近年、地球温暖化の影響で猛暑日が多くなり、数々の暑熱対策が打たれてきましたが、それは、競馬の世界でも同じです。
たとえば、シャワーの設置やパドック周回中のミスト噴射など、競走馬の暑さを少しでも和らげる対策が施行されました。
しかし、それだけでは暑さを凌げない、このままだと競走馬に悪影響が出ると判断したJRAは、2024年の夏競馬から暑熱対策の取り組みについて新たに発表しました。
そこで今回は、JRAが発表した中でもっとも大きな変更点となる開催時刻の変更、薄暮競走について紹介したいと思います。
JRAは、夏競馬で何を変えたのか。また、大きく変わる点は、どういった部分なのかを中心にお伝えしていきますので、ぜひ最後までご一読ください。
JRA(中央競馬)の薄暮競走とは?

まず、2024年の夏競馬の開催時期について、例年と大きく変わる部分は暑熱対策です。
冒頭にも触れましたが、近年では、夏の暑さが激しさを増しており、それにより、競走馬の熱中症にかかるリスクが高まっています。
そのため、JRAは、シャワーの設置やパドックでのミストなど様々な対策を行ってきました。
しかし、それだけでの対策では、どうにもならないということで対策の1つとして、開催する会場の減少を決定します。
それは、例年だと札幌競馬場と新潟競馬場、小倉競馬場の3場開催のところ、2024年7月末から8月上旬の開催につきましては、札幌競馬場と新潟競馬場の2場開催となることです。
また、夏の新潟と中京開催については、特に気温が高い昼の時間帯に開催を一時休止し、夕暮れ時に再開する新たな取り組みも発表し、これが薄暮競走となります。
その詳細は、まず第1レースが通常よりも少し早めにスタートし、それから第5レースを11時台に終えると、15時台までの約4時間が休止時間となります。
そして、休止時間を終えたあとに準メイン競走として、第6レースを行い、メインレースが第7レースに変更。
さらに第7レースが終了した後は、最終の第12レースまで行われ、その日の開催終了時刻が18時台となります。
これまで、16時半頃が最終レースだったことを考えると2時間ほど競馬開催時間が伸びることになりますよね。
なお、この施行により大きく発走時間が変わるため、馬券の買い間違いには注意が必要となりそうです。
また、他にも暑熱対策としては、装鞍所の集合時刻が変更になり、新潟開催では全てのレースにおいて装鞍所の集合時刻が、これまでの発走50分前から40分前となりました。
そのため、馬体重の発表時刻も遅れることになります。
合わせて、パドック周回時間も短くなりますので、パドックを最重要ファクターにしている方にとっては、馬体や歩様のチェックする時間が限られますので、さらに注意が必要ですね。
このように、JRAでは2024年度を暑熱対策として、昼間の休止時間を4日間開催のみに設け、レース時間を大幅に変更した薄暮競走の施行を試みることになりました。
ただ、2024年度は新潟競馬場のみということですが、今回の施行で熱中症にかかる競走が減少し、また、馬券の売上も大きく変動がなかったことから、2025年以降は中京競馬場も含めて同様に薄暮競走を行うことが決まりました。
そして、今回の薄暮競走によって、レース傾向などに変化が見られることも考えられます。
それは、稀にメインレースや最終レースで騎手が「西陽が馬の目に入り込んで能力が発揮できなかった」とのコメントを目にすることです。
そう考えると、西陽が差して能力を発揮できなかった競走馬は、18時25分まで開催するとなると、このような事象が多く発生することも懸念材料の1つとなりそうです。
今後、薄暮競走を拡大することでどのような結果になるのかも注目したいですね。
一部競馬場の変更もある
前述の通り、薄暮競走を始めとする暑熱対策の関係で従来の夏競馬の開催が大きく変更しています。
これまでの夏競馬は基本的に下記の通り実施されていました。
夏競馬の前半=福島・中京・函館
夏競馬の後半=新潟・小倉・札幌
ところが、2025年に大幅に番組変更されたことで、前半の小倉と後半の中京が入れ替わっています。
これに伴い、北九州記念やCBC賞、小倉記念に中京記念が従来よりも開催時期が変わっている点は覚えておきたいです。
こうした部分を考えると、これまでの過去のデータが通用しない場面が多くみられるかも知れませんので、その点も留意しておきたいです。
馬は夜でも目が見えるの?
ここまで薄暮競走を始めとするJRAの暑熱対策ついて紹介してきましたが、そもそも競走馬は、夜半になるに連れ、走りにくいのではないかとの疑問を持った方もいるのではないでしょうか。
確かに馬は、夜行性ではなく昼行性なので、基本的には人間と同じく夜は休みます。
しかし、馬には野生だった頃、夜でも肉食動物に襲われることがあったため、その名残でショートスリーパーだったり、暗い夜でも物を見る能力が備わっています。
そんな夜も見える目とは、どんな目をしているのでしょうか。これは猫などと同じで夜になると目が光る仕組みになっています。
詳細は、専門分野になりますので省略しますが、簡単にいいますと、馬の目の網膜の後ろ側には、輝板というものが存在し、その輝板があることで光の刺激を受けて、暗い夜でも物が見えるそうです。
そう考えると、地方競馬でナイター開催が行われている時点で、競走馬にとって見えないことはないですよね。
馬の『夜目』とは?
最後に豆知識として、一般的な意味とは少し違った馬の夜目について紹介します。
競馬ファンの皆さんは、馬の夜目ってご存知でしょうか?
もちろん、夜の目と書きますので、目に関係すると思われる方もいると思いますが、実は、馬の夜目とは、馬の前肢の腕節、後肢の飛節の内側にあるグレー色の角質のことをいいます。
画像の赤丸部分が、馬の夜目と呼ばれる部分です。
ただ、この夜目という部位は、目とは掛け離れた全く関係ない位置にありますが、なぜこのような名前が付けられたのでしょうか。
これは、昔話になりますが、人間は夜になると真っ暗な中では見えないのに、馬が夜でも見えるのは、目の他にもどこかで見るところがあるはず。脚に何か変なものが付いている。きっと、これがあるから馬は夜でも目が見えるのだ。との言い伝えから、脚にあるグレー色のものが夜でも見える目だと思われ「夜目」と呼ばれるようになったそうですが、当然この夜目は、視覚を持つものではありません。
また、馬は元々5本指でしたが、進化する過程で中指のみで身体を支えるようになりました。
そして、この夜目は親指が退化したものではないか、もともと脚の裏に付いていた肉球の跡ではないかとの諸説があります。しかし、夜目は、何かの役割を持っているものではありません。
ただ、その形態や表面の紋様、大きさなどが、人の指紋のように馬ごとに違いますので、個体鑑別に用いている国もあるようです。
ちなみに、この夜目は角質なのでたまにポロッと取れてしまうこともありますが、取れても大きな問題はありませんので安心ですね。
薄暮競走のまとめ

今回は、JRAの薄暮競走の開催を中心に夏競馬の変更点について紹介しました。
また、馬の夜目といった豆知識も紹介しましたので、友人知人との競馬談義の中で箸休め程度に使ってみてはいかがでしょうか。
なお、前述しました通り、2024年の夏競馬はJRAにとっても、また競馬ファンにとってもどのような結果が待っているのか分かりません。
ただ、酷暑の中を走る競走馬にとって、この施行が少しでも負担を和らげることにつながるのであれば、今後も継続してほしいと思いますね。