競馬の重賞レースには、由来を知るとより楽しめる名前が数多く存在します。
その中でも星座や恒星の名前が使われているレースは、競馬ファンの間で密かな人気を集めています。
プロキオンステークスやカペラステークスのように、夜空に輝く星がレース名に込められている例も少なくありません。
意味を知らずに聞いていたレース名も、由来を知ることで印象が大きく変わります。
本記事では、星座や星にちなんだ重賞レースを中心に、その名前の意味や背景をわかりやすく紹介していきます。
星座の名前が付いた重賞レース一覧
星座や恒星の名前が付けられた重賞レースは、競馬の世界でも独特の存在感を放っています。
これらのレース名は、夜空に輝く星や神話に由来しており、それぞれに意味や物語が込められています。
単なる名称として見るだけでなく、由来を知ることでレースへの見方も変わってきます。
ここからは、星や星座の名前が使われている代表的な重賞レースを取り上げ、それぞれの特徴と名前の由来を解説していきます。
プロキオンステークス
| グレード | G2 |
|---|---|
| 創設 | 1996年 |
| 開催競馬場 | 中京競馬場 |
| コース | ダート1,800m |
| 出走条件 | 4歳以上 |
| 負担重量 | 別定 |
| 1着賞金 | 5,500万円 |
プロキオンステークスは、JRAが施行するダート重賞で、現在はJRAで唯一のダートG2競走に指定されています。
競走名のプロキオンは、こいぬ座のアルファ星で、シリウスやベテルギウスとともに「冬の大三角」を形作る恒星です。
1996年にダート重賞路線の整備を目的として創設され、当初は阪神競馬場ダート1,400mで行われていました。
その後は開催時期や競馬場を変えながら発展し、地方競馬所属馬や外国調教馬にも門戸を開いてきました。
2025年からは開催時期が1月に移行し、距離もダート1,800mへ変更されています。
あわせてG2へ昇格し、1着馬にはフェブラリーステークスの優先出走権が与えられる重要な前哨戦となりました。
現在はスピードだけでなく持続力も求められる、ダート中距離路線の指標となる一戦です。
アンタレスステークス
| グレード | G3 |
|---|---|
| 創設 | 1996年 |
| 開催競馬場 | 阪神競馬場 |
| コース | ダート1,800m |
| 出走条件 | 4歳以上 |
| 負担重量 | 別定 |
| 1着賞金 | 3,800万円 |
アンタレスステークスは、JRAが阪神競馬場で施行するダート重賞で、春のダート中距離路線を担うG3競走です。
競走名のアンタレスは、さそり座のα星で、赤く輝く恒星として知られています。
1996年にダート重賞整備の一環として創設され、当初からダート1,800m戦として行われてきました。
開催競馬場は京都と阪神を行き来しましたが、現在は阪神競馬場に定着しています。
過去にはゴールドアリュールやホッコータルマエ、テーオーケインズなど、後にG1級へ成長する馬も勝利しています。
帝王賞路線を見据える馬にとって、重要なステップレースのひとつといえる存在です。
シリウスステークス
| グレード | G3 |
|---|---|
| 創設 | 1997年 |
| 開催競馬場 | 阪神競馬場 |
| コース | ダート2,000m |
| 出走条件 | 3歳以上 |
| 負担重量 | ハンデ |
| 1着賞金 | 3,800万円 |
シリウスステークスは、JRAが阪神競馬場で施行するダート重賞で、秋のダート中距離路線を担うG3競走です。
競走名のシリウスは、おおいぬ座のα星で、夜空でもっとも明るく輝く恒星として知られ、中国では天狼星と呼ばれています。
1997年にハンデキャップ重賞として創設され、当初はダート1,400mで行われていましたが、2007年からはダート2,000mへ変更されました。
現在はチャンピオンズカップへ向かう実力馬の前哨戦として重要な位置づけにあります。
ハンデ戦らしく波乱も多く、オメガパフュームやカフェファラオなど、後にG1級へ成長する馬がここから飛躍してきました。
実力と適性、斤量のバランスが問われる、見応えのある一戦です。
カペラステークス
| グレード | G3 |
|---|---|
| 創設 | 2008年 |
| 開催競馬場 | 中山競馬場 |
| コース | ダート1,200m |
| 出走条件 | 3歳以上 |
| 負担重量 | 別定 |
| 1着賞金 | 3,800万円 |
カペラステークスは、JRAが中山競馬場で施行するダート1,200mの短距離重賞で、年末のダートスプリント路線を締めくくるG3競走です。
競走名のカペラは、ぎょしゃ座のα星で、「冬のダイヤモンド」を構成する恒星のひとつとして知られています。
2008年に創設され、ガーネットステークスの流れを引き継ぐ形で中山ダート1,200mに定着しました。
地方競馬所属馬や外国馬も参戦可能で、スピード自慢が集まりやすい点が特徴です。
近年は優勝馬に翌年2月にサウジアラビアで開催されるリヤドダートスプリントへの優先出走権が与えられ、国際舞台への登竜門としての役割も強まっています。
ハイペースになりやすく、展開と枠順が結果を大きく左右する一戦です。

重賞が以外にも星座の名前が付いたレースは多数ある
JRAの番組を見渡すと、重賞だけでなくオープン特別や条件戦にも、星座や恒星に由来するレース名が数多く存在します。
これらの多くは、星座の中で特に明るい恒星や、季節を象徴する星の名前が用いられており、競馬と天文学を結びつけるユニークな文化といえます。
実際にJRAで確認できる星座・恒星由来の特別競走は19レース存在し、月ごとに配置されている点も特徴です。
ここでは代表的なレースを一覧表にまとめ、星の由来とあわせて整理します。
星座・恒星の名前が付いた主なJRA特別競走一覧
| レース名 | 開催時期 | 開催場 | コース | 星・星座の由来 |
|---|---|---|---|---|
| ポルックスステークス | 1月 | 中山 | ダート1,800m | ふたご座β星 |
| すばるステークス | 1月 | 京都 | ダート1,400m | プレヤデス星団(散開星団) |
| プロキオンステークス | 1月 | 中京 | ダート1,800m | こいぬ座α星 |
| アルデバランステークス | 2月 | 京都 | ダート1,900m | おうし座α星 |
| スピカステークス | 3月 | 中山 | 芝1,800m | おとめ座α星 |
| ポラリスステークス | 3月 | 阪神 | ダート1,400m | こぐま座α星(北極星) |
| アンタレスステークス | 4月 | 阪神 | ダート1,800m | さそり座α星 |
| 彦星賞 | 7月 | 福島 | 芝1,200m | わし座α星(アルタイル) |
| 天の川特別 | 7月 | 福島 | 芝1,800m | 天の川 |
| 織姫賞 | 7月 | 福島 | 芝1,800m | こと座α星(ベガ) |
| エニフステークス | 9月 | 阪神 | ダート1,400m | ペガスス座の恒星 |
| シリウスステークス | 9月 | 阪神 | ダート2,000m | おおいぬ座α星 |
| カシオペアステークス | 10月 | 京都 | 芝1,800m | カシオペア座 |
| アンドロメダステークス | 11月 | 京都 | 芝2,000m | アンドロメダ座 |
| カペラステークス | 12月 | 中山 | ダート1,200m | ぎょしゃ座α星 |
| オリオンステークス | 12月 | 阪神 | 芝2,200m | オリオン座 |
| リゲルステークス | 12月 | 阪神 | 芝1,600m | オリオン座β星 |
| ベテルギウスステークス | 12月 | 中京 | ダート1,400m | オリオン座α星 |
| ギャラクシーステークス | 12月 | 阪神 | ダート1,400m | 銀河 |
星の配置と競馬番組の面白い関係
これらのレース名には、「冬のダイヤモンド」や「冬の大三角」を構成する恒星が多く含まれています。
一方で、プロキオンステークスは一時期夏に開催され、シリウスステークスは秋に行われている点に違和感を覚える方もいるかもしれません。
これは、創設当初の開催時期が現在とは異なっていたためで、レース名はそのまま残されたという経緯があります。
それでも、プロキオンステークスはこれまで春~夏に行われていましたが、2025年に開催時期が1月へ移行したことで、ようやく星座名にふさわしい時期での開催となっています。
星座の知識を知ったうえで競馬番組を見ると、レース名に込められた背景まで楽しめるのも魅力のひとつです。
星座名のレースにダート競走が多い背景
星座名を冠したレースがダートに多いのは、JRAの番組編成の歴史と深く関係しています。
星座名レースが増え始めたのは1990年代後半から2000年代にかけてで、この時期は地方交流の拡大やフェブラリーステークス創設などを背景に、ダート重賞やオープン特別が一気に整備されました。
新設レースでは既存の伝統的な名称を使えないため、星座や恒星といった抽象的で格調のある名前が採用されやすかったのです。
一方、芝の重賞路線は日本ダービーや天皇賞、菊花賞など歴史ある名称がすでに定着しており、新たなネーミングの余地は限られていました。
後発路線であるダート競走は番組の自由度が高く、星座名を取り入れやすい土壌があったといえます。
加えて、ダート競走は季節や馬場状態の影響を受けにくく、冬場でも安定して施行できるという利点があります。
そのため、冬の星座に由来するレース名との相性が良く、開催時期とも自然に結びつきました。
実際にカペラ(12月)、アルデバラン(2月)、ポルックス(1月)など、星のイメージと番組配置が一致するケースも多く見られます。
以上のことから、ダート競走では星座や恒星の名前が付くレースが多くなり、競馬ファンの間でも「星座名=ダート」という印象が定着していったのです。
星座の名前が付いた重賞レースのまとめ
星座や恒星の名前が付いた競馬のレースは、重賞からオープン特別まで数多く存在しています。
プロキオンステークスやカペラステークスのように、天体の名前を由来とする重賞は、その響きからも印象に残りやすい存在です。
一方で、ポルックスステークスやリゲルステークスなど、リステッド以下にも星座由来のレースは広く散らばっています。
由来を知ることで開催時期やレースの背景への理解が深まり、競馬観戦の楽しみ方も変わってきます。
競馬と星座という一見離れたテーマですが、知識として知っておくと面白さが増す切り口といえるでしょう。

