エフフォーリアの引退から1年、現役時代の活躍を振り返ります

様々な意味で衝撃の一戦となった2023年の京都記念からまもなく1年経とうとしています。

2023年の京都記念は2頭のクラシックホースが出走しました。

1頭は前年のダービー馬、ドウデュースです。

前年のダービーを最後、しばらく勝ち星から遠ざかっていましたが、この京都記念で他馬を圧倒するパフォーマンスで優勝。

およそ8か月半ぶりの勝利に多くの人がダービー馬の復活を実感したのでした。

そして、もう一頭は一昨年の皐月賞馬であるエフフォーリアです。

エフフォーリアは3歳時に皐月賞だけではなく、天皇賞(秋)や有馬記念を勝利してその年の年度代表馬に選出されました。

ところが、古馬になってからは過去の活躍が嘘のように惨敗が続きます。

この京都記念は復活をかけた一戦でしたが、レース中に心房細動を発症し、ゴールすることなくレースを終えました。

そして、結果的にはこれがラストランとなったのです。

競馬には輝かしい栄光もあれば、志半ばでターフを去る馬も少なくありません。

ドウデュースが前者、そして、エフフォーリアは後者に区分できるでしょう。

復活と無念が交錯した2023年の京都記念から早1年。

当記事では無念の引退となったエフフォーリアにスポットを当て、競馬界における活躍を振り返ります。

目次

エフフォーリアの概要

生年月日2018年3月10日
性別
エピファネイア
ケイティ―ズハート
母父ハーツクライ
生産牧場ノーザンファーム
戦績11戦6勝
主な勝ち鞍2021年皐月賞(G1)
2021年天皇賞(秋)(G1)
2021年有馬記念(G1)
2021年共同通信杯(G3)

エフフォーリアの血統

父エピファネイアは現役時代に皐月賞とダービーで2着入りし、菊花賞で念願のG1タイトル制覇を成し遂げました。

また、4歳の時は例年以上に豪華メンバが―揃ったジャパンカップで2着馬に4馬身差の圧勝しています。

このジャパンカップの勝ちっぷりが高く評価され、種牡馬としても注目されました。

エピファネイアの兄弟にはG1馬のサートゥルナーリアやリオンディーズがおり、エフフォーリアからしたらこの2頭は叔父になります。

エピファネイアの母であるシーザリオは現役時代に日米オークスを制し、桜花賞でも2着に入線しましたが繋靱帯炎のため、若くして引退しています。

しかし、種牡馬としては名馬を多数輩出し、ターフでも繁殖してからも競馬界に影響をもたらしました。

母の父ハーツクライは有馬記念でディープインパクトに先着した唯一の日本調教馬です。

母の母ケイティ―ズハートこそ2勝クラス止まりの馬でしたが、血統背景が非常に豪華でデビュー前から注目されていました。

エフフォーリア 3歳の戦績

エフフォーリアの全盛期といったら誰もが3歳のころを指すでしょう。

どのような活躍を見せたのか、3歳のエフフォーリアの活躍を振り返ります。

無敗の4連勝で最初の一冠を手にした

エフフォーリアのデビューは2歳の春、夏の札幌でした。

札幌の新馬戦を単勝オッズ1.4倍の圧倒的1番人気で勝利し、続く百日草特別も制し、この年はこれで終わります。

3歳の始動戦は皐月賞の有力ステップレースである共同通信杯でした。

この共同通信杯では前年の朝日杯FSを制したステラヴェローチェや良血馬のシャフリヤールに隠れて4番人気でした。

しかしながら、1,000m通過61秒9という超スロー展開のなかで先行しつつ、早めに抜け出してじりじりと加速し、残り200mでは完全に他馬を出し抜いて見事優勝します。

この1戦が評価されて、続く皐月賞では1番人気に支持されました。

皐月賞では先に抜け出したワールドリバイバルやタイトルホルダーの番手でじっと我慢します。

最後の直線ではすでに前目を確保し、そこから仕掛けて他馬を置き去りに、鮮やかに優勝したのでした。

この皐月賞はラスト5F11秒4でペースアップしつつ、残り3Fは1Fあたり12秒台と消耗戦に近い競馬でしたがエフフォーリアは全く涼しい顔で鮮やかに勝利したのです。

鞍上の横山武史騎手にとってもうれしいG1初制覇でした。

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ハナ差で敗れた日本ダービー

皐月賞馬エフフォーリアが次に向かったのは当然ながら、日本ダービーです。

日本ダービーといえば、父エピファネイアも参戦した舞台で、その時は大外一気を決めたキズナに差されて2着に敗れました。

エフフォーリアは無敗で皐月賞を制したパフォーマンスから、単勝1.7倍の断然1番人気に支持されます。

そして、その他の馬は混戦模様となっており、牝馬ながらダービーに参戦したサトノレイナスが2番人気に支持されていました。

ここでもエフフォーリアは幸先よくゲートを飛び出し、3番手の位置で競馬します。

ところが向こう正面で5F11秒7-4F11秒4とペースが上がります。

各馬が動き始めていましたが、エフフォーリアは無理についていくことなく折り合いに専念します。

そのため、3~4コーナーは9番手くらいの位置で通過し、そして、最後の直線では空いた位置から一気に動きました。

残り200mの時点で先頭に立ち、無敗の二冠馬達成かと思われましたが、後方から抜群の手ごたえで追ってきたのが共同通信杯で下したシャフリヤールです。

最後の最後はほぼ同時のゴールとなりましたが、結果は―――。

ハナ差でシャフリヤールの勝利でした。

シャフリヤールの鞍上福永祐一騎手が若手の横山武史騎手に対し、かんたんにはダービーを獲らせないぞというように―――気迫のこもった追込で勝利を手にしたのです。

思えば、シャフリヤールの兄であるアルアインも皐月賞を手にしながら、ダービーでは5着に敗れました。

シャフリヤールとエフフォーリア。

どちらも近親の思いを抱きながら挑んだのであれば、熱い気持ちになります。

閑話休題。

横山武史騎手にとっても、エフフォーリアにとっても悔しい2着となりましたが、まだまだ競馬は終わりません。

ここからさらに躍動するのでした。

無敗の三冠馬を撃破した天皇賞(秋)

夏は放牧に出され、秋緒戦に陣営が選択したのは天皇賞(秋)でした。

最後の一冠菊花賞ではなく、あえて古馬混合の天皇賞(秋)を選択する限り、陣営の自信がひしひしと伝わります。

この年の天皇賞(秋)で注目されたのはコントレイルでした。

記憶に新しい馬なのでいうまでもありませんが、コントレイルは前年のクラシックを無敗で勝利し、父ディープインパクト以来となる史上3頭目の無敗の三冠馬に輝いています。

古馬になってからも活躍に期待されましたが、緒戦となった大阪杯は直前の大雨のために重馬場となり、その影響もあって3着に敗れます。

そして、予定していた宝塚記念は回避したため、この天皇賞(秋)がこの年2戦目のレースでした。

無敗の三冠馬としてもなんとかビッグタイトルを掴みたいところでしたが、立ちはだかったのがエフフォーリアだったのです。

もう一頭もグランアレグリアも牝馬ながらすでにG1タイトルを5勝しており、3頭そろって3強といわれていましたが、正直なところコントレイルの復活に望みを託したファンは多かったと思います。

しかし、それを阻止したのはエフフォーリアでした。

この天皇賞(秋)は逃げたカイザーミノルが1,000mを60秒5とまずまずのペースで通過しましたが、残り4Fから一気にペースが引きあがり、4F11秒8-3F11秒1-2F11秒1-1F11秒4と、ロングスプリント的な競馬となっています。

そのなかで、エフフォーリアは前がいない外目から楽に抜け出し、先で競馬していたグランアレグリアを捕え、そして後ろから追うコントレイルの追撃も退けて見事優勝したのでした。

立ち回りも完璧でしたし、早仕掛けにも問題なく対応した上、無敗の三冠馬に土を付けたエフフォーリアはこの時点で世代最強馬に成ったのかもしれません。

余談ですが3強のその後を見てみると、コントレイルは次走ジャパンカップを勝利し、グランアレグリアはマイルチャンピオンシップを勝ち切っています。

そして、エフフォーリアは有馬記念を完勝したことで3強は実力の高さを証明しました。

有馬を勝利、年度代表馬へ

天皇賞(秋)を制したエフフォーリアが次に選択したのはグランプリレース、有馬記念です。

この年の有馬記念は、グランプリ3連破を成し遂げたクロノジェネシスや菊花賞馬タイトルホルダー、すべてのクラシックで善戦しているステラヴェローチェに天皇賞(春)で2着のディープボンドなど、天皇賞(秋)とはまた違った強敵が揃いました。

しかし、天皇賞(秋)の勝ちっぷりが評価されたエフフォーリアは単勝オッズ2.1倍の1番任意に支持されます。

そして、ここでもエフフォーリアは弾けました。

道中、序盤は中団くらいの位置で競馬しましたが、向こう正面下り坂あたりから徐々に動き出し、3~4コーナーでは徐々に前をつけ、直線入りの時点で5番手くらいの位置まできました。

そして、最後の直線で一気に加速し、残り200mの標識あたりでタイトルホルダーをかわし、内で粘るディープボンドも捕らえ、そして後ろから詰め寄るクロノジェネシスやステラヴェローチェを一切寄せ付けずに優勝したのでした。

秋はたったの2戦でしたがどちらも素晴らしいパフォーマンスで勝ち切ったエフフォーリアはその年の年度代表馬に選出されたのです。

エフフォーリア 古馬の戦績

エフフォーリアの台頭は同時に一つの時代の終わりを告げました。

2021年、エフフォーリアが年度代表馬に選出された年に、コントレイルやグランアレグリア、クロノジェネシスといった名馬たちが続々と引退しています。

有力馬の引退とともに、今後の競馬界はエフフォーリアが中心となる―――。

誰もが思っていただけに、まさかこのあと勝ち星を掴むことなく引退するなんて、想像もつきませんでした。

凋落の4歳

3歳時は素晴らしいパフォーマンスで勝利を重ねたエフフォーリア。

陣営が選択したのがG1の大阪杯です。

芝2,000mの中距離コースながら内回りの阪神が舞台で持久性が試される舞台となっており、エフフォーリアの能力に合うはずでした。

単勝オッズ1.5倍に支持されましたが、3コーナー辺りからこれまでの活きっぷりが鳴りを潜め、なんと9着に敗れてしまいます。

全く手ごたえのない走りに場内茫然でした。

そして、続く宝塚記念でも1番人気に支持されましたが直線での勢いがなく、6着に完敗だったのです。

秋は慎重に、そして万全に調整を重ねて有馬記念に一球入魂しました。

近2戦の敗北から、これまででもっとも低い5番人気でした。

しかし、道中は5番手くらいの位置で折り合いに専念しながら2週目の3コーナーで好位を付けます。

最後の直線では前が空いており、ここから一気に仕掛けましたが、ここでも昨年ほどの手ごたえはありませんでした。

結果は5着。

大阪杯や宝塚記念よりは見せ場がありましたが、復活することなくこの年は幕を閉じたのです。

ゴールを駆けることなく引退した5歳

4歳時は散々で、かつての勢いが失われつつありました。

しかし、陣営は諦めません。

再起をかけて挑んだのはG2の京都記念でした。

この年の京都記念は前年のダービー馬であるドウデュースが参戦するということで一気に注目が集まりました。

エフフォーリアも皐月賞馬ということで2番人気に支持されています。

前年のクラシックホースか、その前の年のクラシックホースか。

どちらもいろんな意味で復活をかけた一戦でしたが、結果はドウデュースの圧勝でした。

ドウデュースは向こう正面から早めに動いて、残り3Fを鮮やかに駆け抜け復活の勝利を成し遂げたのです。

そして、エフフォーリアは―――。

レース中に心房細動を発症し、競走中止となりました。

心房細動
心臓に異常な電気信号が起こり、信望が規則正しいリズムを失う不整脈の一種
レース中に発症すると血液が全身に送れなくなり、失速する

レースを途中で中止したエフフォーリア。

陣営は協議の末、将来的な血統価値を考慮し、このレースを最後、引退発表したのです。

エフフォーリアの強さ3戦

3歳時は圧巻のパフォーマンスでコントレイルやグランアレグリア、クロノジェネシスやタイトルホルダーに勝ち切ったエフフォーリア。

その強さの源は何なのでしょうか?

過去の戦績から、エフフォーリアの強みを探ってみました。

ロングスプリント能力が高い

エフフォーリアの強みの一つは、長く脚を活かせることです。

例えば、エフフォーリアが制した皐月賞はラスト5F目が最速11秒4に対し、4F11秒9-3Fから1Fは12秒を推移しています。

中間でペースアップし、そこから有酸素的な競馬となりました。

前を行ったタイトルホルダーはのちに無尽蔵に近いスタミナを活かした競馬でG1タイトルを3つ手にする名馬となりますが、そのタイトルホルダーをあっさり交わして勝ち切っています。

ifの話になりますが、もしもエフフォーリアが菊花賞に出走していても上位争いは十分可能だったと思いますし、スタミナを活かしてトップスピードを維持できる力が強みといえるでしょう。

加速力が高い

エフフォーリアの強みに加速力の高さも挙げられます。

惜しくも2着に敗れたダービーが4F11秒8から3F11秒1-2F11秒1-1F11秒4と早仕掛けの展開の中、もちろん中団で無理しなかったのも好走要因につながりますが、直線でじりじり脚を伸ばしながら200mで先頭に立っています。

ラップ推移を見ても瞬発的な加速力が長けています。

もちろん、先の見出しで紹介したように、持続性のある脚も使えているのでスピードに関してはトップクラスのものを持っている馬だと実感しています。

器用に動ける

エフフォーリアは現役時代に皐月賞と有馬記念を制していますが、このふたつの会場はどちらも中央競馬屈指の癖が強い中山が舞台でした。

その中で皐月賞では好位を追走しながら長く脚を活かして直線でも脚色衰えずに勝利しています。

また、有馬記念では2週目の3~4コーナーで馬群の外目から進出しながら勝利しています。

内で粘ったディープボンドとの差は3/4馬身ですが、ディープボンドが馬場の内目に対してエフフォーリアは外目から動いていたので着差以上に強い競馬でした。

総合力の高い馬で競馬センスがピカ一な馬だと今なお思います。

エフフォーリアが競馬界に残した2つの影響

2021年の年度代表馬であるエフフォーリアは競馬界に大きな影響力を残しました。

これら2つの要素について解説します。

エピファネイア産駒の種牡馬価値を高めた

最初に取り上げたいのは父エピファネイアの種牡馬価値を高めたことです。

もともと初年度産駒のデアリングタクトが史上初となる無敗の三冠牝馬になったことですでに価値が上がっていましたが、2年目産駒のエフフォーリアが活躍したことでさらに評価されました。

種付け料の推移を見ても、2019年までが250万円だったのに対し、2020年は500万、2021年は1,000万、そして2022年には1,800万円まで値上がりしました。

デアリングタクトが三冠牝馬を成し遂げた年が2020年で、エフフォーリアの活躍が2021年なので、この2頭がエピファネイアの価値を高めた立会人となっています。

ただし、デアリングタクトもエフフォーリアも古馬になってからこれまでの活躍を見せることなく引退したため、早熟説も囁かれています。

横山武史を男にした

もうひとつ、エフフォーリアの活躍で躍進したのが横山武史騎手です。

横山武史騎手は前年の函館リーディングを成し遂げており、この時点ですでに若手騎手の上位的存在でしたが、エフフォーリアとのコンビで挑んだ数々のビッグレースはさらに大きな成長につながりました。

2022年2月。

エフフォーリアが引退し、美浦トレセンを退厩する際、横山武史騎手は「いろんな経験をさせてもらった。エフフォーリアがくれた経験を糧にして、僕自身成長していきたい」とコメントされています。

2024年現在も横山武史騎手は第一線で活躍していますが、その背景にはエフフォーリアの存在があったのです。

まとめ

エフフォーリアの最後のレースとなった京都記念から早1年。

昨年はイクイノックスやドウデュースといった後輩馬が大車輪の活躍を見せたため、話題はこれらの馬に持っていかれたと思います。

しかしながら、エフフォーリアもかつては競馬界の中心にいました。

古馬になってからは苦しい日々が続きましたが、現在は種牡馬入りを果たしいます。

父エフフォーリアの期待を背負った馬の活躍に期待したいですね。

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