近年、競馬界で度々取り上げられている外厩。
外厩は、現代の競走馬育成において欠かせない存在となっていますが、意外にもその情報はまだ十分に知られていません。
本記事では、外厩の基本情報をはじめ、その役割や有名施設、情報の入手方法、競馬界への影響力まで、幅広く解説します。
外厩について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
外厩とは?読み方や仕組みを解説

競馬において重要な役割を果たす【外厩(がいきゅう)】は、競走馬がレースの合間に調整を行う施設のことを指します。
近年では、多くの有力馬が外厩を活用し、レースに向けて万全な状態を整えていますが、外厩の具体的な役割やトレーニングセンターとの違いを詳しく知っている人は意外と少ないかもしれません。
ここでは、外厩の読み方やその役割、トレーニングセンター(トレセン)との違いについて詳しく解説します。
外厩の読み方
外厩は(がいきゅう)と読みます。
競馬ファンの間ではよく使われる言葉ですが、一般的にはあまり馴染みがないかもしれません。
厩舎(きゅうしゃ)の「厩」という漢字が使われており、【厩舎の外にある施設】という意味からこの名称がつけられました。
外厩の役割
外厩の主な役割は大きく分けて休養・調整・育成の3つがあります。
外厩における休養とは、レース後の疲労回復や軽いケガの治療を行い、競走馬が万全の状態に戻るようケアすることです。特に、ノーザンファーム天栄やしがらきなどの外厩では、最先端のリハビリ施設を備え、効率的に回復できる環境が整っています。
調整に関しては、レース前の仕上げを行い、馬の状態をピークに持っていくことが挙げられます。
厩舎やトレーニングセンターにはない広大な坂路調教や、負荷を調整したトレーニングを行うことで、競走馬の能力を最大限に引き出します。
さらに、育成の観点からも外厩は重要です。デビュー前の若駒が基礎体力をつけたり、走りのフォームを整えたりする場としても活用されています。こうした育成が、その後の競走成績に大きく影響を与えることは少なくありません。
このように、外厩は単なる調整施設ではなく、競走馬の育成からコンディション管理、仕上げまでを一貫して行う重要な役割を担っているのです。
外厩とトレーニングセンターの違いとは
外厩とトレーニングセンター(トレセン)は、どちらも競走馬の調整や育成を行う施設ですが、それぞれの役割には大きな違いがあります。
トレーニングセンター(トレセン)は、JRAが運営する美浦(茨城県)と栗東(滋賀県)の2か所にあり、厩舎に所属する競走馬がレースに向けた最終調整を行う場所です。レース登録される直前の仕上げが主な目的で、JRAの厳格な管理のもと調教が行われます。
ちなみに、外厩から直接競馬場に向かってレースすることはできないため、レース前には所属する厩舎があるトレセンに入厩します。そのため、最終追い切りも基本的にはトレセンで行われているのです。
一方、外厩はJRAの施設ではなく、民間の育成牧場やトレーニング施設が運営する調整施設です。競走馬は厩舎に所属しながら、レースの合間に外厩で休養やトレーニングを行います。外厩では最先端の調教技術を活用でき、トレセンよりも自由度の高い管理が可能なため、近年は多くの有力馬が利用しています。
このように、トレセンは最終調整の場、外厩は休養や仕上げのための施設といった違いがあります。
全国にある有名外厩施設一覧

競馬界には数多くの外厩施設が存在しており、全国に広く点在しています。
その数は少なく見ても30か所以上あり、近年では、外厩を活用することでレースに向けた仕上げがより入念に行われるようになり、その影響力はますます大きくなっています・
ここからは、全国にある外厩施設の中でも特に有名な施設についてまとめました。
ノーザンファーム天栄
所在地 | 福島県岩瀬郡天栄村 |
開場 | 2011年 |
主な施設 | 馬房:355馬房 900坂路コース 1,200m 周回コース 屋根付きウォーキングマシーン・トレッドミル |
外厩の代名詞的存在であるノーザンファーム天栄は、2012年に開場しました。
開場以来、関東馬の拠点として活用されており、特に2018年の三冠牝馬アーモンドアイの台頭を機に、その存在感は一層強まりました。その後も、歴代最強クラスのマイラーであるグランアレグリア、菊花賞馬ドゥレッツァ、3歳牝馬として有馬記念を制したレガレイラなど、大舞台で活躍する馬を次々と輩出しています。
まさに、外厩の存在を一躍広めた施設といえるでしょう。

ノーザンファームしがらき
所在地 | 滋賀県甲賀市 |
開場 | 2010年 |
主な施設 | 馬房:370馬房 800m直線坂路コース 900m周回コース |
2010年に開場したノーザンファームしがらきはノーザンファーム生産の関西馬を中心に使用されています。
開場は2010年の秋で、翌2011年にはノーザンファームしがらきで調整されたオルフェーヴルが三冠タイトルを達成、さらに2012年はジェンティルドンナが牝馬三冠を達成し、ノーザンファームしがらきの価値が飛躍的に高まりました。
現在、外厩といったらノーザンファーム天栄のイメージが強いですが、それ以前から有力馬の拠点として活用されていたのです。

山元トレーニングセンター
所在地 | 宮城県亘理郡山元町 |
開場 | 1992年 |
主な施設 | 育成馬300頭 900m坂路コース 1,100m周回コース ウォーキングマシン20基 トレッドミル7基 練習用ゲート |
1992年に開場した山元トレーニングセンターは日本初の外厩施設として誕生し、【山本トレセン】の愛称で知られています。
社台グループや追分ファーム生産馬の拠点として使われており、過去にはダイワメジャーやヴィクトワールピサ、ネオユニヴァースにダイワスカーレットといった名馬がここで育成されていました。
現在ではノーザンファーム天栄の方が有名馬が多数輩出されていますが、それでもソールオリエンスやスターズオンアースといった2020年代初頭の活躍馬がおり、今なお競馬界では大きな存在感を放っています。

大山ヒルズ
所在地 | 鳥取県西伯郡伯耆町 |
開場 | 2003年 |
主な施設 | 収容数255頭 800m坂路ウッドチップコース 800m周回ダートコース ウォーキングマシン7基 トレッドミル7基 スターティングゲート |
鳥取県にある大山ヒルズはノースヒルズグループの競走馬が利用するトレーニングセンターです。
キズナとワンアンドオンリー、そして無敗の三冠馬であるコントレイルといった3頭のダービー馬が育成拠点にしていた外厩として有名で、現在も芝・ダート・短・中・長距離問わず、さまざまな舞台で活躍する馬が活動拠点にしています。
チャンピオンヒルズ
所在地 | 滋賀県大津市 |
開場 | 2020年 |
主な施設 | 馬房:514馬房 1,100m周回フェルトダートコース 1,100m周回ダートコース 坂路,1000mウッドチップコース 坂路1,000mフェルトダートコース ウォーキングマシン15基 トレッドミル6基 |
2020年に開場したチャンピオンヒルズは総面積約71ヘクタール(東京ドーム約15個分)で、関西圏では最大規模の外厩施設です。
栗東トレセンから役40分の好立地に位置することもあって関西馬の拠点にうってつけの施設です。
運営母体であるチャンピオンズファームは社台グループと比較するとそれほど目立った生産馬はいませんが、チャンピオンヒルズを通して競馬界の中心となる馬が現れることに期待されます。
社台ファーム鈴鹿
所在地 | 三重県鈴鹿市 |
開場 | 2024年 |
主な施設 | 収容数50頭 1,100mウッドチップ坂路コース 800mウッドチップ周回コース ウォーキングマシン12基 トレッドミル4基 冷房&ミスト付馬房 |
社台ファーム鈴鹿は、2024年6月に開場した社台グループの最新外厩施設です。
関西を拠点とする社台ファーム生産馬の調教や休養を目的とした施設で、直線1,100mの坂路コースを備えています。この坂路は高低差38m、勾配3.5%と、国内でも最も負荷のかかるコースの一つとされています。
最新の研究に基づいて設計された施設であり、ここで調整された馬がビッグレースでどのような活躍を見せるのか、今後大きな注目を集めています。
外厩四天王とは?

近年の競馬界では、外厩を上手に使って成果を残している厩舎が大きな注目を集めています。
特に、【外厩四天王】と呼ばれる4名の調教師は、外厩を使って数多くの有力馬を輩出しました。
ここでは、四天王と称される調教師を紹介します。
天栄四天王
天栄四天王とは、ノーザンファーム天栄を活用して結果を残している調教師を指します。具体的には下記4名の調教師が該当しています。
調教師名 | 代表的な管理馬 |
---|---|
木村哲也調教師 | イクイノックス ジオグリフ レガレイラ |
国枝栄調教師 | アーモンドアイ アパパネ ステレンボッシュ |
大竹正博調教師 | ブラストワンピース ルージュバック ソーヴァリアント |
萩原清調教師 | ロジユニヴァース ルヴァンスレーヴ ダノンキングリー |
しがらき四天王
しがらき四天王とは、ノーザンファームしがらきを利用し、好成績を収めている調教師を指します。主に下記4名の調教師が該当します。
調教師名 | 代表的な管理馬 |
---|---|
安田隆行調教師 | ロードカナロア カレンチャン トランセンド |
西村真幸調教師 | ファントムシーフ ファストフォース タイセイビジョン |
松永幹夫調教師 | ラッキーライラック アンモシエラ アウォーディー |
高野友和調教師 | ショウナンパンドラ スタニングローズ ジャンタルマンタル |
外厩情報を入手する2つの方法

競馬予想において、外厩情報を把握することは非常に重要です。
どの外厩で調整されたかによって、馬の仕上がり具合や好走確率が大きく変わることも少なくありません。
しかし、外厩情報はJRAの公式発表がないため、どこで入手できるのか分からないという方も多いでしょう。
ここでは、外厩情報を入手するための代表的な2つの方法、【大手競馬新聞】と【競馬情報サイト】について、それぞれの特徴や活用法を解説します。
大手競馬新聞
外厩情報を入手する方法の一つが、大手競馬新聞を活用することです。
【スポーツニッポン(スポニチ)】【日刊スポーツ】【競馬エイト】【優馬】などの競馬専門紙では、外厩帰りの馬に関する情報が掲載されることがあり、特に重賞レース前の特集記事では詳細な調整過程が紹介されることもあります。
また、紙面だけでなく各新聞社の競馬サイトや電子版でも、外厩情報をチェックできる場合があります。例えば、馬柱に【放牧明け】と記載されている馬は外厩帰りの可能性が高いため、そうした情報をもとに仕上がり具合を推測することも可能です。
新聞の情報は厳選されたものが多く、信頼性が高いのが特徴です。レース前に確認し、馬券検討の参考にすると良いでしょう。
競馬情報サイト
近年では、インターネットを活用して外厩情報を入手する方法も広がっています。
特に【netkeiba.com】【競馬ラボ】などの大手競馬情報サイトや【かよちんの競馬wiki】などのサイトでは、特定の馬がどの外厩で調整されていたかを調べることができます。
無料で閲覧できる情報も多く、外厩の影響を考慮した予想を立てる際に役立つことでしょう。
外厩の代名詞:ノーザンファーム天栄が競馬界に及ぼした影響

外厩の代名詞的存在であるノーザンファーム天栄は、外厩の概念を大きく進化させ、日本競馬界に多大な影響を与えてきました。
特に関東馬の活躍を支える要因となり、調教環境の充実により、従来の常識を覆す調整方法も確立されました。
その結果、レース前にトレセンへ戻らず、外厩で仕上げた状態で直接G1に挑む【ぶっつけ本番】のスタイルが一般化しつつあります。
ここでは、ノーザンファーム天栄が競馬界に及ぼした影響について詳しく解説します。
関東馬の台頭
かつての日本競馬では、西高東低と言われており、関西馬が圧倒的な成績を誇り、関東馬は劣勢とされていました。
しかし、ノーザンファーム天栄の登場によって状況は一変しました。美浦所属馬でも、トレセンに頼らず天栄で徹底的に鍛え上げることが可能となり、調教レベルが飛躍的に向上したのです。
これにより、関東馬がG1戦線で互角以上に戦えるようになりました。
特に近年では、アーモンドアイやフィエールマン、ブラストワンピース、ドゥレッツァ、レガレイラなどの関東所属馬がG1戦線で次々と活躍し、関東馬の評価を大きく引き上げる結果となりました。
ぶっつけG1が主流になった
ノーザンファーム天栄の調整技術が向上したことで、G1レースのトライアル競走を経ずにG1レースへ直行する【ぶっつけG1】のスタイルが確立されました。
以前は【叩き良化型】が主流で、前哨戦を使って仕上げるのが一般的でしたが、アーモンドアイの直行を皮切りに、外厩での調整だけで最高のパフォーマンスを発揮する例が増えています。
この手法により、馬の負担を最小限に抑えつつ、狙ったレースに万全の状態で挑めるメリットが生まれました。現在では、ノーザンファーム系の馬だけでなく、他の有力馬主もこのスタイルを採用し始めており、競馬界の常識を塗り替える大きな変革となっています。
外厩のまとめ

外厩は、競走馬がレースに向けて調整や休養を行う施設であり、近年の競馬界において重要な役割を担っています。
特にノーザンファーム天栄やしがらきといった有力外厩の影響力は大きく、関東馬の台頭や【ぶっつけG1】戦略の定着など、競馬界の常識を変えつつあります。
また、外厩情報を把握することで、馬券予想にも活かすことが可能です。
今後も外厩の活用が競走馬の成績に与える影響はさらに大きくなると考えられます。