競馬ニュースや出走表のコメントで「疝痛」という言葉を見たことはないでしょうか。
疝痛は競走馬に多く見られる消化器トラブルの総称で、軽い便秘から命に関わる腸捻転まで幅広い状態を含む病気です。
一見すると単なる腹痛のように思われがちですが、馬にとっては急変することも多く、競走馬の休養理由や死亡原因としても知られています。
この記事では競馬における疝痛の意味や原因、見分け方、死亡につながるケースまで初心者にも分かりやすく解説します。
疝痛の読み方と意味
競馬のニュースや調教コメントでは、「疝痛」という言葉が使われることがあります。
疝痛は馬の腹痛を伴う消化器系トラブルの総称で、競走馬では特に注意される病気のひとつです。
まずは読み方や意味など、基本的な知識から確認していきましょう。
読み方はせんつう
疝痛の読み方は「せんつう」です。
競馬の出走取消や休養理由として「疝痛のため回避」といった形で表記されることがあり、競馬ファンなら目にする機会も少なくありません。
難しい漢字ですが意味は馬の腹痛を指す言葉で、競走馬の体調トラブルを表す代表的な用語のひとつです。
疝痛の原因が幅広い
疝痛は一つの病名ではなく、腹痛を伴う消化器トラブルの総称であるため原因が非常に幅広いのが特徴です。
軽い便秘やガスの蓄積によって起こる場合もあれば、腸閉塞や腸捻転のように命に関わる重い病気が隠れていることもあります。
また、飼料内容の変化や水分不足、ストレス、運動不足など日常管理が関係するケースも多く見られます。
同じ疝痛という言葉でも状態の重さが大きく異なるため、早めの判断が重要になります。
競走馬における疝痛は緊急性の高い病気として見られる
競走馬における疝痛は緊急性の高い病気として扱われることが多く、異変が見られた場合はすぐに獣医師の診察を受けるのが基本です。
馬は消化器の構造上トラブルが起こりやすく、軽い症状に見えても短時間で悪化することがあります。
特に腸捻転や腸閉塞のような重症例では手術が必要になる場合もあり、対応が遅れると命に関わる危険性が高まります。
そのため競馬の現場では、疝痛は様子見せず早急に対応すべき症状として認識されています。

どうして馬は疝痛になりやすい?
馬は消化器の構造が特殊で、ほかの動物に比べて疝痛を起こしやすいといわれています。
体のつくりに由来する弱点がいくつもあり、それが腹痛や消化器トラブルの原因になります。
ここでは馬が疝痛になりやすい理由を体の構造から解説します。
胃が小さく、嘔吐できない
馬は体格のわりに胃の容量が小さく、一度に大量の飼料を処理するのが苦手な動物です。
さらに胃の入口である噴門の構造上、基本的に嘔吐ができないため、消化管に問題が起きても内容物を外へ出して調整することができません。
その結果、食べ過ぎや消化不良が起こると胃や腸に負担がかかりやすく、疝痛の原因になることがあります。
競走馬は濃厚飼料を多く与えられることも多く、この体の特徴が疝痛の発症リスクを高める一因とされています。
腸が長く、固定されにくい
馬の腸は体の大きさに対して非常に長く、腹腔内で完全に固定されていない構造になっています。
そのため腸の位置が変化しやすく、ガスの蓄積や内容物の移動によって腸がねじれたり移動したりすることがあります。
こうした変位や腸捻転は強い腹痛を引き起こすだけでなく、血流が止まると短時間で重症化する危険があります。
このように腸が動きやすい体の構造は、馬が疝痛を起こしやすい大きな理由のひとつです。
腸の太い部分と狭い部分があり、内容物がたまりやすい
馬の消化管には太い部分と狭い部分が混在しており、腸の形状が複雑になっています。
内容物がスムーズに流れにくい場所では飼料や水分が滞りやすく、便秘や詰まりの原因になることがあります。
特に水分不足や繊維不足の状態では腸内の内容物が硬くなりやすく、疝痛を引き起こすリスクが高まります。
こうした消化管の構造的な特徴も、馬が疝痛を起こしやすい理由のひとつといえるでしょう。
疝痛の種類
疝痛と呼ばれる症状にはいくつかの種類があり、原因や重症度は大きく異なります。
軽い症状で回復するケースもありますが、命に関わる重症例も含まれるため注意が必要です。
代表的な疝痛には次のようなものがあります。
・便秘疝(ボロが減る、硬くなる)
腸の動きが弱まったり水分が不足したりすると内容物が滞り、排便量の減少や硬いボロが見られるようになります。
比較的多く見られるタイプですが、悪化すると強い痛みにつながります。
・ガス(風気)疝(お腹が張る、痛みが強い)
腸内にガスがたまることで腹部が張り、落ち着きがなくなるなどの症状が現れます。
飼料内容の変化や消化不良が原因になることが多く、痛みが強く出やすい特徴があります。
・変位疝(腸捻転など)(手術が必要になることがある)
腸が移動したりねじれたりする重症の疝痛で、急激に状態が悪化することがあります。
内科的治療では改善しない場合も多く、開腹手術が必要になるケースもあるため特に注意が必要です。
疝痛の原因は何?
疝痛の原因はさまざまですが、多くの場合は日常の飼養管理が発症リスクに関係しています。
特に競走馬では飼料内容や生活環境の影響を受けやすく、いくつかの要因が重なることで発症しやすくなります。
・濃厚飼料の多給、繊維不足
・水分摂取の不足
・環境変化によるストレス
・運動不足
・寄生虫、歯の不具合など
このように疝痛は単一の原因ではなく、複数の要因が重なって発症するケースが多い病気といえます。
疝痛のサイン
疝痛のサインはさまざまですが、行動や体調の変化として現れることが多く、普段との違いに気づくことが早期発見につながります。
特に競走馬では症状が急激に進行することもあるため、わずかな異変でも見逃さないことが重要になります。
・前掻き、落ち着かない、腹を見る
・寝転がる(ローラー)を繰り返す
・発汗、元気低下、呼吸が荒い
・食欲不振、飲水量の低下
・ボロ(糞)が減る、硬い、出ない(排便の変化は特に重要)
このような症状が見られる場合は疝痛の可能性があり、様子を見続けるのではなく早めに対応することが大切です。
特に排便の異常は重要なサインとされており、ボロが長時間出ていない場合は注意が必要です。
馬の疝痛が死亡につながるのはなぜ?
疝痛は軽い腹痛のように見えても、状態によっては命に関わる危険な病気です。
特に競走馬では急激に悪化するケースもあり、致死率が高い病気として知られています。
ここでは疝痛が死亡につながる理由について解説します。
軽症に見えても急変しやすい
疝痛は初期の段階では食欲が少し落ちる程度や落ち着きがなくなる程度の軽い症状に見えることも多く、見逃されやすい特徴があります。
しかし消化管のトラブルが進行すると短時間で状態が悪化し、強い腹痛やショック症状につながる場合があります。
特に腸閉塞や腸捻転のような重症例では、外見上の変化が少ない段階から急激に悪化することもあります。
そのため疝痛は軽そうに見えても油断できない病気として注意されています。
時間との勝負になりやすい
疝痛は発症してからの対応が遅れるほど状態が悪化しやすく、時間との勝負になりやすい病気です。
特に腸捻転や腸閉塞のような重症例では血流が悪化し、腸の組織が傷むことで回復が難しくなる場合があります。
早い段階で治療を開始できれば助かる可能性は高まりますが、対応が遅れると手術が必要になったり命に関わったりすることもあります。
そのため疝痛が疑われる場合は、できるだけ早く対処することが重要とされています。
ハルウララの疝痛報道から学べること
かつて人気を集めたハルウララも晩年に疝痛を発症し、その死因として報じられたことで話題になりました。
この出来事から、疝痛が馬にとってどれほど深刻な病気なのかを知った人も多いでしょう。
ここではハルウララの事例から疝痛について考えてみます。
「死因が疝痛」と言い切りにくい理由(疝痛は総称)
疝痛は特定の病名ではなく腹痛を伴う症状の総称であるため、「死因が疝痛」と単純に言い切るのは難しい場合があります。
実際には便秘や腸閉塞、腸捻転などさまざまな原因が考えられ、それぞれ重症度や経過も大きく異なります。
疝痛という言葉は腹痛を示す症状名に近く、その背景には便秘や閉塞、腸のねじれなど複数の原因が含まれる可能性があります。
これは人間でいう「胸痛」という表現に似ており、症状を示す言葉ではあっても原因となる病気までは特定していない場合が多いといえます。
そのため競馬のニュースなどで「疝痛のため死亡」と報じられる場合でも、実際には消化管の重大なトラブルが背景にあることが多いと考えられます。
排便が止まる怖さ
疝痛では排便の変化が重要なサインとなり、ボロが出ない状態は特に注意が必要です。
一見すると単なる便秘のように見えても、腸閉塞や腸のねじれなど重い消化器トラブルが隠れている可能性があります。
ボロが出ない状態は腸の閉塞や重いトラブルのサインである可能性があり、軽く考えるべきではありません。
また高齢馬では体力や回復力の問題から手術が難しい場合もあり、結果として急激な悪化につながることもあります。
排便が長時間見られない場合は軽く考えず、早めに獣医師へ相談することが重要になります。
まとめ|競馬の疝痛は「早期発見と初動」で差がつく
疝痛(せんつう)は馬の腹痛を伴う消化器トラブルの総称で、軽い便秘から腸捻転のような命に関わる重症例まで幅広く含まれます。
前掻きや発汗、寝転がる行動、食欲の低下、排便の異常といった変化は重要なサインであり、普段との違いに早く気づくことが大切です。
疝痛は時間との勝負になるケースも多く、疑わしい症状が見られた時点で獣医師に連絡することが安全な対応といえます。
早期発見と適切な初動が、回復できるかどうかを左右する重要なポイントになります。

