「芝スタートのダートコース」をご存じでしょうか。
2025年時点でJRAで開催されているダートコースのうち、8コースが芝スタートのダートコースです。
JRAのダートコースは全部で35コース存在するため、全体の1/4近くを占めていることが分かります。
また、その多くが短距離ダートなので、条件戦を中心に開催頻度が多い点も特徴的です。
一日のなかで芝スタートのダートコースが開催される割合も多いため、コースの特徴を理解することで馬券収支向上に役立つことでしょう。
そこで、今回はJRAで開催されている芝スタートのダートコースについて紹介します。
併せて、芝スタートのダートコースがどうして外枠有利と言われるのか、また、巷で一部騒がれている「芝スタートやめろ」という意見についての見解もまとめました。
JRA芝スタートのダートコース一覧|東京・京都・阪神など全8戦を紹介
冒頭でも触れましたが、芝スタートのダートコースは全部で8コースあります。
最初に、JRAで開催される芝スタートのダートコースの一覧をまとめました。
東京ダート1,600m

東京ダート1,600mはG1「フェブラリーステークス」の舞台としても使用されるため、多くの人が認知しているコースです。
スタート地点は2コーナーにある芝の奥ポケットで、芝コースを150~180mほど走ってダートに入ります。
スタートから初角までの距離は約642mで、最後の直線も約501mと長く、直線の占める割合が大きいです。
そのため、末脚を存分に生かすことができます。
なお、東京ダート1,600mは中央競馬で開催される唯一のマイルコースとして機能していますが、芝スタートや、マイルにしては流れやすいレイアウトから、スピード型の馬が活躍しがちです。
純正ダートマイラーに求められる要素が東京ダート1,600mでは通用しづらい傾向もあるため、非常にトリッキーなコースです。
中山ダート1,200m

出典:競馬フリー素材、競馬ブログ素材のうまぽっと
中山ダート1,200mは12月に開催されるG3のカペラステークスの舞台です。
スタート地点は2コーナーにある芝の奥ポケットで、最初のコーナーまでの距離は約503mです。
スタートから最後の1ハロンまで下り、もしくは平坦なコースなので全ダートコースの中でも特にハイペースになりやすいのが特徴的です。
なお、ラスト1ハロンは中山名物の急坂がたちはだかるので、スピードだけではなく坂道を駆け上がるだけのパワーも求められます。
京都ダート1,400m

京都のダート1,400mは2コーナーの奥ポケットから発走します。
スタートから最初のコーナーまでは600m以上もあり、そこから小回りコースを周回して最後の直線に入ります。
京都は3コーナーに「淀の坂」と呼ばれる小山のような坂道があることから、短距離ダートにしてはペースは極端に速くなりません。
ただ、直線では4大馬場の中で唯一上り傾斜がないことから、終盤はペースが上がりやすく、これが京都のダートはスピードトラックと呼ばれる要因となっています。
中京ダート1,400m

中京のダート1,400mは2コーナーの奥のある芝のポケットがスタート地点で、諸角までの距離は約608mと長いです。
スタートして2ハロンほどは緩やかな上り傾斜になりますが、底を通過したら3~4コーナーは長い下り傾斜に切り替わります。
直線に入って残り400mくらいの位置から再び急勾配に差し掛かり、全体を通して長い上り坂や下り坂を駆けるコースとなっています。
阪神ダート1,400m

阪神ダート1,400mは2コーナーの奥ポケットにある芝の部分がスタート地点で、初角までの距離は約544mです。
向こう正面は平坦もしくはやや下り坂なのでペースは引きあがりやすいです。また、最後のコーナーも約353mあるため、直線の割合が大きいです。
全体的に流れやすいことと直線が長いことから、短距離ダートの中では差し馬も台頭しやすい舞台となっています。
阪神ダート2,000m

阪神ダート2,000mはJRAの芝スタートのダートコースの中で唯一ツーターンコースとなっています。
スタート地点は芝の内回り4コーナーの出口付近ですが、最初の芝部分は約80mしかありません。
スタートしていきなり阪神名物の急な上り坂を駆け上がり、そこからしばらくは平坦もしくは下り傾斜を駆け抜けますが、残り1ハロンでスタート直後に駆け上がった急坂を再び駆け上がります。
急坂を2度駆け上がる構造上、全体的にタフな舞台となっており、芝スタートのダートコースの中ではスタミナやパワーが求められます。
福島ダート1,150m

スタート地点は2コーナーのポケットで、最初のコーナーまでの距離は約493mと長いです。
最後の直線も約296mあるので、直線だけで全体の半分以上を占めています。
芝スタートのダートコースにしては内枠の好走も目立ちますが、距離が短い舞台なので他の短距離レース以上に前の位置を確保していることが重要だからです。
福島ダート1,150mに関しては枠の並びよりも脚質が重要です。
なお、10の位が0以外のコースは中央競馬の中では福島ダート1,150mしかなく、ある意味希少性の高いコースです。
ちなみに地方競馬には園田ダート1,870mのように10のくらいが0以外のコースも存在しています。
新潟ダート1,200m

スタート地点は2コーナーの奥にある芝のポケットで、芝の部分を100m通過してダートに入ります。
スタートから最初のコーナーまでの距離は約525mで、鋭角なコーナーを過ぎると、最後の直線約354mを駆け抜けます。
新潟のダートコースは全競馬場の中でももっとも高低差が少ないためスピードを引き上げやすいです。
ただ、新潟ダートはコーナーの角度ガキツいため、中団で息が入りやすいです。
前の馬がバテずに押し切りやすいため、直線の長いコースにしては前目有利となっています。
芝スタートのダートコースが外枠有利と言われる理由
競馬にある程度精通されている方は「芝スタートのダートにおいては外枠有利」という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。
どうして芝スタートのダートコースは外枠有利なのでしょうか?
ここからは、その理由について紹介します。
外枠の方が長く芝部分を走ることができる
実は、芝スタートのダートコースは外枠のほうが長く芝を走ることができます。
これは、コースが楕円型に設計されているため、外のほうが自然と芝の部分が長くなります。
競走馬は一般的にダートよりも芝のほうがスピードに乗りやすいため、長く芝部分が設けられている外枠の方がダッシュが利いて好位置を確保しやすいのです。
そのため、芝スタートのダート戦では外枠有利と言われます。
ダートへの合流地点で内が窮屈になりやすい
外枠の馬は芝部分を長く踏めるため、序盤からスピードに乗りやすい反面、内の馬はすぐにダートコースに入るため、外の馬より助走が付きづらいです。
これにより、外の馬は被せるように内の馬の前に侵入します。
すると、後手を踏んだ内の馬はどうしても窮屈になってしまいます。
逃げや先行馬で後手を踏んだら致命的ですし、差しや追込馬にとっても他の馬が被せてきて包まれると、抜け出しに苦労してしまいます。
芝スタートのダートコースにおいて、内が不利と言われる理由の背景には、競馬しづらくなることも原因なのです。
阪神ダート2,000mは内枠の好走率が高い
芝スタートのダートコースは基本的に外の馬の方が競馬しやすいポジションに付くことができます。
ただし、阪神のダート2,000mに限れば、内枠の方が好走が目立ちます。
その理由はふたつあり、ひとつは阪神ダート2,000mは数少ない芝スタートの中距離コースなので、序盤に好位を確保してもそれだけで押し切るのは容易ではありません。
そして、もう一つ上げられるのが阪神ダート2,000mは芝の部分が80mしかないため、芝で得られる恩恵が少ない点です。
阪神ダート2,000mはダート馬としての素質が求められやすいため、芝スタートにありがちな外有利という傾向はほとんどないのです。
芝スタートのダートレースが「やめろ」と言われる理由とは?
ネット上では芝スタートのダートレースをやめるべきという否定的な意見も聞かれます。
どうして、廃止論が見られるのか、それにはいくつかの理由がありました。
ここからは、芝スタートのダートレースを廃止せよというふたつの理由について解説します。
芝スタートのダートレースは危険
芝スタートのダートレースは芝とダートの切れ目を走ることになりますが、この切れ目が競走馬にとって故障を誘発する可能性があるのです。
日本競馬史上初となる無敗の三冠馬となったシンボリルドルフは、古馬になって挑んだアメリカのサンルイレイハンデキャップを最後、故障のために引退しました。
このサンルイレイハンデキャップが開催されたサンタアニタパーク競馬場は世界でも珍しいダートコースを横切る場面があり、切れ目で繋靭帯炎を発症してしまったのです。
その他にも、2011年のマイルチャンピオンシップ南部杯は東日本大震災のため、例年の盛岡競馬ではなく東京競馬のダート1,600mで代替開催されました。
このレースに出走した岩手のロックハンドスターが芝とダートの境目で転倒し、骨折、予後不良となったのです。
シンボリルドルフやロックハンドスターの例を見ても、芝とダートの切れ目は競走馬にとって生命を左右する事故が起きる場所です。
重大な事故が発生するくらいなら最初から廃止したほうがいいという意見も納得できます。
芝スタートのダートレースがG1に指定されている理由が不明
芝スタートのダートコースがよりによってG1に指定されている点を疑問視する声もあります。
該当するレースは2月のフェブラリーステークスです。
確かに、舞台となる東京ダート1,600mは芝スタートのワンターンコース、そして全体の大部分を直線が占めることから、スピード型の馬の好走が目立つため、上半期最強ダート馬を決める舞台としてふさわしいのか、疑問が沸くのも無理はありません。
一流のダート馬はスピードよりもスタミナやパワー型の馬が多いため、同時期に開催されるサウジカップやドバイワールドカップに矛先を向けるのもある意味普通のことなのです。
もしも芝スタートのダートコースが廃止されれば、フェブラリーステークスもダートスタートのレースに生まれ変わり、素質の高いダート馬が活躍しやすくなるでしょう。
G1レースで芝スタートが使われているという事実自体が、芝スタート廃止論を後押しする要因になっているのです。
芝スタートのダートコースのまとめ
今回は芝スタートのダートコースについてまとめました。
JRAでは全部で8つの舞台が対象となっており、全ダートコースの1/4近くを占めていました。
特に短距離レースにおいてその割合は大きいですし、未勝利戦やクラス戦でも開催頻度が高いため、ダートレースの中でも見過ごすことはできません。
芝スタートのダートコースは枠の偏りや廃止論など、あまり好意的に受け止められていない側面もありますが、いずれにしてもJRAの開催の主流に近い構成をになっています。
うまく攻略することができれば、芝スタートのダートコースだけで収益を向上させることも可能だと思うので、興味がある方はぜひ攻略法を見つけてみてください。