競馬場の芝コースは開催を重ねるごとに内側が荒れるため、内ラチ(柵)を外へ移動する「コース替わり」が行われます。
たとえば東京芝2,000mなら週ごとにA→B→C→Dと最長で9m外へ移設され、1周距離が約56m伸びる仕組みです。
このわずかな移動で内外の有利不利、出走頭数、脚質傾向まで変化し、馬券戦略に直結する重要ファクターとなります。
本記事では各コースの定義と簡単な確認方法、替わるタイミング、距離差が生むバイアス、実戦で使える攻略法を徹底解説します。
読み終えた頃には「開幕週は内枠」「Cコースなら外差し有利」といった勘所をすぐ予想に落とし込めるはずです。ぜひ参考にしてみてください。
競馬のA・B・C・Dコースとは?理由も解説

A・B・C・Dというアルファベットは、内ラチを外へ移動させた段階を表します。
段階ごとの幅と距離差を知れば、バイアス読みに説得力が生まれます。
ここでは名称の意味と仕組みを押さえ、どうして複数のアルファベットのコースがあるのか、その理由について解説します。
内ラチの柵をずらすこと
「コース替わり」とは、コース内側の白いラチをコース外側へ平行移動させ、使用していない芝を露出させる作業を指します。
移動幅は競馬場ごとに異なりますが、多くは3m刻みです。
Aコース=基準位置、Bコース=+3m、Cコース=+6m、Dコース=+9mのように設定され、各開催の合間に夜間作業で行われます。
見た目は小さな変化でも、馬たちには“新品の芝カーペット”が敷かれるほどの劇的な環境変化となります。
内ラチの柵を外側へずらす理由
最大の目的は芝の保護とレースの公平性です。
開催中は1日に数十トンの蹄圧が同じラインにかかり、直線内側は特に荒れやすい状態になります。
そこへ雨が加わると“溝”ができ、内枠が極端に不利になるケースも珍しくありません。そこで、ラチを外へずらせば未使用の芝面が出現し、見た目だけでなく路面硬度・クッション値もほぼ新品同様にリセット可能となります。
さらにスタンド前の観客から見てラチが内へ寄るため、臨場感が損なわれない点も興行上のメリットです。
芝養生を最小限の手間で実現できる「移動柵」は、日本ならではの混雑開催を支える舞台裏の技術といえます。
柵を動かすことでコースの全長も変わる
ラチを外へ出せばコーナー半径が大きくなるため、1周距離は自動的に延びます。
東京芝2,000mの場合、Aコース基準で1周2,083.1m、Dコースでは+57.0mの2,139.6m(公表値)となり、同距離戦でも実質の走破距離が変わる点は見落とせません。
また、カーブが緩くなるぶんコーナリング速度が上がり、逃げ・先行馬が息を入れやすい一方、直線での加速がスムーズになり差し馬にもチャンスが生まれるなど、戦法に複雑な影響を与えます。
「同じ2,000mでもDコースは時計が速い」など、データ分析の際は必ずコース区分を確認しましょう。
ちなみに、柵が移動することで全長にも変化はありますが、コースごとに発馬機の位置も変えているため、レースコース自体の距離に変化はありません。
コース替わりはいつ行われるのか

コース替わりの時期は競馬場の規模と芝状態で異なりますが、JRAではおおむね2~3週ごとに次段階へ移行するのが基本です。
まずローテーションの目安を押さえ、実際の事例を通して開催日程とのつながりを把握しましょう。
開催毎のローテーションの目安
主要4場(東京・中山・京都・阪神)は年間3~4回の開催で区切られ、それぞれが4~8週連続でレースを行います。
芝の状態が良好な開幕週はAコースでスタートし、2週目または3週目でBへ、さらに傷みが進めばC・Dへと段階的に移行します。
ローカル場の小倉や札幌は開催期間が短いぶんA→Bの2段階で終わるケースが多く、新潟や福島はA→B→Cの3段階が標準です。
このローテーションを理解しておくと、「来週からCコースに替わる=今週は内が荒れ気味」といった逆算が可能になり、先物買い的に穴馬を拾えるようになります。
過去の実施例
具体例として、2024年秋の東京開催(10月~11月)を振り返ります。
開幕週(10月5・6日)からの3週はAコース、4週目から6週目はBコースへ、そして最後の2週はCコースに切り替わりました。
3週くらいの間隔で柵を切り替えることで、馬場状態をリセットし、どの位置から競馬を行っても極力対等になるような策が講じられています。
コース替わりの確認方法

内外バイアスを読むには「今週の使用コース」を把握することが第一歩です。
ここからは使用コースの確認方法をいくつか紹介します。
JRA公式サイト
もっとも信ぴょう性が高くて確実に情報が公開されているのはJRA公式サイトです。
JRA公式サイトにおけるコースの確認方法は下記の手順でチェックできます。
- JRAの公式サイトにアクセスする
- ページ上部の【競馬メニュー】を選択
- 【今週の開催情報】内にある【馬場情報】を選択
- ページ下部に芝コースの使用コースが表記されています。
ネット情報や競馬メディア
JRAの公式サイト以外では、Xやnetkeiba.com、Yahoo!ニュースなどのネットメディアでも時折見かけることがありますが、必ずしも情報が上がっているわけではないので狙って調べることができません。
また、競馬関連の新聞やテレビ番組、ラジオでもたまに発表することがあります。
この中では競馬新聞がコース情報を取り扱っていますが、新聞は有料なので、無料でコース情報が知りたい方はJRA公式サイトを利用してみるのが一番良いです。
コース替わりがレースに与える影響

コース替わりは芝の養生策にとどまらず、レースの力学そのものを塗り替えます。
馬場が新品になるだけでなくカーブ半径や直線までの残り距離も変化するため、同じ2,000m戦でも求められる適性は別物になります。
ここでは内外バイアスと枠順・脚質・頭数の変化を具体例とともにまとめました。
内外バイアスの変化
開幕初週やコースが変化した週の馬場は内ラチ沿いが硬くフラットなので逃げ・先行が粘り込みやすく、いわゆる「内・前」有利になります。
ところが開催を重ねて内が荒れると、外側に露出した新品芝が伸びるぶん、外差しが目立つようになります。
開催後期になるにつれ、内が痛んで伸びづらくなることから、相対的に外に持ち出したほうがスピードに乗って好走できるケースはよく見られます。
開催時期に応じて位置取りも重要になるというわけです。
それ以外にも、雨量や風向きでバイアスが逆転するケースもあるため、当日のレースを早めにチェックし、リアルタイムで傾向をつかみましょう。
枠や脚質、頭数への影響
ラチが外へ膨らむとカーブが緩くなり、外枠馬がスムーズにポジションを取りやすくなります。
その結果、Aコースでは内枠優勢だったレースが、Cコースでは中~外枠の複勝率が改善するといった逆転が起きる場合があるのです。
また、ラチ移動でコース幅が狭くなると最大出走頭数が1~4頭減る場合もあります。
例えば、天皇賞(秋)の舞台として有名な東京芝2,000mはA~Cコース使用時はフルゲート18頭立てですが、Dコース使用時は16頭になります。
また、コースは馬が狭くなると、各馬の距離も近くなるため、ペースが遅くなりやすい環境が生まれやすいです。ペースダウンは先行馬に恩恵を与え、差し馬には不利が生じやすいでしょう。
脚質成績を集計する際は「開催週」と「コース区分」を必ずセットで確認し、単純な回収率比較を避けるようにしてください。
競馬場別コースタイプ早見表

中央競馬は全国に10会場ありますが、それぞれ複数のコースが設けられています。
しかし、会場ごとに2~4つのコースがあります。詳細は下記の通りとなります。
競馬場 | コース |
---|---|
札幌競馬場 | A・B・C |
函館競馬場 | A・B・C |
福島競馬場 | A・B・C |
新潟競馬場 | A・B |
中山競馬場 | A・B・C |
東京競馬場 | A・B・C・D |
中京競馬場 | A・B |
京都競馬場 | A・B・C・D |
阪神競馬場 | A・B |
小倉競馬場 | A・B・C |
コース替わりを味方にする3つの攻略ポイント

コース替わりを知識として持つだけでは回収率は伸びません。
開幕週のフレッシュな芝、荒れが進む中盤、ラチを移して“リセット”した直後──この3段階を攻略フックに変換し、枠順や脚質をどう取捨選択するかが大切です。
ここからは開催時期の馬場とコース替わりを活かした馬券の攻略ポイントを3つ紹介します。
開幕週は内枠有利
開幕週のAコースは芝が短く硬く、内ラチ沿いが新品です。
そのため、ロスが小さい内ラチ沿いで競馬できるかが大切です。
その中でも内枠からハナを切れる馬は外を回る差し馬より2〜3馬身分のアドバンテージを得やすく、コーナーで外へ膨れる心配が少ないため、騎手も内を意識してペースを支配します。
開幕週で狙いたい馬は「内枠+前に行ける馬」です。差し勢は展開が崩れた場合の押さえに留め、点数を絞ると資金効率を高めやすいでしょう。
馬場が痛むと外からの差しが決まりやすくなる
開催が進むと内側の馬場は痛み出し、芝がクッションを失います。そのため、使用頻度の少ない外芝に“グリーンベルト”が生まれ、外からの差しや追い込みの台頭が顕著になります。
開催後期になると、外から仕掛けたほうがスピードに乗ることができるため、多少ロスがあったとしても各騎手は外からスピードを伸ばそうとします。
特に、外枠で壁を作らず、自ら脚を溜める騎手や、馬群を割れる大型馬は意外と台頭しやすいため、該当する馬は穴馬でも抑えておくと面白いでしょう。
コース替わり直後は内枠が狙い目
コースが替わった週は、移設したばかりの内側2〜3 mが新品芝です。
前週まで外差し傾向だったレースが一転して内伸びに戻る現象は“リセット馬場”と呼ばれます。
替わり目は騎手も手探りで進路を探すため、枠順と脚質の情報優位が働きやすいです。
コースが替わった直後は「内枠+前へ行ける馬」が有利になりやすいため、コース替わりのスケジュールをチェックしながら予想を行うのが良いでしょう。
コース替わりのまとめ

コース替わりは芝養生のための施策に留まらず、レース結果を左右する隠れハンデです。
開幕週やコース替わり直後は状態のいい最内距離が内枠・逃げ先行を後押ししますが、同じコースをしばらく使うと、内馬場が荒れるため、外差しが浮上します。
開催ローテや馬場状態を読み解き、傾向が切り替わる“境目”で好走する馬を見つけることができれば、回収率向上につながることでしょう。
当記事を参考に、馬券予想に取り組んでみてください。