐月賞ではライバルのサリオスとの叩き合いを制して勝利し、日本ダービーでは外から追い上げて3馬身差の完勝、そして迎えた菊花賞ではアリストテレスとの壮絶な叩き合いを制し、無敗での三冠を達成します。
古馬戦線では苦戦を強いられる場面もありましたが、最終戦となったジャパンカップでは世界の強豪は一つ年下のダービー馬であるシャフリヤールを押さえて有終の美を飾りました。
通算11戦8勝という成績でターフを去り、2022年からは種牡馬として新たな道を歩んでいます。
2025年の夏に産駒がデビューしますが、父としての未来にも大きな期待がかかります。
デアリングタクト

生年月日 | 2017年4月15日 |
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性別 | 牝 |
父 | エピファネイア |
母 | デアリングバード |
母父 | キングカメハメハ |
生産牧場 | 長谷川牧場 |
戦績 | 13戦5勝 |
主な勝ち鞍 | 牝馬三冠(G1) 2020年 |
獲得賞金 | 6億4,413万2,400円 |
登録抹消日 | 2023年10月12日 |
デアリングタクトは2020年に、牝馬クラシック三冠(桜花賞・オークス・秋華賞)を無敗で制覇した歴史的名牝です。
しかも、キャリアわずか3戦目で臨んだ桜花賞では重馬場を苦にしない走りで豪脚一閃を決め、競馬ファンに大きな衝撃を与えました。
続くオークスでは道中進路を失いつつも、包囲網を割って進出して差し切り勝利をつかみ、秋華賞では、過去の三冠牝馬たちと同じく短い距離で立ち回れるか囁かれたものの、内目から立ち回り、無傷のまま三冠牝馬競走制覇という偉業を成し遂げました。
ちなみに、先に取り上げたコントレイルも同年のクラシック三冠を勝利しているので、この年は牡・牝ともに無敗の三冠馬が誕生した偉大なる年として、今もなお競馬史に刻まれています。
その後は繋靭帯炎や長期休養などのアクシデントに悩まされながらも、宝塚記念やジャパンカップで3着など、強豪牡馬相手にも堂々たる走りを披露し牝馬としては稀有な粘り強さと勝負根性を兼ね備えました。
2025年時点で無敗の三冠牝馬を成し遂げた馬は、デアリングタクトだけですし、今なお高い評価を受けています。
無敗の三冠馬のまとめ

無敗で三冠を達成した競走馬は、競馬の長い歴史の中でも数えるほどしか存在しません。シンボリルドルフが1984年に初の偉業を成し遂げて以降、ディープインパクト、コントレイルと続きましたが、その間には数多くの挑戦者が涙をのんできました。
また、牝馬として唯一無敗三冠を成し遂げたデアリングタクトの存在も忘れてはなりません。
どの馬も時代を象徴するような強さと個性を持ち、多くのファンの心をつかみました。
今後も“無敗”という究極の勲章を掲げる新たな三冠馬が現れるのか。競馬のロマンは尽きることがありません。