重賞の登録馬を確認していると、「出走馬決定賞金順」や「除外対象馬」という言葉を目にすることがあります。
名前に賞金と付いていますが、出走馬決定賞金は馬主が実際に受け取る金額ではありません。
フルゲートを超える馬が登録した際、どの馬から出走できるかを決めるための計算上の数字です。
また、G1やクラシックでは、優先出走権、レーティング、ファン投票などが出走馬決定賞金より先に扱われる場合もあります。
この記事では、出走馬決定賞金とは何か、古馬オープン競走での計算方法、皐月賞・有馬記念・フェブラリーS・チャンピオンズCでの扱いまで初心者向けに解説します。
出走馬決定賞金とは

出走馬決定賞金とは、レースに出走できる馬を決めるために使用する数字です。
競走馬が獲得した収得賞金を基礎にして、一定期間内の実績を加えて算出します。
まずは、どのような場面で必要になるのかを確認しましょう。
フルゲートを超えたときに出走順を決める数字
競馬の各レースには、出走できる頭数の上限であるフルゲートが設定されています。
フルゲート16頭のレースに12頭しか登録しなければ、出走資格などに問題がない限り、賞金順による除外は発生しません。
一方、16頭の枠に20頭が出馬投票すると、4頭は出走できなくなります。
このような場合に、出走馬決定賞金や優先出走権などを使って出走できる馬を選びます。
一般的な古馬オープン競走では、優先される条件を持つ馬を除き、出走馬決定賞金の多い馬から出走枠へ入ります。
出走馬決定賞金が少なく、選定基準の順位で枠に入れなかった馬は除外対象です。
実際に受け取れる賞金ではない
出走馬決定賞金は、出走順位を比較するための計算上の金額です。
出走馬決定賞金が5,000万円と表示されても、その5,000万円が新たに馬主へ支払われるわけではありません。
実際に交付される本賞や付加賞とは役割が異なります。
初心者の方は、出走馬決定賞金を「レースへ出る順番を決める選考ポイント」と考えると理解しやすいでしょう。
金額の形で表されていますが、目的は出走希望馬同士の優先順位を付けることです。
出走馬決定賞金と収得賞金の違い

出走馬決定賞金を理解するには、収得賞金との違いを知る必要があります。
本賞や総賞金も含めて名前が似ているため、競馬を始めたばかりの方が混同しやすい部分です。
4つの賞金の役割を表で比較します。
| 名称 | 主な役割 | 実際に交付されるか |
|---|---|---|
| 本賞 | 1着から5着までの馬へ交付される賞金 | 交付される |
| 総賞金 | 競走馬が実際に獲得してきた賞金の合計 | 獲得額の記録 |
| 収得賞金 | 競走馬のクラス分けに使う計算上の金額 | その金額自体は交付されない |
| 出走馬決定賞金 | 出走できる馬の順位を決める計算上の金額 | その金額自体は交付されない |
収得賞金はクラス分けの基準になる
収得賞金は、競走馬がどのクラスに所属するかを区分するための数字です。
中央競馬では、基本的にレースを勝ったときに所定額が加算され、重賞競走では2着も加算対象になります。
例えば、新馬・未勝利競走は1着で400万円、1勝クラスは1着で500万円、3勝クラスは1着で900万円が加算されます。
3歳以上の重賞では、該当する着順の本賞の半額が収得賞金へ加わります。
JRAでは収得賞金が1,600万円を超える馬をオープンクラスに区分しています。
ただし、オープン馬になっただけで、登録した重賞へ必ず出走できるわけではありません。
総賞金が多い馬ほど出走順位が高いとは限らない
本賞は5着まで交付されるため、勝てなくても上位入着を重ねれば総賞金は増えていきます。
一方、収得賞金は原則として勝利、または重賞2着以内でなければ加算されません。
そのため、着実に賞金を稼いでいる馬より、最近オープン競走を勝った馬の出走順位が高くなる場合があります。
出馬表に表示される総賞金だけを比較しても、除外対象馬を正確に判断できません。
出走できる順番を確認するときは、JRAの出走馬決定順一覧に記載された出走馬決定賞金を見る必要があります。
出走馬決定賞金の計算方法

古馬オープン競走の出走馬決定賞金は、3つの金額を合計して計算します。
通算収得賞金だけではなく、最近の活躍とG1実績を上乗せする仕組みです。
計算の基本を順番に見ていきましょう。
古馬オープン競走は3項目を合計する
JRAの古馬オープン競走では、次の計算式が基本になります。
| 項目 | 出走馬決定賞金へ加える金額 |
|---|---|
| 1 | 通算の収得賞金 |
| 2 | 対象期間(1)で獲得した収得賞金 |
| 3 | 対象期間(2)でG1またはJ・G1により獲得した収得賞金 |
出走馬決定賞金=通算収得賞金+対象期間(1)の収得賞金+対象期間(2)のG1・J・G1収得賞金
対象期間(1)はレース実施日までのおおむね過去1年間、対象期間(2)はおおむね過去2年間です。
正確な開始日と終了日は、開催ごとのJRA競馬番組で定められます。
単純にレース当日から365日、730日をさかのぼる計算ではないため、境目にある実績は競馬番組の対象期間を確認しましょう。
最近獲得した収得賞金は実質的に上乗せされる
対象期間(1)で獲得した収得賞金は、すでに通算収得賞金の中に含まれています。
それを出走馬決定賞金の計算でもう一度加えるため、最近の勝利や重賞2着以内が高く評価される仕組みです。
さらに、対象期間(2)にG1またはJ・G1で獲得した収得賞金は、3つ目の項目として加算されます。
対象期間(1)と対象期間(2)の両方に入るG1実績は、通算収得賞金に含まれたうえで、それぞれの期間分にも反映されます。
過去の実績を基本点として残しながら、最近の活躍とG1実績へボーナス点を与えるイメージです。
出走馬決定賞金の計算例
仮に、通算収得賞金3,000万円のA馬が、対象期間(1)にリステッド競走を勝って1,400万円を加算していたとします。
対象期間(2)のG1・J・G1実績がなければ、出走馬決定賞金は3,000万円+1,400万円=4,400万円です。
一方、B馬の通算収得賞金が4,000万円あっても、対象期間内に加算実績がなければ出走馬決定賞金は4,000万円になります。
通算収得賞金ではB馬が上ですが、出走馬決定賞金ではA馬が400万円上です。
このように、過去の実績が多い馬より、最近結果を残した馬が出走順位で上になる場合があります。
なお、上位クラスの馬が優先されるため、3勝クラスの馬がオープン馬より大きな出走馬決定賞金を持っていても、オープン馬が先に扱われます。
JRAの出走馬決定賞金はどこで確認できる?
G1の登録馬については、JRA公式サイトで出走馬決定順一覧が公開されます。
一覧には出走馬決定賞金、通算収得賞金、優先出走権などが掲載されるため、出走可能馬を判断する材料になります。
数字を見る際の注意点も確認しておきましょう。
G1レース出走馬決定順一覧を見る
JRAは、G1の特別登録締切後に出走馬決定順一覧を掲載しています。
表の「出走馬決定賞金」が選考に使用する金額で、「通算収得賞金」はその計算の土台となる金額です。
同じ馬でも、2つの金額が一致する場合と一致しない場合があります。
直近の対象期間に収得賞金を加算していなければ、両者は同額になりやすいでしょう。
最近勝利した馬やG1で収得賞金を得た馬は、出走馬決定賞金の方が大きくなります。
特別登録後に順位が変わることもある
JRAの出走馬決定順一覧は、特別登録締切時点の情報です。
登録締切後に別のレースへ出走し、収得賞金を加算した馬がいれば、出走馬決定順が変わる場合があります。
また、上位馬が最終的な出馬投票を行わなければ、下位の馬が繰り上がります。
登録段階で除外対象になっていても、出走できないことが確定したとは限りません。
最終的な出走馬は、出馬投票後に発表される出馬表で確認しましょう。
G1は出走馬決定賞金だけで決まらない

G1も登録馬がフルゲートを超えれば、出走できる馬を選ぶ必要があります。
ただし、すべてのG1が出走馬決定賞金だけで並べられるわけではありません。
レースによって、優先出走権、レーティング、ファン投票、外国馬などが先に扱われます。
2026年から古馬G1はレーティング上位10頭を優先
2026年から、宝塚記念と有馬記念を除く古馬G1では、レーティングによる優先頭数が5頭から10頭へ拡大されました。
出馬投票を行った馬のうち、レーティング順位の上位10頭が優先対象です。
ただし、レーティング110未満の馬は対象外となり、牝馬は106未満が対象外です。
この優先枠に入る馬は、出走馬決定賞金の順位が低くても出走可能馬になる場合があります。
残る枠を、レースごとの優先出走権や外国馬などの条件を踏まえたうえで、出走馬決定賞金順に選びます。
G1ごとに選定順位が異なる
G1の出走馬決定方法は、年齢やレースの性格によって異なります。
| 主なG1区分 | 出走馬を選ぶ際の主な考え方 |
|---|---|
| 春季の3歳G1 | トライアルなどの優先出走権を先に扱い、残る枠は芝競走で獲得した収得賞金を中心に選定 |
| 秋華賞・菊花賞 | 優先出走権、外国馬、地方馬の所定条件を先に扱い、残る枠は収得賞金順 |
| 一般的な古馬G1 | レーティング上位10頭やレースごとの優先条件を先に扱い、残る枠は出走馬決定賞金順 |
| 宝塚記念・有馬記念 | ファン投票による優先馬、外国馬を先に扱い、残る枠は出走馬決定賞金順 |
「G1では賞金が多ければ必ず出走できる」と単純に考えないことが大切です。
出走馬決定賞金は重要な基準ですが、その前に置かれた優先枠を確認する必要があります。
クラシックの出走馬決定賞金
皐月賞や日本ダービーなどのクラシックは、一般的な古馬オープン競走と選考方法が異なります。
トライアルの優先出走権に加え、春季の3歳G1では対象となる競走の収得賞金が使われます。
さらに、クラシック特有の登録手続きも必要です。
クラシックは5大特別競走への登録が必要
皐月賞、桜花賞、オークス、日本ダービー、菊花賞は3歳馬5大特別競走に当たります。
これらのクラシックへ出走するには、定められた特別登録を行わなければなりません。
第1回と第2回の登録を行っていない馬でも、各競走の第3回特別登録時に追加登録できる制度があります。
ただし、登録を済ませることと、出走順位でフルゲート以内に入ることは別の条件です。
出走に必要な収得賞金があっても登録手続きを満たさなければ出走できず、登録していても優先権や賞金順位で枠に入れなければ除外されます。
皐月賞はトライアルの優先出走権が先
皐月賞では、弥生賞ディープインパクト記念の3着以内、スプリングSの3着以内、若葉Sの2着以内に優先出走権が与えられます。
優先出走権を持つ馬が出馬投票を行えば、賞金順位より先に出走枠へ入ります。
優先馬や外国馬、所定の条件を満たす地方馬を除いた残りの枠を、対象となる収得賞金の多い順に選びます。
春季の3歳G1で対象になるのは、中央競馬の芝で行われるオープン競走と1勝クラス競走、パートⅠに定める外国の芝競走で獲得した収得賞金です。
そのため、ダートで多くの収得賞金を持っていても、その全額が皐月賞の出走順へ反映されるとは限りません。
皐月賞の登録馬を見る際は、単純な通算収得賞金ではなく、優先出走権と芝競走で得た対象賞金を確認しましょう。

フェブラリーSとチャンピオンズCの出走馬決定賞金
フェブラリーSとチャンピオンズCは、JRAのダートG1です。
古馬G1に当たるため、2026年から導入されたレーティング上位10頭の優先が関係します。
残る出走枠では、出走馬決定賞金が重要になります。
フェブラリーステークスの出走馬決定方法
フェブラリーSでは、条件を満たすレーティング上位10頭がまず優先対象になります。
次に、指定された前哨戦などで優先出走権を得た馬、選定された外国馬、所定の条件を満たす地方馬が扱われます。
それらを除いた中央馬の出走順位を決める際に、古馬オープン競走の出走馬決定賞金を使用します。
したがって、近年のダート重賞やG1で収得賞金を加算した馬は順位を上げやすくなります。
反対に、以前は大きな実績を残していても、対象期間内の加算が少なければ順位が下がる可能性があります。
チャンピオンズカップの出走馬決定方法
チャンピオンズCも、選定の基本的な考え方はフェブラリーSと共通しています。
レーティングによる優先、指定された競走の優先出走権、外国馬や地方馬の所定条件を先に確認します。
その後、残る枠へ出走馬決定賞金の多い中央馬から入ります。
中央競馬だけでなく、地方競馬や外国競馬の対象レースで得た収得賞金も、古馬オープン競走の計算に含まれます。
交流重賞を中心に出走しているダート馬を比較するときも、JRAの総賞金だけではなく、公式の出走馬決定順を確認することが重要です。
有馬記念の出走馬決定賞金
有馬記念はファン投票を行うため、一般的な古馬G1とは優先順位が異なります。
2026年には、ファン投票上位馬の出走機会を確保するため、選定方法が見直されました。
出走馬決定賞金を確認する前に、ファン投票の優先枠を見る必要があります。
ファン投票上位10頭が最優先
2026年の有馬記念では、第2回特別登録に当たる出馬投票を行った中央馬のうち、ファン投票上位10頭が最初に扱われます。
ただし、ファン投票順位が50位以内であることが条件です。
出馬投票を行わない馬を除いて上位10頭を選ぶため、ファン投票11位以下の馬が優先対象へ繰り上がることもあります。
次に選考委員会で選定された外国馬が扱われ、残る枠を出走馬決定賞金の多い順に選びます。
有馬記念は宝塚記念とともに、古馬G1のレーティング上位10頭による優先の対象外です。
高いレーティングを持つ馬でも、ファン投票の優先枠に入らなければ、残る枠では出走馬決定賞金が重要になります。

出走馬決定賞金に関するよくある疑問
出走馬決定賞金は、賞金の名称やG1の例外が多いため、初めは分かりにくく感じます。
特に間違えやすい点を、初心者向けに簡潔にまとめます。
登録馬を見る際の参考にしてください。
- 重賞馬でも除外されることはある?
-
重賞勝ち馬でも除外対象になることはあります。
重賞を勝った実績は収得賞金に残りますが、その後のすべての重賞へ優先出走できる権利ではありません。
G1ではない重賞実績が対象期間(1)より前になると、通算収得賞金には残る一方、最近の実績としての上乗せはなくなります。
他の登録馬が直近のオープン競走や重賞で収得賞金を加算していれば、過去の重賞馬より上位になる場合があります。
重賞タイトルではなく、今回のレースに適用される出走馬決定賞金と優先条件を確認しましょう。
- ハンデが重い馬ほど出走順位も上になる?
-
ハンデの重さと出走順位は別の判定です。
ハンデは各馬の能力差を調整するために決められます。
出走馬決定賞金は、フルゲートの中へどの馬を入れるかを決めるための数字です。
重いハンデを課された実績馬でも、出走馬決定賞金の順位で枠に入れなければ除外対象になる可能性があります。
出走馬の選定と負担重量の決定は分けて考えましょう。
まとめ
出走馬決定賞金とは、登録馬がフルゲートを超えたときに、出走できる馬の順位を決める計算上の金額です。
古馬オープン競走では、通算収得賞金に直近約1年の収得賞金と、約2年のG1・J・G1収得賞金を加えて算出します。
ただし、G1ではトライアルの優先出走権、レーティング、ファン投票、外国馬などが出走馬決定賞金より先に扱われる場合があります。
皐月賞は優先出走権と芝競走で得た対象収得賞金、有馬記念はファン投票上位馬、フェブラリーSとチャンピオンズCはレーティング優先にも注目が必要です。
登録馬の出走可否を判断するときは、総賞金だけでなく、JRAの出走馬決定順一覧とレースごとの優先条件を確認しましょう。

