今年から地方競馬で導入された「地方競馬のグランドボーナス制度」をご存じでしょうか。
これは、指定されたダートグレード競走で特定の条件を満たすと、ポイントがたまり、その獲得総ポイントに応じて追加で褒賞金が得られる制度です。
中央競馬における古馬三冠特別報奨金制度に通じるものがある制度で、地方馬にとって夢のある制度といえるでしょう。
この記事では、グランドボーナスの対象レースや賞金額、制度の狙いなどをわかりやすく解説します。
「地方競馬 グランドボーナスって何?」という方は、ぜひ最後までご覧ください!
地方競馬のグランドボーナスとは?

地方競馬のグランドボーナスは、地方競馬の更なる発展と注目度の向上を目的に、地方競馬全国協会(NAR)が主催している新しいインセンティブプログラムです。
グランドボーナス制度の最大の特徴は、地方所属馬がダートグレード競走(JpnI)で上位に入ることで追加の賞金=ボーナスが得られるという点にあります。
2025年から導入されたシステムなので、2025年の春にこの記事を書いている時点でそこまで知名度はありませんが、JpnIという大舞台で活躍すればするだけ褒賞金が得られるチャンスなので、地方馬を管理する運営からしたらまたとないチャンスといえるでしょう。
【2025年版】グランドボーナスの対象レース一覧

2025年に始動したグランドボーナス制度では、地方競馬で行われるJpnI(GI)競走のうち、特定の12レースが対象に設定されています。
これらのレースにおいて、地方所属馬が上位の成績を収めることでポイントが付与され、シーズン終了時に獲得ポイント上位馬へ褒賞金が支給される仕組みです。
対象となる12レースは以下の通りです。
レース名 | 開催競馬場 |
---|---|
川崎記念 | 川崎 |
羽田盃 | 大井 |
かしわ記念 | 船橋 |
東京ダービー | 大井 |
さきたま杯 | 浦和 |
帝王賞 | 大井 |
ジャパンダートクラシック | 大井 |
マイルチャンピオンシップ南部杯 | 盛岡 |
JBCレディスクラシック | ※持ち回り |
JBCスプリント | ※持ち回り |
JBCクラシック | ※持ち回り |
東京大賞典 | 大井 |
※持ち回り=毎年開催競馬場が変わること
2025年度は整備された初年度ということで、3歳以上のJpnI(GI)競走のみ対象となっていますが、2歳馬の頂点を決めるJBC2歳優駿は2026年以降に対象レースとして加わる予定です。
グランドボーナスのルール

グランドボーナス制度は、単にレースで好成績を残した馬にボーナスが支給されるというシンプルな仕組みではありません。
年間を通じて対象レースに出走し、ポイントを積み上げていくことで、最終的に上位の地方馬へ褒賞金が与えられるシリーズ制となっています。
ここでは、ポイントの付与方法や、対象となる馬の条件、中央馬との違いについて詳しく解説していきます。
対象レースで地方馬の中で3着以内に入線した馬にポイントが付与
グランドボーナスでは、対象となるJpnI競走に出走した地方所属馬に対して、以下の条件でポイントが付与されます。
基本のポイント付与ルール
条件 | ポイント |
---|---|
出走(完走) | 1ポイント(東京大賞典は2ポイント) |
地方所属馬内1位での入線 | 3ポイント(東京大賞典は6ポイント) |
地方所属馬内2位での入線 | 2ポイント(東京大賞典は4ポイント) |
地方所属馬内3位での入線 | 1ポイント(東京大賞典は2ポイント) |
これに加えて、南関東で行われる「3歳ダート三冠競走」(羽田盃・東京ダービー・ジャパンダートクラシック)すべてに出走した地方馬にも3ポイントのボーナスが与えられます。
簡単にまとめると…
- 出走するだけで最低1ポイント
- 地方馬の中で3番以内に入るほど高ポイント
- 三冠皆勤もプラス評価
これらを年間通じて積み上げた結果、上位の地方馬が褒賞対象となります。
対象となる地方馬には条件がある
グランドボーナス制度は、すべての地方所属馬が自由に参加できるわけではありません。
以下のいずれかの条件を満たしている地方所属馬のみが、ポイント対象馬として扱われます。
対象条件(以下の①〜③のいずれか)
- 過去1年以内にGI/JpnI競走で6着以内に入線している馬
- 過去1年以内に地方重賞もしくはJRAオープン競走で4着以内に入線している馬
- 対象レースに対して優先出走権が付与される競走で4着以内に入線している馬
つまり、ある程度の実績や評価を得ている馬が対象となる仕組みで、「出走できれば誰でもOK」ではない点がポイントです。
JRA所属馬はグランドボーナスに参加できない
この制度は地方競馬の支援・活性化を目的としているため、JRA所属の中央馬は一切対象外となります。
ただし、JRAから地方へ移籍した元JRAの馬については、移籍後に地方所属馬として前述の条件を満たせば、グランドボーナスのポイント対象になります。
このルールにより、中央での限界を感じた馬が地方に転入して再チャレンジする動きが活性化する可能性も高く、制度の再挑戦支援という側面にも注目が集まります。
グランドボーナスの褒賞金

グランドボーナス制度の最大の魅力は、ポイント上位に入った地方馬に支給される「褒賞金(ボーナス)」です。
これは通常のレース賞金とは別に与えられる報奨金で、シリーズを通して活躍した馬に対するご褒美として、かなりの高額が用意されています。
褒賞金の配分は以下のとおりです(※2025年度時点の発表による)。
馬主 | 調教師 | |
---|---|---|
1位 | 2,000万円 | 1,000万円 |
2位 | 1,800万円 | 900万円 |
3位 | 1,600万円 | 800万円 |
4位 | 1,400万円 | 700万円 |
5位 | 1,200万円 | 600万円 |
6位 | 1,000万円 | 500万円 |
7位 | 800万円 | 400万円 |
8位 | 600万円 | 300万円 |
9位 | 400万円 | 200万円 |
10位 | 200万円 | 100万円 |
このように、年間を通じて安定した成績を残すことができれば、3,000万円という非常に大きな副収入を得ることが可能になります。
これは地方競馬にとっても、馬主・調教師にとっても非常にインセンティブの高い制度です。
また、今後は褒賞金の拡充や、対象馬の拡大も検討されているとされ、制度のさらなる発展が期待されています。
グランドボーナス制度の目的

グランドボーナス制度は、単なる賞金アップ施策ではなく、地方競馬の未来を見据えた戦略的な取り組みです。
NAR(地方競馬全国協会)がこの制度を導入した背景には、複数の狙いと明確な目的があります。
ここからは、グランドボーナス制度の目的について解説します。
地方競馬の注目度アップ
まず第一の目的は、地方競馬の存在感を高め、より多くのファンに注目してもらうことです。
これまでダートグレード競走では、JRA所属馬の一方的な活躍が多く、地方馬が注目を集める機会は限られていました。
しかし、グランドボーナスの導入により、地方馬のシリーズ戦での成績やポイント争いが可視化され、メディア露出や話題性が増すことが期待されています。
結果として、地方競馬全体の売上向上や、ファン層の拡大にもつながる可能性があります。
地方馬の馬質向上と移籍促進
もう一つの大きな目的は、地方競馬における競走馬の質の向上です。
グランドボーナスでは、JRAオープン競走で4着以内の馬も対象条件に含まれているため、中央で頭打ちになったオープン級の馬が地方に移籍しやすくなります。
この流れが活発化すれば、地方競馬のレースレベルが上がり、ファンにとってもより見応えのある対決が増えるでしょう。
また、各地方競馬場の看板馬やスター候補の誕生にもつながり、地域ごとの競馬文化の発展にも寄与すると考えられます。
地方所属関係者への支援と還元
褒賞金という形で、馬主や厩舎関係者に報われるチャンスを提供することも、制度の重要な狙いの一つです。
とくに地方競馬は経済規模がJRAに比べて小さいため、限られた資源で頑張る関係者へのインセンティブ強化は、持続的な運営のためにも大きな意味を持つでしょう。
褒賞金の範囲も10位まであるので、より一層多くの陣営が競走馬の育成に育むことに期待がかかります。
地方競馬のグランドボーナス:まとめ

2025年からスタートした「地方競馬グランドボーナス制度」は、単なる賞金制度ではなく、地方競馬の未来を切り開くための新しい挑戦です。
地方所属馬が中央馬と戦うだけでなく、シリーズを通してポイントを積み上げ、最終的に高額の褒賞金を得られるチャンスが生まれたことで、地方競馬の価値と注目度は確実に上昇しています。
とくに、
- 中央からの移籍馬が活躍しやすくなる環境整備
- 地方ファンにとって応援する馬を見つけやすくなる効果
- 関係者への還元と競走馬の質向上
といった面では、今後ますます重要な制度となるでしょう。
また、2026年以降は2歳戦も対象に加わる予定であり、グランドボーナスの影響は今後さらに広がっていくことが予想されます。
これから地方競馬を楽しみたい方にとっても、どの馬がグランドボーナス争いをしているのか?という新しい視点を持つことで、より深くレースを楽しめるようになるはずです。