競馬では、前走と同じ騎手が乗るとは限りません。
レースごとに騎手が変わる「乗り替わり」は、馬の走りや結果に影響しやすい重要な要素です。
実際、乗り替わりがプラスに働いて一変するケースもあれば、かみ合わず力を発揮できないこともあります。
では、なぜ乗り替わりが起きるのでしょうか。
単なる事情ではなく、陣営の狙いや騎手の選択が関わっており、背景を理解するとレースの見え方が変わってきます。
この記事では、乗り替わりの意味や理由、誰がどのように騎手を決めるのかまで整理します。
馬券の判断材料として役立つポイントも解説するので、ぜひ参考にしてください。
競馬の乗り替わりとは?基本の意味
競馬における乗り替わりとは、前走で手綱を取っていた騎手から別の騎手へ交代することです。
新聞にも記載されるほど重要な情報で、馬券の検討材料として欠かせません。
継続騎乗が理想というイメージはありますが、乗り替わりによって走りが良くなる例も多く見られます。
乗り替わりは偶然ではなく、陣営の判断や騎手の事情が背景にあるため、理由を理解することでレースの見立てがより正確になります。
ここからは、乗り替わりが発生する代表的なパターンを解説します。
鞍上強化のため
乗り替わりで最も多い理由が、勝ちたいレースに向けて騎手を強化するパターンです。
重賞や大舞台を見据える場面では、より勝負強い騎手や経験豊富な騎手へ交代することがあります。
特に外国人騎手やリーディング上位騎手への乗り替わりは、プラス材料として評価されやすい傾向があります。
馬の弱点を補える騎手を選ぶケースもあり、スタートが甘い馬なら発馬が上手い騎手、勝負所でエンジンがかかりにくい馬なら追える騎手を起用するなど、陣営の狙いが反映されます。
単なる交代ではなく、レースでの完成度を高めるための強化策として行われる乗り替わりです。

お手馬同士の出走で騎手が選択した場合
有力騎手は複数の馬から騎乗依頼を受けるため、同じレースでお手馬同士が激突するとどちらに乗るか選択する必要があります。
例えば、リーディング上位のC.ルメール騎手はG1級レースでお手馬が複数いるケースが多く、自然と乗り替わりが発生しやすい立場です。
騎手が選んだ方に注目が集まりやすい一方、選ばれなかった馬が別の騎手に乗り替わることになります。
選択の背景には調子や相性、レース条件などの総合判断が影響しており、人気や期待度のバロメーターとして受け取られる場合もあります。
単なる都合ではなく、勝負レースだからこそ起きる乗り替わりといえます。
騎手の怪我・病気・騎乗停止
乗り替わりの中でも最も避けられないのが、騎手本人の体調やコンディションによる交代です。
落馬負傷や体調不良が原因となり、予定していた騎乗ができなくなることがあります。
特に若手騎手は減量に苦労することがあり、無理な減量で脱水症状を起こして急遽乗れなくなるケースも見られます。
また、制裁による騎乗停止期間に入った場合も代役が必要になり、当日変更が発生しやすくなります。
人気馬で突然の乗り替わりが起きると、ファンの評価が揺れやすくオッズが不安定になる傾向があります。
騎手の遠征・別開催での騎乗
騎手のスケジュールによって乗り替わりが発生するケースも多く見られます。
同じ日に別の競馬場で騎乗予定がある場合は移動ができないため、そのレースには別の騎手が起用されます。
特にローカル開催ではトップ騎手が中央開催を優先することが多く、代役騎手への乗り替わりが起きやすい傾向があります。
さらに近年は海外のビッグレース遠征も増えており、ブリーダーズカップやドバイワールドカップデーに騎乗するため国内開催を欠場する騎手もいます。
その結果、国内の重賞でも突然の乗り替わりが生じることがあり、馬券検討に影響が出やすいポイントです。
レースが抽選騎乗の形式の場合
乗り替わりの理由としては珍しいものの、特別ルールによって騎手が抽選で決まるレースがあります。
代表例が札幌競馬場で開催されるワールドオールスタージョッキーズのようなイベント形式の競走で、騎手の実力差を公平にする目的で抽選制度が採用されています。
この場合は特定の陣営やエージェントの意向ではなく、レース規定によって鞍上が決まるため、乗り替わりが前提となります。
普段は手綱を取らない馬に騎乗する騎手も多く、馬ごとの癖を知らない状態で臨むことになります。
通常のレースとは異なる背景で乗り替わりが発生するため、成績や相性の予測が難しく、馬の地力を重視する判断が求められます。
陣営の戦略変更や調教師との関係
乗り替わりは、馬のタイプに合わせて騎手を変更する戦略的な意図で行われることもあります。
ズブさがある馬ならしっかり追える騎手、折り合いに難しさがある馬なら手綱の柔らかい騎手など、適性に応じて鞍上を変えることで能力を引き出そうとする狙いがあります。
レースの舞台設定が変わる際に、スタート巧者や逃げが得意な騎手へ乗り替えるケースも見られます。
また表に出ない事情として、陣営と騎手の方針が合わず評価が下がって降板になるケースもゼロではありません。
走りを引き上げるための前向きな交代が多いものの、双方の人間関係や評価面が影響して乗り替わりが起こることもあります。
乗り替わりは誰が決める?決め方の仕組み
乗り替わりは偶然ではなく、陣営や騎手側の判断によって決まります。
調教師や馬主が中心となって騎手を選ぶのが基本ですが、騎手の都合やレース日程、エージェントの動きが影響することもあります。
さらに、急な怪我や病気による当日変更ではJRAが代役を選定するため、通常とは流れが異なります。
ここからは、乗り替わりがどのような仕組みで決まっていくのか、具体的なパターンごとに整理します。
調教師と馬主の判断
乗り替わりの決定に最も深く関わるのが調教師と馬主です。
勝負レースに向けて同じ騎手を固定したいと考える陣営も多く、軸となる騎手を早い段階で決めるケースがあります。
また馬のタイプに合わせて起用する騎手を検討することもあり、テンの速い馬や折り合いが難しい馬など、それぞれに相性の良い騎手を選ぶ形になります。
前走の騎乗内容が良かった場合は継続騎乗につながりやすい一方、乗り方が合わなかったと判断されれば交代となることもあります。
陣営がどう勝ちに行くかを反映した判断であり、乗り替わりの背景として最も注目すべきポイントです。
騎手の都合やスケジュール
騎手の予定によって乗り替わりが発生するケースも多くあります。
人気騎手ほど複数の依頼が重なりやすく、同じ日に複数のレースで騎乗依頼を受けた場合はどの馬に乗るか選択しなければなりません。
中央開催とローカル開催が同日に行われる週では、どちらを優先するかで騎乗可能なレースが変わります。
特にリーディング上位騎手は重賞を優先する傾向が強く、条件戦に出走する馬が別騎手に乗り替わる場面が見られます。
スケジュールの問題は「誰が降りたか」ではなく「どのレースを優先したか」で考えると、乗り替わりの背景が理解しやすくなります。
騎手エージェントの影響力
近年の競馬では、騎手エージェントの存在が乗り替わりに大きく関わっています。
エージェントは複数の騎手を担当し、同時に多数の厩舎と情報をやり取りするため、有力馬の情報を早く掴みやすい立場にあります。
力のあるエージェントほど強い馬の騎乗機会を確保しやすく、トップ騎手への乗り替わりの背景にはエージェントの調整が働くこともあります。
その結果、同じ馬でも調子が良く大舞台を狙えるタイミングで“鞍上強化”が起きるケースが増えています。
表に見えにくい要素ですが、乗り替わりの裏側を読み取るうえで欠かせない視点です。
乗り替わりがレースに与える影響
乗り替わりはレース結果に大きな影響を与える要素です。
騎手が変わることで走りが良くなるケースもあれば、逆に能力を出しきれず成績を落とすこともあります。
馬の性格や脚質、騎手の特徴、レース展開との相性などが複雑に関係するため、一概に良し悪しを判断できません。
ここからは、乗り替わりがプラスになるケース、マイナスになるケース、そしてデータ面での傾向を整理していきます。
プラスに働くケース
乗り替わりが好結果につながるケースは少なくありません。
もっとも分かりやすいのが、騎手と馬の相性が突然ハマって能力が一気に引き出されるパターンです。
外国人騎手や追える騎手への鞍上強化は特に効果が出やすく、レースの流れに乗せる技術やゴール前の押し切りで結果が変わることがあります。
馬が環境の変化で気持ちにスイッチが入り、走りが変わる一変パターンも起こりやすい要因です。
2021年のオクトーバーステークスに出走したパンサラッサが初コンビを組んだ吉田豊騎手と逃げで勝利し、その後主戦騎手になったように、騎手次第でいきなり競走馬の能力が開花するケースも少なくありません。
馬の能力と騎手の特徴が噛み合ったとき、乗り替わりは大きなプラス材料になります。
マイナスになるケース
乗り替わりが悪い方向に作用してしまうこともあります。
気難しいタイプの馬では、リズムや癖をつかめないままレースに入ってしまい、力を出しきれないケースが目立ちます。
テン乗りの場合は馬の特徴を把握する時間がなく、追いどころや折り合いのタイミングをつかめず伸びを欠く場面が起こりやすいです。
また調子落ちの馬をリーディング下位騎手に回すケースでは、そもそも馬の状態が悪いため成績が上がりにくく、騎手交代が原因に見えてしまうこともあります。
乗り替わりはプラスの材料になる一方で、マイナスのリスクも理解しておくことが重要です。

データで見る乗り替わりの傾向
| 前走から | 成績 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単勝 回収率 | 複勝 回収率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 乗り替わり | 1,751-1,777-1,847-21,689/27,064 | 6.5% | 13.0% | 19.9% | 64 | 71 |
| 連続騎乗 | 1,382-1,350-1,284-11,088/15,104 | 9.1% | 18.1% | 26.6% | 81 | 76 |
上記の表は2024年1月1日から12月31日のJRAの乗り替わりデータをまとめたものです。
JRAの2024年データを見ると、乗り替わり組は出走数が27,064頭と非常に多く、レース全体の大部分を占めています。
一方で成績面を比較すると、1着・2着・3着を含めた複勝率は19.9%で、勝率は6.5%にとどまっています。
対して、同騎手が続けて騎乗した「連続騎乗組」は出走数が15,104頭と少ないにもかかわらず、複勝率26.6%、勝率9.1%と明確に上回っています。
また、単勝回収値と複勝回収値を見ても、乗り替わり組が64・71に対し、連続騎乗組は81・76となっており、回収率の面でも継続騎乗のほうが良好な結果が出ています。
このことから、出走数の多さは乗り替わり組が圧倒的ですが、成績という観点では連続騎乗組のほうが優勢といえます。
安定した結果を求めるなら、継続騎乗は大きな信頼材料になります。
乗り替わりの狙い目と勝利傾向
乗り替わりは馬券戦略において大きな武器になります。
しかし「誰に替わったか」や「どんな状況で替わったか」によって結果はまったく変わります。
闇雲にプラスと捉えるのではなく、勝ちやすいパターンを狙うことが重要です。
ここからは、実際の成績データや回収率の傾向を踏まえながら、狙い目となる乗り替わりの条件を整理していきます。
人気薄の乗り替わりは激走の宝庫
人気薄の馬ほど、乗り替わりが刺激となって一変するケースが多く見られます。
なぜなら、近走で凡走が続いていても、鞍上変更がきっかけでレースでの集中力や前向きさが変わり、ガラッと走りが良化する可能性があるからです。
実際、人気薄の乗り替わりは複勝回収率が下がりにくく、むしろ妙味が出る場面が多いのが特徴です。
過小評価されている馬が新しい騎手の手腕やリズムにフィットした瞬間、大穴を空けることも珍しくありません。
特に「実績ある馬の凡走後」「条件替わり」「距離延長・短縮」などと重なった乗り替わりは激走率が高まります。
人気薄だからと軽視せず、乗り替わりがハマる余地があるかを見極めれば、高配当のチャンスを掴みやすくなります。
外国人騎手やリーディング上位への乗り替わり
乗り替わりパターンの中で最も信頼度が高いのが、外国人騎手やリーディング上位の騎手への鞍上強化です。
馬の能力を引き出す技術が高く、位置取り・仕掛けの判断が的確なため、安定して結果を出しやすい傾向があります。
特に欧州競馬が開催されない秋~冬時期は海外の実力騎手が短期免許で来日するケースが多く、短期免許騎手への乗り替わりは好走率率が大幅に上がります。
短期免許の乗り替わりは軸馬として扱いやすく、単勝・複勝どちらでも狙い目になります。
また、重賞や高速馬場では騎手の腕の差が結果に直結しやすいため、このタイプの乗り替わりはさらに優位性が高まります。
積極的に買いに回せる乗り替わりパターンといえるでしょう。

乗り替わりまとめ:馬券戦略でどう活かす?
乗り替わりは、単なる騎手交代ではなく、陣営の戦略・騎手の選択・日程の都合などさまざまな理由が絡み合って起きる重要なファクターです。
継続騎乗の方が成績・回収率ともに優勢というデータは存在しますが、乗り替わりには人気薄の激走や外国人・リーディング上位への鞍上強化といった、一発の破壊力を秘めたパターンもあります。
大切なのは「乗り替わったから買う/消す」ではなく、その背景まで踏まえた見極めです。
乗り替わりの意図を読み取れるようになるほど、予想の精度と馬券の回収率は確実に変わっていきます。
次のレースからぜひ意識してみてください。

