競馬のレース中継や解説でよく耳にする「息を入れる」という表現をご存じでしょうか?
息を入れることは、馬の走り方や騎手の駆け引きに深く関係する、重要なレース戦術のひとつです。
初心者の方からすると、「馬が息を入れるってどういうこと?止まるの?」と疑問に思うかもしれません。
そこで、本記事では、競馬でいう「息を入れる」の意味や、どんな場面で活用されているのかをわかりやすく解説していきます。
競馬用語の息を入れるの意味とは?

競馬で「息を入れる」とは、レース中に馬が一時的にスピードを緩めてスタミナを温存する行為を指します。
特に逃げ馬に用いられる戦術で、ペースを絶妙に落としつつ後続に抜かれないように走るのがポイントです。
これは呼吸を整えるだけでなく、ゴール前での末脚を発揮するための準備でもあります。
騎手の手綱さばきが重要となる技術のひとつです。
なぜ息を入れることが重要なのか?

競馬では、ゴールまで一定のペースで走り続けることは現実的に不可能です。
特に中距離以上のレースでは、スタミナの温存が勝敗を左右します。
「息を入れる」ことによって、一時的に脚をため、ラストスパートに備えることが可能となります。
無理にペースを上げ続ければ、最後に失速するリスクが高まるため、息を入れるタイミングとその精度がレース結果を大きく左右するのです。
馬が息を入れる場面とタイミング

「息を入れる」といっても、どの馬も同じように走るわけではありません。
レース中の位置取りや展開によって、馬がスタミナを温存するタイミングは異なります。
以下では、代表的なケースを紹介します。
逃げ馬がペースを落とす場面
逃げ馬にとって「息を入れる」最も典型的な場面は、中盤に差しかかるあたりでペースを落とす瞬間です。
スタート直後は先頭を奪うために脚を使いますが、そのまま全速で飛ばし続ければゴール前でバテてしまいます。
道中で後続とのリードを保ちつつ、手綱を軽く抑えてスピードを調整することで、スタミナを温存するのが基本戦術です。
緩めすぎると差されるリスクもあるため、騎手の絶妙なペース配分が問われます。
コーナーで一息つく場面
競馬場のコーナーは直線に比べてスピードを出しづらく、馬自身も自然とペースを落としやすい区間です。
この特性を活かして、コーナーで息を入れることが多く見られます。
騎手が手綱を軽く引いて馬の力みを抑えることで、無駄な体力消耗を防ぎ、直線での加速に備えられます。
コーナーが多いコースほど、このテクニックが重要になります。
スムーズにコーナーを回りつつ息を入れられる馬は、ラストでの粘りにも強さを発揮します。
馬群の中で控える差し・追い込み馬
差しや追い込みタイプの馬は、レース前半~中盤を馬群の後方で過ごすことが多く、この時間帯に息を入れることが可能です。
道中で無理にポジションを上げず、折り合いをつけてリズム良く走ることで、脚をためるのが基本戦術となります。
ただし、他馬に囲まれたり進路が塞がれたりすると、呼吸が乱れて息を入れづらくなるケースも少なくありません。
そのため、位置取りと展開の読みが重要で、騎手の判断力と馬の精神面の安定が試される場面でもあります。
息を入れる=騎手の腕の見せどころ
「息を入れる」戦術の成否は、馬自身の能力だけでなく、騎手の判断力と手綱さばきに大きく左右されます。
いつ、どこで、どの程度ペースを緩めるかという判断は、展開や馬の気性、他馬の動きなど多くの要素を瞬時に見極める必要があり、まさに騎手の腕の見せどころです。
特に逃げ馬の場合、ペースを緩めすぎれば後続に飲み込まれ、緩めなければスタミナ切れというジレンマがあります。
その中で最適なタイミングで「息を入れる」ことができる騎手こそが、勝負所で馬の能力を最大限に引き出せる存在といえるでしょう。
息を入れられない馬のリスクとは?

レース中に「息を入れられない」状態が続くと、馬はスタミナを消耗しきってしまい、ゴール前で失速するリスクが高まります。
たとえば、スタートからポジションを取りに行って無理に脚を使った場合や、他馬に絡まれてペースを落とせない展開では、体力を温存する余裕がなくなります。
また、折り合いを欠いた馬は必要以上に力んで走るため、呼吸も乱れ、リズムも崩れてしまいます。
その結果、たとえ一時的に好位置につけていても、直線では脚が上がってしまい、馬券圏外に沈むことも珍しくありません。
息を入れることができるか否かは、レース全体を通じた生命線ともいえるのです。
馬券予想にも活かせる息を入れる知識

「息を入れる」戦術を理解することは、馬券予想の精度を上げるうえで非常に有効です。
たとえば、先行馬が多く揃ったレースではハイペースになりやすく、息を入れる余裕がなくなるため、差し馬や追い込み馬に有利な展開が予想されます。
また、逃げ馬に乗る騎手がペース配分に長けていれば、うまく息を入れて粘り込む展開も見込めます。
さらに、コーナーの数やコース形状によって息を入れやすいタイミングが異なるため、コース適性も重要な要素です。
過去レースで「息を入れられたかどうか」という視点でレース映像を見直すことで、各馬のスタミナ管理能力を把握でき、展開予想にも深みが出てきます。
息を入れるのまとめ

競馬における「息を入れる」とは、単にスピードを落とすのではなく、スタミナを温存し勝負どころで脚を使うための重要な戦術です。
その成否は馬の能力だけでなく、騎手の判断力や手綱さばきにも左右されます。
息を入れることができなかった馬は、後半に失速するリスクが高くなるため、展開や位置取り、騎手の技術が大きな意味を持ちます。
この知識は馬券予想にも役立ち、展開の読みやコース適性の判断材料として活用できます。レースを観る際には、馬がどこで息を入れているのかにも注目してみると、競馬の奥深さがさらに楽しめるでしょう。