競馬において『三冠馬』や『三冠牝馬』といった言葉は、馴染みがあると思いますが、七冠馬と聞けば少し馴染みがないかも知れません。
ただ、無敗で三冠馬に輝いたシンボリルドルフやディープインパクトは、三冠達成後、G1通算7勝を挙げたため、七冠馬と呼ばれることが多々あります。
しかし、同じG1競走を7勝したテイエムオペラオーやキタサンブラックは七冠馬ではなく、G1通算7勝馬として取り上げられることが多いです。
では、三冠馬だけが、その後のG1獲得数によって五冠馬や七冠馬と呼ばれるのでしょうか。
これには賛否両論ありますが、1つだけいえることは、七冠馬には”正式な定義”がありません。
ちなみに『七冠馬』とグーグルで検索してみても島根県で製造されている日本酒がヒットします。これは、製造会社とシンボリ牧場との由縁があり、そこから『七冠馬』と名付けられたそうですが、日本競馬としての正式な呼称ではないかと思います。
そこで今回は、G1を7勝した名馬に対して七冠馬と称し、G1を7勝以上挙げた名馬たちを紹介します。
競走馬として1勝するだけでも大変な競走世界の中で、最高グレード競走を7つ以上も勝利した日本を代表する名馬の凄さを是非とも堪能してください。
※なお、ここで取り上げているG1はすべて芝レースのものとしダート競走は含みませんので、ご了承ください。
※以下、各競走馬の通算成績横の()内は左から1着、2着、3着、4着以下の数字を表しています。
三冠馬・三冠牝馬からの七冠馬
三冠馬とは、皐月賞とダービー、菊花賞の3つを勝利した馬を、三冠牝馬は桜花賞とオークス、秋華賞を制した牝馬を指します。
2024年時点で七冠馬を達成した三冠馬・三冠牝馬は3頭います。
最初に三冠馬と三冠牝馬から七冠馬になった馬を紹介します。
シンボリルドルフ
※画像はnetkeibaより引用
通算成績16戦13勝(13-1-1-1)
重賞10勝のうちG1が7勝
デビューから菊花賞までの8戦をすべて勝ち、史上初となる無敗の三冠馬になりました。
その後、ジャパンカップで初の敗北を喫するも暮れの有馬記念を勝利。
翌年も天皇賞(春)を制しG1通算5勝としましたが、春の宝塚記念は直前で出走取消となり、復帰戦となった天皇賞(秋)では13番人気の伏兵馬ギャロップダイナの2着からジャパンカップと有馬記念を連勝し、G1通算7勝としました。
なお、5歳時はアメリカに渡り、サンルイレイステークス(米G1)で6着と初の着外に沈み、故障のため惜しくも引退となりました。
- 皐月賞(1984年)
- 日本ダービー(1984年)
- 菊花賞(1984年)
- 有馬記念(1984年)
- 天皇賞(春)(1985年)
- ジャパンカップ(1985年)
- 有馬記念(1985年)
ディープインパクト
※画像はnetkeibaより引用
通算成績14戦12勝(12-1-0-1)
重賞10勝のうちG1が7勝
シンボリルドルフに次いで史上2頭目となる無敗の三冠馬に輝きました。
古馬になってからは、凱旋門賞(仏G1)と日程が重なった天皇賞(秋)以外の国内古馬中長距離G1をすべて勝利し、G1通算7勝を挙げました。
なお、日本国内の敗戦は3歳時の有馬記念でハーツクライの2着でした。仮に5歳以降も現役を続けていれば、おそらく天皇賞(春)や宝塚記念などを勝利し、芝G1 7勝の壁を超えていたのではないでしょうか。
- 皐月賞
- 日本ダービー(2005年)
- 菊花賞(2005年)
- 天皇賞(春)(2006年)
- 宝塚記念(2006年)
- ジャパンカップ(2006年)
- 有馬記念(2006年)
ジェンティルドンナ
※画像はnetkeibaより引用
通算成績19戦10勝(10-4-1-4)
重賞9勝のうちG1が7勝(海外1勝も含む)
史上4頭目となる牝馬三冠を達成し、その勢いのまま、3歳時にジャパンカップも制しました。
さらに4歳時にはジャパンカップを史上初の連覇。5歳では、ドバイシーマクラシックと有馬記念を勝ってG1通算7勝で引退しました。
ちなみに中山競馬場で走ったのは、意外にも引退レースとなった有馬記念が最初で最後です。
- 桜花賞(2012年)
- オークス(2012年)
- 秋華賞(2012年)
- ジャパンカップ(2012年)
- ジャパンカップ(2013年)
- ドバイシーマクラシック(2014年)
- 有馬記念(2014年)
G1を通算7勝した七冠馬
過去の競馬しにはクラシック三冠を勝利していない馬でも七冠馬と呼ばれるケースがあります。
ここからは、過去にG1レースを7勝した七冠馬について解説します。
テイエムオペラオー
※画像はnetkeibaより引用
通算26戦14勝(14-6-3-3)
重賞12勝のうちG1が7勝
3歳クラシック初戦の皐月賞を制しましたが、本格化となったのは古馬になってからです。
4歳では始動戦となった京都記念を皮切りに暮れの有馬記念までG1レース5勝を含めた8戦全勝と圧倒的な強さを見せつけました。その後、5歳の天皇賞・春を連覇しG1通算7勝を達成。
なお、4歳時に勝利した古馬王道路線の天皇賞(春)、宝塚記念、天皇賞(秋)、ジャパンカップ、有馬記念の5つのレースを同じ年に制した競走馬は今もテイエムオペラオーのみとなっています。
- 皐月賞(1999年)
- 天皇賞(春)(2000年)
- 宝塚記念(2000年)
- 天皇賞(秋)(2000年)
- ジャパンカップ(2000年)
- 有馬記念(2000年)
- 天皇賞(春)(2001年)
キタサンブラック
※画像はnetkeibaより引用
通算成績20戦12勝(12-2-4-2)
重賞10勝のうちG1が7勝
3歳クラシック最後の一冠である菊花賞を制しましたが、キタサンブラックの”真の実力”が発揮されたのは、テイエムオペラオーと同じく古馬になってからのことです。
4歳で天皇賞(春)とジャパンカップを勝利し、翌年の5歳では、新設された大阪杯や天皇賞(春)・(秋)連覇、そして引退レースの有馬記念と年間G1レース4勝の金字塔を打ち立てました。
なお、4歳のジャパンカップ以降、5歳の有馬記念まで8戦連続でG1レースに出走しましたが、馬場の悪かった宝塚記念を除くと、G1成績は5勝2着1回3着1回でした。そう考えると、やはりG1通算7勝を超える壁は相当に高いといえます。
- 菊花賞(2015年)
- 天皇賞(春)(2016年)
- ジャパンカップ(2016年)
- 大阪杯(2017年)
- 天皇賞(春)(2017年)
- 天皇賞(秋)(2017年)
- 有馬記念(2017年)
ウオッカ
※画像はJRAより引用
通算成績26戦10勝(10-5-3-8)
重賞8勝のうちG1が7勝
2歳の時に阪神ジュベナイルフィリーズを制し2歳女王となり、3歳時には牝馬ながら日本ダービーに挑戦し67年ぶりとなる偉業を達成。これは父タニノギムレットと史上初の父娘ダービー制覇となりました。
また、4歳で安田記念と天皇賞(秋)を制し、5歳でもヴィクトリアマイル、安田記念、ジャパンカップと2歳時から4年連続でG1レースを勝利しました。
なお、これもタラレバとなりますが、今では僅差で敗れた2007年の桜花賞と2008年のヴィクトリアマイルに勝利していたらと思ってしまいますね。
- 阪神ジュベナイルフィリーズ(2006年)
- 日本ダービー(2007年)
- 安田記念(2008年)
- 天皇賞(秋)(2008年)
- ヴィクトリアマイル(2009年)
- 安田記念(2009年)
- ジャパンカップ(2009年)
史上最多の芝G1 9勝の九冠馬
歴代の日本競馬では芝のG1レースを9勝した馬が1頭だけいました。
ここからは、2024年時点で唯一芝G1を9勝した馬について紹介します。
アーモンドアイ
※画像はnetkeibaより引用
通算成績15戦11勝(11-2-1-1)
重賞10勝のうちG1が9勝(海外1勝も含む)
3歳時に異次元の末脚で桜花賞を制すると一気にオークス、秋華賞を制覇し、史上5頭の牝馬三冠を達成しました。また、その年のジャパンカップを制すると翌年にはドバイターフ、天皇賞(秋)と勝ってG1通算6勝とし、5歳時にはヴィクトリアマイルの独走で最多G1勝利数に並ぶと天皇賞(秋)の連覇で新記録を達成。
引退レースとなったジャパンカップでは、三冠馬コントレイルと三冠牝馬のデアリングタクトらを退けてG1通算9勝を有終の美で飾りました。
- 桜花賞(2018年)
- オークス(2018年)
- 秋華賞(2018年)
- ジャパンカップ(2018年)
- ドバイターフ(2019年)
- 天皇賞(秋)(2019年)
- ヴィクトリアマイル(2020年)
- 天皇賞(秋)(2020年)
- ジャパンカップ(2020年)
七冠馬のまとめ
今回は、G1を7勝以上している名馬を七冠馬・九冠馬として紹介しました。
改めて、各競走馬の通算成績をみますと、いかにG1競走を勝利することが難しいかと分かりました。その中で7勝以上もG1を勝利したからこそ、名馬中の名馬として称えられています。
それは、今回ご紹介した7頭のすべてがJRAの顕彰馬になっていることが物語っていますよね。
今後は、三冠レースのように七冠馬の定義を表してくれると、ファンとしてもより最強馬討論などで盛り上がりをみせるのではないでしょうか。