競馬中継を見ていて「カンパイです」というアナウンスに戸惑った経験はありませんか?
乾杯?完敗?…実はこれ、発走やり直しを意味する競馬用語なのです。
カンパイはレースのスタートに不備があった際に発令され、場合によっては払い戻しや再発走となる重要な出来事です。
この記事では、カンパイの意味・語源・発生事例・馬券の扱いまでを初心者にもわかりやすく解説します。
カンパイとは?競馬におけるやり直しの合図

競馬における「カンパイ」とは、発走が正常に行われなかった場合に、レースを無効としてやり直す合図のことです。
中央競馬でも地方競馬でも、発走委員の判断によってカンパイが宣言されると、騎手と馬はゲートに戻され、レースは再スタートとなります。具体的なカンパイ例は下記の通りです。
発馬機(ゲート)の不具合
スタート時に使用されるゲート(発馬機)が正常に作動しない場合、カンパイが宣言されることがあります。
具体的にはゲートが開かない、一部の馬だけがスタートできるなどの不具合が発生したときに、レースの公正さを保つためにやり直しとなります。
これは最も典型的なカンパイ要因の一つです。
複数の馬が立ち遅れた、あるいはスタートできなかった
ゲートが正常でも、複数の馬が出遅れてしまった場合にもカンパイになることがあります。
たとえば馬がゲート内で暴れたり、うまく飛び出せなかったりするケースです。
1頭のみの出遅れでは通常レース続行となりますが、2頭以上になるとレースの公平性に疑問が生じるため、やり直しが判断されることがあります。
スタート直後に前の馬が倒れるなど、他馬の走行に明確な影響を与えた
スタート直後に転倒した馬が進路を塞いだり、複数の馬の進行を妨げたりした場合も、レースが成り立たないと判断されてカンパイになることがあります。
安全確保の観点からも、このようなケースでは即座にやり直しの判断が下されることが多く、騎手や馬への影響も大きいため慎重な対応が求められます。
カンパイの語源と由来|実は英語の“Come back”がなまったもの?

カンパイという言葉は、競馬の専門用語として使われていますが、実はその語源は英語の“Come back(戻れ)”に由来するといわれています。
かつて外国人のスターターがスタート失敗時に「カムバック!」と叫んでいたのを、日本人関係者が「カンパイ」と聞き取り、そのまま定着したという説が有力です。
乾杯や完敗とは無関係で、今ではJRAや地方競馬でも公式に使われる用語となっています。
カンパイのときは払い戻しされるの?馬券の扱いは?

カンパイが発生した場合、購入した馬券は競走除外となった馬は払い戻しの対象となります。
ただし、カンパイは「レースの再スタート」なので、除外対象馬以外はそのまま続行されます。
そのため、基本的にカンパイが発生した際は払い戻しにはならないものと認識したいです。
実際にあったカンパイ事例|川崎や大井など地方競馬で発生

以下は、地方競馬で実際に起きたカンパイ事例です。
たとえば川崎競馬では1日に2度ものカンパイが発生した非常に珍しいケースがあり、大井競馬でも2023年4月に久々のカンパイが話題になりました。
ここでは、それぞれの発生背景、影響、レース後の対応について具体的に紹介します。
川崎競馬 2024年5月8日(4R&7Rで一日に2回)
2024年5月8日、川崎競馬場ではなんと1日に2度のカンパイが発生する珍事が起こりました。
第4レースでは、ゲート係員がゲートを離れる前にスタートが切られ、安全確保ができないと判断され全馬除外・レース取り止めに 。続く7レースでもフライング発生と後続馬への影響で再発走しています。
ピースリアン号は長距離を走って除外となり、再スタート後にレースが成立しました。
地方競馬でも異例中の異例とされ、SNSや競馬ニュースで大きく注目されました。
大井競馬 2023年4月18日(6R)
大井競馬では2023年4月18日、第6レースにてゲートの不具合などでカンパイが発生しました。
この日、大井ではしばらくぶりのカンパイとなり、すべての出走馬(コーラルキングを除く)が再びゲートに戻されたのです。
馬券はすべて返還され、再発走が行われましたが、それ以上に南関東地区における久々のカンパイということで関係者に大きな驚きが広がりました。
大井競馬 2025年6月12日(優駿スプリントトライアル・11R)
2025年6月12日に行われた大井競馬11R「優駿スプリントトライアル」において、カンパイが発生しました。
原因は、12番ピンクタオルチャンがフライングしたためです。
大井競馬でのカンパイは、2023年4月18日・6R以来およそ2年ぶりの発生です。
今回はカンパイによる競走除外はなく、あらかじめ取り消しが発表されていたコーラルキングを除く13頭すべてが再びゲートインし、再スタートでは3番人気リオンダリーナが逃げ切り勝ちを収めました。
スタートやり直しによる混乱はあったものの、大きな事故もなく、無事にレースが成立した事例として記録されました。
なぜカンパイは荒れるといわれるのか?

競馬ファンの間では「カンパイ後のレースは荒れやすい」との声が少なくありません。
実際、カンパイによって予定されていたレースの流れが大きく変わり、人気馬の凡走や思わぬ高配当が生まれることもあります。
以下に、その理由とされる要素を3つ紹介します。
一度走りかけて再発走になるため、一部の馬が体力を消耗する
カンパイが発生すると、ゲートから出た馬たちはある程度の距離を走ってから止まり、再度スタート位置まで戻されます。
特にテンションの高い馬や先行意識の強い馬は、その短いダッシュでも大きな体力を使ってしまい、再発走時に本来の力を発揮できないケースが見られます。
騎手や馬がテンションを崩し、予定外の展開になる
スタート直後に仕切り直しとなることで、騎手や馬が精神的にリズムを乱してしまうことがあります。
特に繊細な性格の馬は、再発走時にゲート入りを嫌がったり、力みすぎたりする傾向があります。
結果として、予定していた戦略通りに運べず、波乱の展開を呼ぶことがあるのです。
カンパイによる心理的動揺で、人気馬が凡走することも
人気馬に乗る騎手ほど勝って当然というプレッシャーがありますが、カンパイによってその心理状態が揺らぐことがあります。
カンパイによる待機時間の増加や雰囲気の変化により、冷静な判断が難しくなり、本来の力を出し切れずに凡走してしまうという例も少なくありません。
中央と地方の違い|なぜ地方競馬ではカンパイが多いのか?

中央競馬と比べて、地方競馬ではカンパイが発生する頻度が高いといわれています。
その背景にはいくつかの理由があります。
まず、地方競馬場の中には発馬機(ゲート)の設備がやや古く、トラブルが起こりやすいケースがある点でしょう。
中央競馬の発馬機は最新のものが導入されているので、1997年12月に発生したカンパイを最後、カンパイは一切発生していません。
また、地方競馬は転入馬やデビュー直後の若駒が多く、スタートに不慣れな馬が揃いやすいため、フライングや発走不良のリスクが高まります。
さらに、騎手の経験や技術にもばらつきがあり、特にスタート直後の対応に差が出やすいのも要因のひとつです。
こうした要素が重なることで、地方競馬では中央競馬と比較してもカンパイが発生しやすいのです。
まとめ|「カンパイ」を知っておくとレーストラブルに動じない!

競馬における「カンパイ」は、スタート時のトラブルによってレースが無効となり、やり直しが宣言される重要なルールです。
語源は“Come back”に由来し、現在では主に地方競馬で発生することが多くなっています。
カンパイが起きると馬券は払い戻しとなり、再発走では馬や騎手の心理的・肉体的な影響から波乱の展開になることもあります。
こうした知識を持っておくことで、いざというときにも冷静に対応でき、より深く競馬を楽しむことができるでしょう。