競馬ファンであれば一度はこう思ったことがあるのではないでしょうか。
「なぜダートの重賞は芝に比べて少ないのか?」
中央競馬(JRA)では、皐月賞や日本ダービー、天皇賞などの主要レースがすべて芝で行われています。
一方で、ダートG1はフェブラリーステークスとチャンピオンズカップのわずか2つしかありません。
地方競馬ではダートが主流であるのに、中央ではなぜ少ないのか?
この記事では、ダート重賞が少ない理由について、人気の違い、JRAと地方の関係性、そして今後の展望という3つの軸で詳しく解説します。
中央競馬のダート重賞が少ない5つの理由

中央競馬(JRA)において、ダートの重賞レースが芝と比べて少ない背景には、いくつかの歴史的・構造的な要因があります。
芝レースの圧倒的なブランド力、ファン・マスコミの関心の偏り、そして地方競馬との役割分担や交流重賞の存在が、ダート重賞の数に影響を与えているのです。
以下では、それぞれの要因を詳しく解説します。
中央競馬は芝至上主義
日本中央競馬会(JRA)のレース体系は、設立当初から芝コースを中心に構成されてきました。
特に皐月賞、日本ダービー、菊花賞という「クラシック三冠競走」は、競馬界における最高の栄誉とされ、多くの関係者がその頂点を目指します。
芝で結果を残せば、引退後も種牡馬としての価値が高くなるため、馬主や生産者も芝路線を優先しがちです。
一方、冬季の芝保護やレース継続のために設けられたのがダートコースでした。
これはアメリカ競馬を参考にしたもので、当初は補完的な位置づけに過ぎなかったのです。
その名残から、現在でも芝が主流、ダートはサブという構図が根強く残っており、重賞数にも明確な差が表れています。
ちなみに、現在も中央競馬のダート重賞は少ないですが、ダートコースが中央競馬に導入されたころは今以上に少なく、碌な重賞はないといわれているほどだったのです。
そのころを考えれば現在はダート重賞の整備が行われているといえるでしょう。
ファンやマスコミの注目も芝に偏る
芝のG1レースは、テレビ中継や新聞、ネットメディアなどで大きく取り上げられ、年間を通して注目度が高くなっています。
ダービーや有馬記念などは一般層にも認知度があり、馬券ファン以外の興味も引きつけるほどです。
一方、ダート重賞はフェブラリーステークスやチャンピオンズカップのようなG1ですら、賞金額が少なく、芝のレースに比べると報道の扱いが小さくなりがちです。
こうした情報の偏りは、ファンの意識にも影響を与え、「芝=主流、ダート=サブ」という認識を固定化しています。
JRAとしても話題性のある芝路線を強化する傾向にあり、結果としてダート重賞の拡充が後回しにされてしまうのです。
ダート重賞の売上が芝に比べて伸びにくい傾向があるから
ダート重賞は、芝のG1や主要レースと比べて売上が控えめな傾向があります。
例えば、フェブラリーステークスやチャンピオンズカップのようなダートG1であっても、売上はダービーや有馬記念のような芝のビッグレースに遠く及びません。
この背景には、ファンの関心度やメディア露出の差が影響しています。
芝のレースは華やかなイメージが強く、名馬同士の対決が注目されやすいため、自然と馬券購入にもつながりやすいのです。
JRAとしても売上の高い芝路線を優先して番組を編成する傾向があり、ダート重賞の新設や拡充は慎重にならざるを得ないのが現状です。
地方競馬とのすみわけがある
地方競馬は、ダートコースが基本で、芝の設備を持たない競馬場が大半です。
そのため、地方では自然とダート路線が発達し、2歳戦から古馬重賞まで幅広い番組が整備されています。
このように、中央競馬が芝を中心とし、地方競馬がダートを主戦場とすることで、双方の役割が明確にすみ分けられてきました。
JRAとしても地方とのバランスを考慮し、むやみにダート重賞を増やすことで役割の重複や出走馬の分散が起きることを避けているのです。
このすみ分けは、競馬全体の効率化と興行バランスを保つ上で必要な戦略といえるでしょう。
中央・地方競馬の交流重賞が発展
現在では、JRAと地方競馬が連携して開催する「交流重賞」が多数存在しています。
代表的なものには帝王賞、JBCクラシック、東京大賞典などがあり、いずれも地方開催ながらJRA所属馬が多数出走し、ハイレベルな戦いが繰り広げられています。
こうした交流重賞の充実により、中央でダート重賞を大量に設けなくても、全国規模でダート路線を支える構図が成り立っています。
JRAの有力馬が地方のビッグレースに出走することで、地方競馬の集客や売上にも貢献しており、双方にとってウィンウィンな関係が築かれているのです。
このような発展した交流体系も、中央でのダート重賞数を抑えている一因となっています。
ダート路線強化の動きもある

かつては芝中心だった中央競馬においても、近年はダート路線の整備と強化が進みつつあります。
JRAは2歳戦や三冠路線などを通じてダート競走の層を厚くし、将来的なダート界のスター創出を狙っています。
また、国際舞台での活躍馬も増え、ダートレース全体の評価も上昇中です。
以下でその具体的な取り組みを見ていきましょう。
JRA主催のダート重賞が拡大中
2018年には、地方競馬で行われていたJBC競走がJRA京都競馬場で施行されるなど、中央開催との交流も明確に見えました。
これはJRAが本格的にダート路線の育成に力を入れ始めた象徴的な動きです。
さらに、2024年から始まった3歳ダート三冠構想(羽田盃・東京ダービー・ジャパンダートクラシック)も注目を集めています。
クラシック体系に類する重賞がダートでも確立されることで、若駒の進路としてダートが選ばれる機会が増えており、生産・育成段階でもダート適性馬への期待が高まりつつあります。
これまで「裏路線」と見なされがちだったダート路線が、徐々に芝と肩を並べる存在へと変わろうとしているのです。

海外遠征を見据えた価値向上
日本のダート馬が海外のビッグレースで活躍する機会も増えており、ダート路線全体の価値が再評価されています。
近年ではフォーエバーヤングがサウジカップで好走し、ウシュバテソーロがドバイワールドカップを制覇するなど、国際舞台での実績も増えてきました。
このような成功例が増えることで、JRAも海外遠征を見据えた馬づくりや番組設計を意識するようになり、ダート路線の整備が国際競走への布石として位置づけられています。
今後、さらに注目度が高まる可能性があります。
ダート重賞が少ない理由のまとめ

中央競馬におけるダート重賞が芝に比べて少ないのは、芝レースの人気・ブランド力、ファンやメディアの関心の偏り、地方競馬とのすみ分け、そして交流重賞の発展といった複数の要因が背景にあります。
加えて、ダート重賞の売上が芝より低い傾向も影響しています。
しかし近年ではJRA主催のダート重賞拡充やダート三冠構想、さらには海外G1での活躍など、ダート路線の価値向上に向けた動きも加速しています。
今後、ダート重賞の存在感はさらに高まっていくことに期待したいです!