年度代表馬の決め方とは?選出方法のプロセスを紹介【各部門の解説あり】

毎年1月に開催される「JRA授賞式」は前年活躍した競走馬を各部門ごとに発表する表彰式です。

その中でも前年の中央競馬で多大な活躍を見せた馬は「年度代表馬」に選出されます。

JRA授賞式は毎年1月上旬に開催される風物詩であると同時に、JRA授賞式の前身である「啓衆社賞」時代から数えると70年以上も開催されている歴史ある表彰式なのです。

ところで、年度代表馬はどのように選定するのか気になる方もいるかもしれません。

そこで、当記事では年度代表馬の基本的な情報をはじめ、年度代表馬になる条件やJRA賞の各表彰部門についてまとめました。

目次

年度代表馬とは?

冒頭でも触れましたが、年度代表馬は一年でもっとも活躍した馬のことをいいます。

過去の年度代表馬を見ても三冠馬のシンザンやシンボリルドルフ、ディープインパクトやオルフェーヴルといった三冠馬はほぼ間違いなく年度代表馬に選出されました。

それ以外にもTTGの愛称で知られているトウショウボーイやテンポイント、グリーングラスも年をまたいで選出されていますし、オグリキャップやキタサンブラックなど、一般人にも知名度の高い馬も年度代表馬となっています。

年度代表馬を一言でまとめるならその年のスターホースといっても過言ではないでしょう。

年度代表馬になる条件は?

年度代表馬は一年で活躍するだけではなれません。

なぜなら、競馬は短距離から中・長距離をはじめ、芝やダート、障害レースなど各部門の最強馬がいるからです。

そこで、年度代表馬に成るにはいくつかのステップを挟んだうえで選考されることとなります。

ここからは年度代表馬になるための条件をまとめました。

各部門の最強馬を選定する

年度代表馬を選択するには各部門の最強馬を決める必要があります。

各部門というのはそれぞれのカテゴリーに分けられた10の部門のことで、詳細は下記の通りです。

  • 最優秀2歳牡馬
  • 最優秀2歳牝馬
  • 最優秀3歳牡馬
  • 最優秀3歳牝馬
  • 最優秀4歳以上牡馬
  • 最優秀4歳以上牝馬
  • 最優秀スプリンター
  • 最優秀マイラー
  • 最優秀ダートホース
  • 最優秀障害馬

最初に各部門の最強馬を選出したうえでそこから年度代表馬を選択するのです。

JRA賞受賞馬選考委員会が最強馬を決める

年度代表馬や各部門の最強馬は「JRA賞受賞馬選考委員会」という組織に所属している人が決めます。

JRA賞受賞馬選考委員会というのは、競馬に携わる新聞記者や放送記者で構成されている組織で、普段競馬新聞で予想を公開している記者や競馬中継の解説者の集団といったら分かりやすいかもしれません。

「JRA賞受賞馬選考委員会」の投票権利がある記者が毎年250名近く集まり、各部門の最強馬を選択します。

投票の際は、各部門ごとに1頭だけその部門の最強馬を選択しなければなりませんが、部門ごとに同一の馬を選択することは可能です。

2024年の例でみると、一人の記者が最優秀ダートホースの部門にフォーエバーヤングとレモンポップを2頭選択することはできませんが、最優秀ダートホースと最優秀3歳牡馬の部門にフォーエバーヤングを選択することは可能です。

ちなみに該当馬がいない場合は「該当馬なし」を選ぶこともできます。

なお、選定馬は中央競馬所属馬だけではなく地方競馬や外国馬も対象になっています。

例えば、2004年に道営競馬(ホッカイドウ競馬)に所属しながらもクラシックレースを賑わせた地方馬のコスモバルクは部門の最強馬にはなりませんでしたがその年のJRA特別賞を受賞しました。

また、2024年の最優秀マイラー部門では同年安田記念を制した香港のロマンチックウォリアーに66票が入ってマイル部門で2位となっています。

182票を獲得したソウルラッシュには敗れましたがそれでも多くの選考者がロマンチックウォリアーを指示したのはそれだけ安田記念の内容が濃かったからといえるでしょう。

250人以上いる記者の投票を集計したうえで、各部門の最強馬が発表されたらそれぞれの記者が選ばれた最強馬の中から1頭だけ年度代表馬にふさわしい馬を決めて、票数の多かった馬が年度代表馬に選ばれます。

票数が1/3に満たない場合と同一投票の場合は審議で決める

2000年以降のJRA賞選考の際、票数が1/3に満たない場合やもしくは票数が同じ立った場合は「審査委員会」の審議で最強馬を選定します。

例えば、250票のうち1位の馬の票数が1/3以下の場合や2頭の馬がそれぞれ125票を獲得した場合は審査委員会の出番となります。

ただし、2000年以降は1/3以下になったことや1位の票数が同じになったことはなく、審議にもつれたことはありません。

年度代表馬を決める10の部門とは

年度代表馬を決めるには10の部門から最強馬を選定し、その中から投票で決まります。

前章でも少し触れましたが、10の部門は下記の通りです。

  • 最優秀2歳牡馬
  • 最優秀2歳牝馬
  • 最優秀3歳牡馬
  • 最優秀3歳牝馬
  • 最優秀4歳以上牡馬
  • 最優秀4歳以上牝馬
  • 最優秀スプリンター
  • 最優秀マイラー
  • 最優秀ダートホース
  • 最優秀障害馬

ここからは、各部門の詳細を解説します。

最優秀2歳牡馬

最優秀2歳牡馬とはその年もっとも活躍した2歳牡馬のことです。

2歳馬は早くても6月にデビューするため、6月から12月の半年間の活躍の中から最強馬を決めますが、選出される馬の多くが12月に開催される朝日杯FSもしくはホープフルステークスの勝ち馬から選択されるケースがほとんどです。

それだけではなく、戦績がきれいな馬、具体的には無敗であるほど選出されやすいです。

最優秀2歳牝馬

最優秀歳牝馬はその年もっとも活躍した2歳牝馬のことです。

最優秀2歳牡馬と同じく牝馬も活躍期間が6月から12月の半年しかなく、そのほとんどが12月に開催される阪神JFの勝ち馬です。

阪神JFの勝ち馬=最優秀2歳牝馬と思ってもらっても良いでしょう。

最優秀3歳牡馬

最優秀3歳牡馬はその年もっとも活躍した3歳牡馬のことです。

基本的にはクラシック三冠(皐月賞・日本ダービー・菊花賞)を制している馬が選出されやすく、選出されるにはクラシックレースの勝利が欲しいです。

ただし、1998年のエルコンドルパサーや2002年のシンボリクリスエスのようにクラシックの勝利はなくても同年天皇賞(秋)やジャパンカップ、有馬記念で古馬相手に勝ち切った馬は選出された例もありました。

ちなみに、シンザン以降のクラシックレースをすべて勝利した三冠馬はこれまで全頭選出されています。

最優秀3歳牝馬

最優秀3歳牝馬はその年もっとも活躍した3歳牝馬のことです。

牝馬三冠競走(桜花賞・オークス・秋華賞)を勝利しているほど選出される可能性は高くなり、最優秀4歳牝馬から最優秀3歳牝馬に名称変更した2001年以降、牝馬三冠レースの勝利がなく選出された馬は2008年のリトルアマポーラのみでした。

牝馬三冠競走を勝利しているほど選出される可能性が高くなりやすいです。

最優秀4歳以上牡馬

最優秀4歳以上牡馬はその年もっとも活躍した4歳以上の牡馬のことです。

4歳以上の牡馬であれば短距離馬でもマイラーでもダートホースでも対象になりますが、この3種類はそれぞれ部門があるため実質的には中距離馬と長距離馬が選出されやすい部門です。

同年のG1を勝利している馬ほど選出される可能性は高くなります。

最優秀4歳以上牝馬

最優秀4歳以上牝馬はその年もっとも活躍した4歳以上の牡馬のことです。

これも最優秀4歳以上牡馬同様、中距離馬と長距離馬が選出されやすいですが、過去には短距離馬のビリーヴやカレンチャン、マイラーのノースフライトやソングラインが選出されたケースもあるので最優秀4歳以上牡馬ほど中・長距離に投票が集中せず、幅広い距離から選択される傾向があります。

最優秀スプリンター

最優秀スプリンターはその年もっとも活躍したスプリンターのことです。

もともとは「最優秀短距離馬」という部門でしたがスプリンターとマイラーが混在するため2023年から分けられました。

2025年時点で受賞した馬はママコチャとルガルのみでどちらもスプリンターズステークスの勝ち馬です。

ちなみに「最優秀短距離馬」時代に受賞した代表的なスプリンターはスプリンターズステークスを連覇したサクラバクシンオーや日本馬初となる香港スプリントを制したロードカナロアがいます。

ロードカナロアは2013年に短距離馬としては史上初となる年度代表馬にも選出されました。

最優秀マイラー

最優秀マイラーはその年もっとも活躍したマイラーのことです。

もともとは「最優秀短距離馬」という部門でしたがスプリンターとマイラーが混在するため2023年から分けられました。

2025年時点で受賞した馬はソングラインとソウルラッシュです。

ちなみに「最優秀短距離馬」時代に受賞した代表的なマイラーにはジャック・ル・マロワ賞を制したタイキシャトルや古馬になって覚醒したモーリスがいます。どちらも年度代表馬に選ばれました。

最優秀ダートホース

最優秀ダートホースはその年もっとも活躍したダートホースのことです。

ダートで活躍した馬のみ選択しますが、その範囲は短距離からマイル・中距離まで幅広いです。

ただし、短距離ダートでG1級のレースは地方交流重賞のJBCスプリントから2024年に昇格したさきたま杯しかありません。

対してマイルや中距離のG1級レースはたくさんあるため、全体的にはマイラーや中距離馬が選出される傾向が強いです。

最優秀障害馬

最優秀障害馬はその年もっとも活躍した障害馬のことです。

2000年以降の選出馬は必ず障害J・G1である中山グランドジャンプか中山大障害のどちらかを勝利していました。

最優秀障害馬に選ばれるにはJ・G1の勝利が必須といえるでしょう。

言い方を変えれば同年の中山グランドジャンプと中山大障害を勝利すればよっぽどのことがない限り選出されます。

年度代表馬のまとめ

今回は年度代表馬についてまとめました。

年度代表馬の選考会は毎年1月上旬に開催され、前年の競馬を振り返る意味でも面白い行事です。

今年はどの馬が年度代表馬に選ばれるか、今から楽しみです。

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