2022年、金沢競馬で発生した「特払い」がYahoo!リアルタイム検索でトレンド入りしました。
普段あまり耳にしない”特払い”という言葉に、多くのファンが「都市伝説じゃなかったのか」と驚きを見せたのです。
実はこの特払い、競馬ファンでも知らない人が多い超レアな払い戻し制度です。
レースが成立しているのに、誰も当たらなかったときだけに行われる特別なルールで、全国でも数年に一度起こるかどうかという珍しい現象。
この記事では、特払いの仕組みから実際に起こった事例、そしてJRA(中央競馬)で50年以上発生していない理由まで、分かりやすく解説していきます。
読み終える頃には「特払い」という言葉をニュースで聞いたときに即座に理解できるようになりますよ。
競馬の特払いとは?
特払いとは、レースが成立しているにもかかわらず、その馬券の的中者が1人もいないときに行われる特別な払い戻し制度のことです。
簡単に言えば「レースは行われたのに、誰も当たらなかった場合の救済措置」です。
この場合、該当する券種を購入していた全員に対して、一律で払い戻しが行われます。
基本的には100円につき70円が返金されますが、投票法(馬券の種類)によっては80円になることもあります。
たとえば3連単で誰も当てられなかった場合、そのレースで3連単を買っていた人全員が70円を受け取ることになります。
ただしWIN5だけは特例で、的中者がいない場合は次回にキャリーオーバーされるため、特払いは行われません。
なぜ70円や80円だけ返ってくるの?
特払いで全額が戻らないのは、法律で定められた控除率(運営経費など)が差し引かれているためです。
つまり、売上金の一部は競馬場の運営費や自治体の財源として使われ、残りが払い戻しに充てられます。
この仕組みは競馬法第8条第3項に基づくもので、「的中者がいない場合には、その払戻対象総額を他の投票者に按分して交付する」と明記されています。
特払いはこの条文に沿って行われる、正式な制度なのです。
なお、払い戻し金額は券種によって異なります。
投票法の種類 | 払戻率 | 特払い金額(100円あたり) |
---|---|---|
単勝・複勝 | 約70% | 70円 |
馬連・馬単・3連単など | 約80% | 80円 |
WIN5 | キャリーオーバー制のためなし | ― |
そのため、特払いでは「全額返金」ではなく「控除後の一部(70円や80円)」が戻るという仕組みになっています。
金沢競馬で特払いがトレンド入り!
特払いが最も話題になったのは、2022年7月3日に行われた金沢競馬3R(3歳A3)です。
このレースでは6番人気→8番人気→9番人気という大波乱の決着となり、3連単の的中者が1人もいませんでした。
その結果、3連単馬券の購入者全員に100円あたり70円の特払いが行われたのです。
この珍しい出来事はSNS上で瞬く間に拡散され、「特払いって本当にあるんだ!」「都市伝説だと思ってた」と驚きの声が相次ぎ、Yahoo!リアルタイム検索でトレンド入りしました。
さらに金沢競馬では、同年11月8日の10Rでも再び特払いが発生。
石川県競馬事業局によると「3連単で年に2回の特払いは記憶にない」とのことで、全国的にも極めて珍しい事例となりました。
他の地方競馬でも起きている
金沢競馬以外でも、地方競馬では時折「特払い」が発生します。
最も新しい例では、2023年11月12日の高知競馬1Rが挙げられます。
このレースでは単勝1.2倍という圧倒的な人気馬が凡走し、上位を穴馬が独占。
結果、3連単に的中者が1人もいなかったため、100円につき70円の特払いが行われました。
この珍事はニュースサイトでも取り上げられ、「まさか今の時代に特払いが起こるとは」とSNSでも話題に。
実際、名古屋や門別などでも過去に発生しており、特払いは地方競馬ならではの現象と言えるでしょう。
JRAでは50年以上特払いが出ていない
一方、中央競馬(JRA)では特払いが1973年の新潟競馬1回1Rを最後に一度も発生していません。
当時は14頭立てのレースで、14番人気の馬が3着に入線したことで複勝の的中者がゼロとなり、特払いが行われました。
しかしそれ以降、JRAで特払いが起きたことはありません。
その理由は、現在の中央競馬が全国規模で膨大な数の投票を集めているためです。
オンライン購入(即PATやUMACA投票など)が普及した現代では、どんな人気薄の組み合わせでも誰かが購入している可能性が高く、的中者がゼロになることはほぼありません。
つまり、JRAの特払いは約50年間一度も発生していない超レア現象。
それだけ中央競馬のファン層が広く、馬券の買われ方も多様化しているということが分かります。
特払いが地方競馬で起こりやすい理由
地方競馬で特払いが起こりやすいのは、中央競馬に比べて規模が小さいためです。
ファンの数や売上、出走頭数が少なく、馬券の購入総数が限られていることで「誰も買っていない組み合わせ」が生まれやすくなります。
また、地方競馬では人気順が大きく崩れる波乱のレースも多く、3連単のような複雑な券種では的中者が出にくい傾向があります。
金沢や高知のように地域密着型の競馬場では、売上が小規模であるほどこの珍事が発生しやすいのです。
一方で、インターネット投票が地方にも広がったことで、特払いの発生頻度は年々減少しています。
それでもなお、地方競馬にはまれに起こるロマンある出来事として、ファンの間で語り継がれています。
競馬の特払いまとめ
今回は、競馬でごくまれに発生する「特払い」について解説しました。
特払いとは、レースが成立しているのに誰も的中していないときに行われる特別な払い戻し制度です。
基本的には100円につき70円(または80円)が返金され、WIN5のみはキャリーオーバー制のため特払いの対象外となります。
中央競馬(JRA)では50年以上発生しておらず、今後も起こる可能性は極めて低いと考えられます。
一方で、地方競馬では売上規模が小さいことから、金沢や高知のように「特払い」が現実に発生するケースもあります。
競馬ファンの間では、めったに見られない珍事としてたびたび話題になります。
普段は耳にしない言葉ですが、ニュースやSNSで「特払い」と見かけたときには、「誰も当たらなかったレースが起きたんだな」と思い出してみてください。
それが、競馬の奥深さを感じられる瞬間のひとつかもしれません。