夏競馬といえば、G1馬などの有力馬が休養に入ることが多いため、1勝、2勝といった条件クラスの競走馬同士が主役となります。
それは、実力が均衡しているため、どの馬が勝つか分からない、いわゆる人気通りの決着にならないことにつながります。
その結果、夏競馬は難解なレースが多く、当たらないといった、競馬ファンの嘆きをよく耳にすることになるのです。
そこで今回は、難しくてなかなか当たらない夏競馬について、個人的な見解と考察を交え、紹介していきます。
この記事を読んで少しでも夏競馬が難しい、当たらないといった競馬に対する嫌な面を払拭してもらえたらと思いますので、ぜひ最後までお読みください。
夏競馬が難しい理由はコース形態にあり?ローカル開催の落とし穴

まずは、なぜ夏競馬が難しいのか、コース形態から考えていきます。
JRAでは通年、東京、中山、京都、阪神の主要4場を中心に番組を組んでいます。
また、年間のG1レース数の90%以上が、この4場で行われていることを考えると、JRAが主要競馬場としているのも分かります。
そして、この4場は直線が長く、さらに京都を除くと直線に坂があります。また、中山を除きカーブが大回りなことも特徴です。
これは、有力馬の力関係を反映するように設計されているからだと考えられます。
中でも東京競馬場のコースは、直線が占める割合がとても大きく、最後の直線も長く設計されており、さらには、人気薄の馬や逃げ馬が簡単に逃げ切れないよう直線半ばに坂も設置されています。
このように実力を問うガチンコ勝負が多く見られる主要4場に対し、夏競馬が開催されるローカル競馬場は、そもそも実力馬が勝ちにくいように設計されている点にあります。
なお、ローカル競馬場とは、札幌、函館、福島、新潟、中京、小倉と6つの競馬場をいいます。
この6場は、夏競馬をメインに開催されていますが、ローカルコースは、主要4場とは逆にカーブが占める割合が非常に多く、直前が平坦で短い、いわゆる小回りコースです。
そのため、好スタートからの逃げ残りも充分に有り得るコースとなっています。
この直線距離が短いという点が、夏競馬は難しい、当たらないといった要因の1つに挙げられると考えました。
以下の表は、夏競馬が開催されるローカル競馬場と主要競馬場の直線距離と高低差を表したものです。
競馬場 | 直線距離 | 高低差 |
---|---|---|
札幌競馬場 | 266.1メートル | 平坦 |
函館競馬場 | 262.0メートル | 平坦 |
福島競馬場 | 292.0メートル | 平坦 |
新潟競馬場 | 359.0メートル※1 | 平坦 |
小倉競馬場 | 293.0メートル | 平坦 |
中京競馬場 | 412.5メートル | 2.0メートル |
東京競馬場 | 525.9メートル | 2.0メートル |
中山競馬場 | 310.0メートル | 2.3メートル |
京都競馬場 | 323.4メートル | 平坦 |
阪神競馬場 | 356.5メートル | 1.8メートル |
※1,表内の新潟競馬場の数字は、内回りコースです。外回りコースとなれば、659メートルと東京競馬場の直線距離を130メートルも上回る日本一長い直線距離となりますが、ここでは、内回りコースを前提として説明しています。
表を見ていただくとお分かりかと思いますが、夏競馬が開催される競馬場は、新潟競馬場と中京競馬場を除いて全て直線距離が300m以下です。
直線距離が短ければ短いほど、前述の通り、逃げや先行する馬が、後続に抜かれるといったケースが少なくなります。そのため人気馬が、差し切れず結果的に難解なレースが多くなると考えられます。
また、夏競馬が開催される競馬場は、直線の高低差が平坦という共通点もあります。この点も夏競馬は、難しい、当たらないといった要因の1つに挙げられると思います。
その理由は、直線が平坦であればあるほど、ゴール板まで失速する可能性が低くなり、最後まで駆け抜けやすくなるからです。
よって、実力が不足している馬でもスピードに乗ることができ、馬券に絡んでくる確率が高くなります。
これら2つの主な要因から考えられることは、すべてのコースを主要4場のように、ただ実力だけを問うコースにしてしまえば、賞金を稼げない馬や厩舎、そして、騎手に生産者と儲けられる側と儲けられない側に偏りが出てしまい、競馬が回らなくなるということです。
さらに力関係が如実になるということは、有力馬同士での決着が続き、配当的にも面白味がなくなります。そうなれば、多くの競馬ファンが離れてしまうおそれがあります。
そのため、馬券的にもローカル競馬場は、曲線比率の高さ、急カーブ、平坦な直線、芝を支える路盤や排水路にあまり予算をかけないという点。
それに加え、番組構成でもメンバーがそろわない裏開催や有力馬が休養する夏場に使用し、芝の育成を二の次とした開催スケジュールにするなど、人気薄が食い込む条件を考慮して、ローカルコースが作られたと思われます。
これを簡単なイメージとして、たとえると、少し大柄な高校生と小柄な小学生がかけっこで勝負するとします。
高校生は、大柄な体型のため、少しでも広くて真っすぐなコースがよいと考えるでしょう。それは、自分自身が確実に勝てるからです。一方で小柄な小学生は、狭い路地裏など、何度も曲がるようなコースが良いと思うはずです。
それは、小柄な小学生でしたら、足が短く歩幅が小さいため、すばしっこさを生かし、曲がりながら加速することも可能なので、スタートさえ決めれば、大柄な高校生に対し、逃げ切りは充分に考えられることです。
よって、夏競馬が難しい、当たらない理由は、各競馬場のコース面にあると考察した次第です。
夏競馬で上位人気が当たらないのはなぜ?

次に夏競馬の難しい、当たらないという点を人気の視点から考察していきます。
結論からいいますと、夏競馬では、人気馬が馬券圏外になることが多いのではなく、下位人気馬が馬券圏内に入ることが多いということです。
どうしても夏競馬は、1〜3番人気に支持を受けた上位人気馬が馬券圏外になるイメージが強いですが、実は通年でみると、そこまで大きな差はなく、上位人気馬が普通に馬券圏内に入っています。
これは、それ以上に9〜12番人気くらいの下位人気馬が馬券圏内に入ることが目立つことから、上位人気馬が馬券圏内に入らないとのイメージが夏競馬の特徴です。
これを知っているだけでも、夏競馬は当たりやすくなると思いますので、ぜひ参考にしてみてください。
夏競馬が当たらない理由は心理にもあり?ファンの思考パターンに注目

あとは、馬券購入者側の心理状態が影響しているとも考えられます。
これは、秋競馬からの怒涛のG1シーズンから翌年の春競馬までの約9ヶ月間、競馬ファンの脳裏に染みついた「強い馬が勝つ」という思考モードが、なかなか短期間では拭い切れないからです。
夏競馬では、上記の考察通り、難解なレースとなる要因が詰め込まれています。
しかし、強い馬が勝つといった思考や心理状態で馬券を買い続けた結果、人気馬を馬券圏外にすることが自然と難しくなっているのです。
たとえば、
「夏競馬は、上位人気馬がよく飛ぶけど、そうは言っても1番人気だからな」
「これまでのレースをみても、明らかに実力の差がある。ここは上位人気馬で堅いのではないかな」といったような感じです。
しかし、ローカル開催となる夏競馬の時期には、購入時に数千万円から数億円もする良血馬やG1レースを勝つような有力馬は休養に入ります。
これは、暑さが苦手なサラブレッドのことを考慮する点と芝の整備に資金がかけられていない荒れやすいローカルコースに高額馬を走らせ、馬を壊したくないとの理由などが考えられます。よって、夏競馬には、有力馬が存在しないため、難しい、当たらないにつながるかと思います。
夏競馬は難しいのまとめ

今回は、夏競馬は難しい、当たらないといったテーマを紹介しました。
競馬はギャンブルです。そのため毎回力通りには決まらないよう、陸上競技で各走者の走る範囲が決められているセパレート方式を採用せず、意図的にカーブや坂を作り、実力順に入線しないようにコースを組んでいます。
競馬を純粋なスポーツに作り替えれば、観戦客はかなり減少するかと思いますので、夏競馬は、必然的に難しく、当たらないとなるのです。
ただし、各章で述べたことを頭に入れていただければ、改善につながるかと思いますので、是非とも取り入れてみてください。