ドバイの地で名牝ホクトベガが星となってから26年が経ち、2023年にウシュバテソーロがドバイワールドカップ(首G1)を制覇したことは、日本競馬にとって世界の壁に近づく大きな一歩となりました。
しかし、日本の競馬界では、まだまだダートよりも芝の方が優先されています。それはG1の数をみても明らかです。
ただ、地方競馬も含めて日本のダート戦線をもっと盛り上げようと2024年から3歳世代によるダートの三冠レースが新たに創設されました。
そのため、2024年から大きく番組変更が施行され、どのレースがステップレースでどのレースを勝てば、ダート三冠達成となるのか分からない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、これまでのダート三冠レースの歴史や2024年から新設されたダート三冠レースについて解説していきたいと思います。
これまでの芝の三冠レースに加えて、ダート戦線に三冠レースができたことで、さらに競馬が楽しくなると思いますので、是非ともダート三冠レースも楽しんでください。
実は存在していた過去のダート三冠レース
前述しました通り、これまで芝では、牡馬・牝馬とも3歳世代による三冠競走が開催されていますが、そんな三冠競走をダートでも開催したいという構想はこれまでにもありました。
1996年に中央・地方全国指定交流競走としてスーパーダートダービー(南関東G1)が創設されたことで中央のユニコーンステークス(G3)と地方・盛岡競馬場で開催されていたダービーグランプリ(地方交流G1)の3つでダート三冠が構成されました。
その後もスーパーダートダービーがジャパンダートダービーにレース名称が変わり、さらにはグレード制の変更等もありましたが、2007年まではこの3つがダート三冠レースとなっていました。
ただし、芝の三冠レースと違って、グレード制がバラバラなことや中央・地方と開催場所が違うことから、この3つのレースが3歳ダート三冠だという認識は、ほとんどなく全国的にも知名度が低かったようです。
その結果、これまでダート三冠を達成した競走馬はいません。
そして、2008年にはダービーグランプリを休止したことで3歳ダート三冠レースは消滅となりました。
2024年に新設されたダート三冠レース
そうした中で2022年6月にJRA(日本中央競馬会)とNAR(地方競馬全国協会)らが共同で会見を開き、3歳ダート三冠路線を中心とした番組の整備案を発表します。
この整備案は、3歳ダート三冠競走を全て大井競馬場にて開催し、そこを基点としたレース整備を行うというものでした。
これによって、ダート三冠競走は全てのグレードを『Jpn1』に設定され、さらにこれまで南関東の重賞だった複数のレースがダートグレード競走に格上げすることとなりました。
そして、2024年から新たにダート三冠レースが創設されたのです。
ちなみに『Jpn1』とは、国際グレード格付け競走の認定は受けていませんが、JRAが単独またはNARなどの他組織とともに認定した最高格付けの競走となりますので、中央のG1と比較しても呼称が違うだけでG1レースには変わりありません。
さて、初年度となる2024年の番組構成をみてみますと、まず1冠目となる羽田盃(Jpn1)は、ダート1,800mで2024年4月24日に開催され、1着賞金は5,000万円です。また、出走枠については中央が4頭、地方が12頭となっています。
2冠目となる東京ダービー(Jpn1)はダート2,000mで同年6月5日に開催され、1着賞金は1億円。出走枠については、羽田盃と同じく中央が4頭、地方が12頭です。
3冠目となるジャパンダートクラシック(Jpn1)はダート2,000mで同年10月2日に開催となり、1着賞金は7,000万円で設定されています。また、出走枠については中央が7頭、地方が9頭と少し変更されています。
なお、賞金については、各1着賞金に加え三冠ボーナスとして8,000万円がプラスされますので、ダート三冠馬に輝くと3億円の賞金を手にすることになります。
これは、JRAよりも賞金が低い地方競馬にとっても大きな夢につながりそうです。
また、開催時期に注目すると、これまでダート三冠競走の元となっていた南関東の三冠レースは5月から7月にかけて約2ヶ月間という短期間で開催されていました。
これはアメリカの三冠競走と同じように短期間で行うアメリカ・スタイルと呼ばれるレース体系でしたが、今後は、日本やヨーロッパと同じく、春から秋にかけて行うヨーロッパ・スタイルへと変更になることが今回新たに創設されたダート三冠レースの特徴といえます。
ダート三冠レースのトライアルレースは?
次にこれら三冠競走のトライアルレースについて説明します。
まず、羽田盃のトライアル競走は4つあります。
1つ目は1月中旬に船橋競馬場のダート1,800mで開催されるブルーバードカップ(Jpn3)で1着馬に優先出走権が付与されます。
本番の羽田盃が4月下旬のレースに対するトライアル競走が1月中旬に開催と、これまでにないパターンとなっています。
なお、近年大井競馬場は船橋競馬場と同じ砂に入れ替えを行ったため、船橋競馬場で結果を出した競走馬は大井競馬場でも見過ごすことができなさそうですね。
2つ目は2月中旬に開催される雲取賞(Jpn3)です。
このレースは、大井競馬場のダート1,800mということで本番の羽田盃と同じ舞台で開催されており、上位2頭に優先出走権が与えられます。
そして、3つ目は、3月中旬に大井競馬場のダート1,700mで開催される京浜盃(Jpn2)も上位2頭に優先出走権が付与されます。
これまで京浜盃は、南関東重賞時代にも羽田盃の前哨戦として位置付けられており、ここで結果を残した競走馬が本番でも上位争いをする傾向がありました。よって、牡馬三冠レースの弥生賞(G2)をイメージすれば分かりやすいと思います。
4つ目は、南関東所属馬限定のトライアルレースとなるスターバーストカップ(準重賞)です。このレースは2月下旬に開催され、1着馬に羽田盃の優先出走権が与えられます。
まとめると以下の通りです。
- 1月中旬 ブルーバードカップ(1着馬に優先出走権)
- 2月中旬 雲取賞(上位2頭)
- 3月中旬 京浜盃(上位2頭)
- 2月下旬 スターバーストカップ(1着馬に優先出走権、ただし南関東所属馬に限る)
次に2冠目となる東京ダービーのトライアル競走としては3レースあります。
まずは、4月上旬に川崎競馬場のダート1,600mで行われるクラウンカップ(南関東S3)と5月上旬に船橋競馬場のダート1,700mで開催される東京湾カップ(南関東S2)です。この2レースとも1着馬に優先出走権が与えられます。
3つ目は、4月下旬に京都競馬場で開催されるユニコーンステークス(G3)がトライアルレースとして設定されています。
ちなみにユニコーンステークスは、これまで東京ダート1,600mで行われていましたが、2024年から東京ダービーのトライアルレースとなることで京都のダート1,900mに変更となりました。
なお、優先出走権については、2着以内に入った中央・地方所属馬のうち、上位各1頭が東京ダービーへの優先出走権を得る仕組みとなっています。
つまり中央所属馬が1着、2着だった場合、1着馬のみに優先出走権が付与されます。逆に1着、2着とも地方所属馬の場合は、中央所属馬に優先出走権は与えられません。
こちらもまとめると以下の通りです。
- 4月上旬 クラウンカップ(1着馬に優先出走権)
- 4月下旬 ユニコーンステークス(上位1頭、ただし2着以内)
- 5月上旬 東京湾カップ(1着馬に優先出走権)
そして、3冠目となるジャパンダートクラシックのトライアルレースに設定されているのは、8月上旬に新潟競馬場で開催されるダート1,800mのレパードステークス(G3)と8月中旬に大井競馬場のダート1,800mで行われる黒潮盃(南関東S2)、9月上旬に盛岡競馬場で開催されるダート2,000mの不来方賞(Jpn2)の3レースです。なお、不来方賞の出走枠は中央で5頭、地方は11頭です。
また、優先出走権は、レパードステークスと不来方賞は1着馬のみ、黒潮盃は1着と2着馬に付与されます。
まとめると以下の通りとなります。
- 8月上旬 レパードステークス(1着馬に優先出走権)
- 8月中旬 黒潮盃(2着以内の馬に優先出走権)
- 9月上旬 不来方賞(1着馬に優先出走権)
ここで注意していただきたいのは、この見出しで紹介したトライアルレースの優先出走権はすべて地方競馬所属馬のみ適応し、JRA所属馬は該当しない点です。
JRA所属馬の優先出走権に関しては次の見出しで詳細を解説します。
JRA所属馬(中央競馬所属馬)のダート三冠出走決定方法
次に中央所属馬がダート三冠レースに出走するための条件を説明します。
まず、中央所属馬が1冠目の羽田盃に出走できる条件は以下の通りとなります。
- 京浜盃、雲取賞とも上位2頭(ただし、5着以内)
- 京浜盃または雲取賞5着以内で上記以外の上位馬
さらに中央所属馬の出走枠が、最大3頭となる京浜盃の出走にも条件があります。
- 雲取賞に出走していない馬で収得賞金順(ただし、500万円超に限る)
- 雲取賞に出走した馬で収得賞金順(ただし、500万円超に限る)
- 雲取賞に出走していない馬で収得賞金順(ただし、500万円以下)
これはより多くの競走馬にチャンスを与える仕組みとなっているようです。
よって、雲取賞を勝った馬が京浜盃に出走できる可能性はとても低いと考えられますね。
また、ブルーバードカップについては、1着を取っても中央所属馬には優先出走権が付与されませんので、トライアルというよりも賞金を加算するレースになりそうです。
続いて、2冠目の東京ダービーの出走条件は以下の通りです。
- 羽田盃上位3頭(ただし、5着以内)
- ユニコーンステークス上位1頭(ただし、2着以内)
- 羽田盃5着またはユニコーンステークス2着以内で上記以外の上位馬
出走枠から考えると、羽田盃の上位3頭およびユニコーンステークスの勝ち馬が東京ダービーに向かうといえそうです。
そして、3冠目となるジャパンダートクラシックの出走条件は、レパードステークスと不来方賞の1着馬および収得賞金順となっています。
このルールによって、春に収得賞金を稼いだ中央馬は無理にトライアルレースを経由せず、ジャパンダートクラシックには出走できるのではないかと思われます。
ダート三冠のまとめ
今回は、2024年に創設されたダート三冠レースについて紹介しました。
現時点では、初の施行とあってか少々複雑で今後も施行方法が変わることが考えられます。
個人的には、地方所属馬は地方、中央所属馬は中央のトライアルレースを経由することを前提にレース番組が作られていると思いますので、各本番のレースが文字通り、3歳世代のダート頂上決戦となりそうで、さらに楽しみが尽きませんね。
そして、今回のダート三冠レースが創設されたことで中央・地方と関係なく、日本競馬全体のレベルアップにつながることに期待したいです。