競走馬の喉鳴り(喘鳴症)とは?原因・治療方法・喉鳴りを乗り越え活躍した馬を紹介

競馬を長年楽しんでいる方であれば一度は聞いたことがあるであろう喉鳴り

数多くある競走馬が発症する病気の1つですが、もしかすると正式名称である喘鳴症(ぜんめいしょう)の方が聞きれている人もいるかもしれません。

この記事ではそんな喉鳴り(喘鳴症)について、原因と症状、治療法を詳しく解説するとともに、喉鳴りを抱えながらも見事活躍した馬についても紹介します。

目次

喉鳴り(喘鳴症)の症状と原因とは?

喉鳴りは競走馬が発症する病気の中でも、特に深刻な病気とも言われており、咽頭部または気道の神経の麻痺や、構造的問題によって引き起こされる呼吸器系の病気です。

発症した場合、気道が十分に開かなくなり酸素を取り込みにくくなるため、パフォーマンスに直接的に大きな悪影響を与えます。

この章ではそんな喉鳴りの症状や原因について、詳しく解説していきます。

喉鳴り(喘鳴症)の症状

喉鳴りの症状は下記のとおりです。

  • 異常な呼吸音がする
  • 競走能力が低下する
  • 呼吸が困難になる
  • 咳、むせることが多くなる

異常な呼吸音がする

運動中、特に激しいトレーニングやレース時に「ヒューヒュー」や「ゴロゴロ」、「ゼイゼイ」といった異常な呼吸音が発生します。

これは気道が狭くなることで、呼吸した際の空気の乱れが生じていることを表しており、この異常な呼吸音によって喉鳴りの発症に気付かされる場合がほとんどです。

競走能力が低下する

競走馬が運動する際、特にレース時には大量の酸素が必要になります。しかし、喉鳴りの影響で気道が狭くなり、最大限の酸素を取り込むことができなくなると、充分なパフォーマンスを発揮することができません。

これまで問題なくこなしていた距離や調教であっても、あるタイミングで突然失速したり、著しく疲労する場合は、喉鳴りがその原因になっている可能性があります。

呼吸が困難になる

重症な喉鳴りの場合、たとえ安静時であっても異常な呼吸音が確認される場合があります。

また、少しでも呼吸を楽にしたいため、鼻孔を大きく広げたり、気道を確保するために首を伸ばしたりする姿勢や仕草をすることが多くなります。

咳やむせることが多くなる

気道が狭くなることや喉頭機能が低下することで、咳を頻繁にしたり、水や飼料を飲みこむ際にうまく飲みこめず、むせてしまう場合もあります。

レース時に咳がでてしまうと、呼吸のリズムが崩れてしまうため、やはり充分なパフォーマンスを発揮できないままレースが終わってしまいます。

喉鳴り(喘鳴症)の原因

喉鳴りの原因は、主に下記の5つとされています。

  • 神経の麻痺
  • 遺伝的要因
  • 喉頭の炎症や外傷
  • 発達の異常や遅れ
  • 過度な運動負荷

しかし、喉鳴りの直接的な原因はいまだに解明されていないとも言われています。

神経の麻痺

喉頭の運動機能を司る反回神経が麻痺することで、喉頭が充分に開かなくなり、気道が狭くなり喉鳴りが発症するパターンです。

この神経麻痺の原因そのものは、先天的なものであったり原因不明の場合が多く、人間の手によって生み出されたサラブレッドという品種に依存するものであるともされています。

遺伝的要因

先ほど解説したとおり、人為的に品種改良されたサラブレッドだからこそ発症率の高い病気とも言われている喉鳴り。

さらに喉頭の構造のされ方や、神経系の弱さなども親から子に遺伝するとも言われており、喉鳴りを発症した経験のある馬を親に持つ子の喉鳴り発症のリスクは、他のそうではない馬に比べて高くなる傾向にあります。

喉頭の炎症や外傷

上部気道炎などが代表的な例として挙げられる喉頭周辺の炎症や感染症や、物理的なケガによって、患部が腫れたり変形したりすることが原因で発症する場合もあります。

これらが原因の場合は、その症状が完治すれば喉鳴りの症状も改善される傾向にあります。

発達の異常や遅れ

成長期の若い馬の場合、呼吸のために必要な喉頭付近の軟骨の異常な成長や、逆に発達の遅れがあり、先天的な原因で喉鳴りを発症することがあります。

この場合は成長とともに症状も改善されるパターンと、持続するパターンが存在するため、成長とともに経過をよく観察することが求められます。

過度な運動負荷

レースや調教で、過度な運動負荷をかけ続けることも喉鳴りの発症の原因とされています。

これは過度な運動により喉頭にストレスが与えられることで、一時的または慢性的に発症し、呼吸機能の低下を招きます。

喉鳴り(喘鳴症)の治療方法(手術は必要?)

喉鳴りの治療方法はその症状の程度によって異なります。

主な治療方法は下記のとおりです。

  • 安静と休養、経過管理
  • 外科的治療(手術)

安静と休養、経過管理

先ほど解説した、成長の遅れや過度な運動負荷が原因による喉鳴りの場合は、手術やトレーニングは行わずに休養させたり、成長の経過を観察する場合が多いです。

またレース時の使用は禁止されているものの、コーネルカラーという競走馬の呼吸を補助する馬具を利用し、気道を矯正、確保する方法もあります。

外科的治療(手術)

外科的治療は、喉鳴りの症状が比較的重度で、明らかに競走能力に悪影響を与えているとされた場合や、症状が進行してきた場合に行われます。

具体的な治療方法は発症の原因によって異なり、麻痺した軟骨を正常な位置に固定して気道を広げる【喉頭形成術】、腫れて気道を塞いでいる患部を切除する【喉頭蓋ヒダ切除手術】などが選択されます。

手術後の予後は、獣医学の進歩により完治する確率は向上しているものの、競走能力が完全に元に戻るとは限らず、症状の程度や馬の個体差によって差があるだけでなく、術後症状が改善されるまで、すぐに治る場合もあれば、さらに数ヶ月の経過観察が必要な場合もあります。

馬の喉鳴り(喘鳴症)が雨の日に改善されるのは本当?

結論から言うと、天気と馬の喉鳴りの関係性はありません。

競走馬の呼吸器系の病気に詳しい、JRA競走馬総合研究所栃木支所の帆保誠二氏によると「雨音のせいで喉のなる音が聞こえにくくなるだけであり、喉鳴りの症状そのものが改善されている訳ではない」とし、さらに「そもそも喉鳴りは神経の麻痺など原因であるため、湿度は関係ない」と続けています。

また、喉鳴りを発症した馬の晴れの日と雨の日の競走成績のデータを見ても、その成績は変わらないというしっかりとして根拠があるため、喉鳴りが雨の日に改善されるのは間違いであると言えるでしょう。

喉鳴り(喘鳴症)を乗り越えた活躍馬

冒頭に解説したとおり、競走馬にとって深刻な病気の1つである喉鳴り。

この章ではそんな喉鳴りを乗り越え、見事に活躍した名馬を紹介します。今回紹介する馬は下記のとおりです。

  • ダイワメジャー
  • グランアレグリア

ダイワメジャー

生年月日2001年4月8日
性別
サンデーサイレンス
スカーレットブーケ
母父ノーザンダンサー
生産牧場社台ファーム
戦績28戦9勝
主な勝ち鞍皐月賞(G1) 2004年
天皇賞(秋)(G1) 2006年
マイルチャンピオンシップ(G1) 2006~2007年
安田記念(G1) 2007年
マイラーズカップ(G2) 2006年
毎日王冠(G2) 2006年
ダービー卿チャレンジトロフィー(G3) 2005年
獲得賞金10億6,181万900円
2025年3月2日時点の情報です

喉鳴りから見事な復活を遂げた名馬は?」と聞かれれば、多くの競馬ファンがダイワメジャーの名前を挙げるかもしれません。

ダイワメジャーが喉鳴りを発症したのは、皐月賞(G1)を制した頃でした。担当した獣医師によると、ダイワメジャーは「正常な馬の60〜70%ほどしか空気が入っていかない」ほどであり、そのまま引退を考えなければいけないほど重度なものでした。さらにたとえ手術をしても、競走能力が完全に戻るのは当時の確率でおよそ10〜20%とかなり低い確率でした。

しかし当初からダイワメジャーに大器の可能性を見出していた陣営は「やれることはやろう」と手術することを決心します。

術後およそ半年間の休養をはさみ迎えた復帰戦、重賞レースのダービー卿チャレンジトロフィーを後続に二馬身差をつけて勝利し、見事に復活を遂げます。

その後マイルチャンピオンシップや安田記念、天皇賞(秋)など、主にマイル〜中距離G1で大きな活躍を見せただけでなく、その適性距離の壁に挑み、芝2500m有馬記念を2年連続3着と健闘した勇士は多くの競馬ファンの心を燃やしました。

特にマイルレースで活躍したダイワメジャーの仔は、父の能力を引き継ぐかのようにマイルで活躍する馬が多数います。

グランアレグリア

生年月日2016年1月24日
性別
ディープインパクト
タピッツフライ
母父Tapit
生産牧場ノーザンファーム
戦績15戦9勝
主な勝ち鞍桜花賞(G1) 2019年
安田記念(G1) 2020年
スプリンターズステークス(G1) 2020年
マイルチャンピオンシップ(G1) 2020~2021年
ヴィクトリアマイル(G1) 2021年
阪神カップ(G2) 2019年
サウジアラビアロイヤルカップ(G3) 2018年
獲得賞金10億7,381万3,000円
2025年3月2日時点の情報です

最近の活躍馬でみると、グランアレグリアが挙げられるでしょう。

2021年、日本競馬史上初めてとなる古馬芝マイルG1を完全制覇、1,600m以下のG1はロードカナロアに並ぶ6勝を挙げ、藤沢和雄の傑作とも言われた名馬です。

そんなグランアレグリアが喉鳴りを発症しているのがわかったのは、2021年の安田記念をアタマ差の2着に敗れた後でした。レース終了後、鞍上のルメール曰く「手応えが前回までと違った。いつもより反応が遅かった」とコメントしたように、この時すでに喉鳴りを発症していたのです。

ただちに手術が施され、無事成功。5ヶ月後の天皇賞(秋)を復帰レースとし調整がされました。

復帰レースである天皇賞(秋)は3着に敗れたものの、マイルチャンピオンシップをラストランとし、連覇を目指すことが表明されます。

ラストランのマイルチャンピオンシップ。

道中は中段やや後方に位置取り、最後の直線で鋭く末脚を発揮し、1番人気の期待に応えメンバー中上がり最速で見事優秀の美を飾りました。

喉鳴り(喘鳴症)のまとめ

今回の記事では、競走馬の能力を著しく低下させてしまう恐ろしい病気、喉鳴りについて解説してきました。

以前は、手術の成功率はおよそ10〜20%と極めて低く、引退を余儀なくされた馬も多くいたはずです。しかし現在では獣医学の進歩により、ダイワメジャーやグランアレグリア、その他にもハーツクライやシーキングザパールなど、手術に成功し、その後しっかりとその能力を発揮した馬が存在しています。

最も最近の例をあげると、2024年の有馬記念を2着と好走、引退したシャフリヤールもまた喉鳴りを乗り越えて活躍した1頭です。

喉鳴りを乗り越え、活躍する馬は今後も出てくるはず。ぜひ注目しましょう!

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