一般的に競走馬と聞けば、茶色の馬体を想像する方が多いと思いますが、競走馬に限らず馬の毛色は、細かく分類すると100種類以上あるといわれています。
しかし、日本の競馬では『ジャパン・スタンドブック・インターナショナル』で認められている全8種類しか正式な毛色として認められていません。
また、毛色は馬体全体を覆う被毛と鬣や尻尾などの長毛との2つに分けられており、それらが異なる毛色を持つ競走馬も存在します。
なお、昨今では白毛馬ソダシらの誕生により、白毛と芦毛の違いが分かりやすくなりましたが、一昔前までは馬齢を重ねるたびに毛色が白くなる芦毛を白毛馬と思っていた方もいるかも知れません。
特に芦毛の競走馬が誘導馬となり馬齢を重ねると、ほとんどが白毛の馬体になります。
また、黒鹿毛や青鹿毛の違いなど、競走馬の毛色を見分けるのが難しいのではないかと思います。
そこで今回は、競走馬の全8種類の毛色についてご紹介します。
特に毛色を知ることで馬券的に影響するものではないかと思いますが、競馬ファンとして毛色を知ることも楽しみ方の1つだと思います。
合わせて各毛色の代表馬も紹介しますので、ぜひ最後までお楽しみください。
競走馬の8種類の毛色一覧
冒頭でも少し触れましたが競走馬には8種類の毛色が存在します。
茶色い毛の馬もいれば、黒い馬、白っぽい馬までさまざまで、競走馬の毛色を通して競馬を楽しむこともできますよ。
ここからは、8種類の毛色と各毛色ごとの代表馬について解説していきます。
鹿毛
※画像はnetkeibaより引用
競走馬の中でもっとも多い毛色で、競走馬の中で約半数は鹿毛だといわれています。
被毛は暗い茶褐色から明るい茶褐色まで個々によって様々です。また、長毛と四肢の下部は黒色を帯びています。
鹿毛の代表馬を挙げるとキリがないですが、中でもトウカイテイオーは、はっきりと分かる鹿毛でした。また、父のシンボリルドルフも鹿毛でしたので、皇帝から帝王への遺伝子は毛色にも伝わっていたのかも知れません。
他にも黒鹿毛っぽく見えてしまうウオッカも実は鹿毛ですし、三冠牝馬のアーモンドアイやジェンティルドンナ、アパパネにリバティアイランドなど最強といわれた牝馬には鹿毛が目立ちます。
さらにキタサンブラックは、馬名から黒鹿毛と勘違いしそうですが鹿毛なんですね。
黒鹿毛
※画像はnetkeibaより引用
基本的に被毛は黒色がかった赤褐色で程度により、かなり黒色に見える競走馬がいることも黒鹿毛の特徴です。
また眼の周辺や腋(わき)、脾腹(ひばら)、下腹や内股は褐色で、長毛と四肢の下部の色は被毛の色の濃淡にかかわらず黒色なのも特徴の1つです。
黒鹿毛の代表馬といえば、ナリタブライアンでしょうか。
漆黒の馬体に白のシャドーロールがとても似合っていましたが、元来シャドーロールは自身の影などを怖がる競走馬に付ける矯正器具です。
しかし、ナリタブライアンの場合は、馬齢を重ねて影に怯えなくなっても1つのトレードマークとして装着していたそうです。対照色の黒と白がとても似合ってましたね。
他にも世界の怪鳥と呼ばれ1999年の凱旋門賞(仏G1)で2着に入ったエルコンドルパサーやレジェンド武豊騎手にダービージョッキーの称号をプレゼントしたスペシャルウィークなど、黒鹿毛の名馬も多頭数います。
青鹿毛
※画像はnetkeibaより引用
馬体全体をみると、ほとんどが黒色に見えるのが青鹿毛の特徴ですが、眼や鼻の周辺、腋、脾腹などがわずかに褐色となっているのが黒鹿毛とは違う部分です。
よって、黒鹿毛と青鹿毛の見分け方は、なかなか難しいといわれています。
そんな青鹿毛の代表馬といえば、2001年の菊花賞(G1)マンハッタンカフェや2023年には世界一の競走馬として大活躍したイクイノックスも青鹿毛です。
また、史上初の三冠牝馬に輝いたメジロラモーヌや史上初の無敗で三冠牝馬となったデアリングタクトなどの超名牝たちも青鹿毛ですので、名馬中の名馬は青鹿毛率が高いのかも知れません。
青毛
※画像はnetkeibaより引用
青鹿毛と同じように馬体全体は黒色で被毛、長毛ともに黒色をしています。青鹿毛との違いは眼の周辺なども黒色な部分ですが、青毛となるとさらに見分け方が難しいです。
ただ、青毛は比較的希少な毛色といわれていますので、パドックなどで探してみるのも楽しみの1つではないでしょうか。
その青毛の代表馬といえば、史上初の日米オークス(G1)を制したシーザリオや、牝馬三冠レースでは、すべてジェンティルドンナの2着でしたヴィルシーナなどが挙げられます。
ちなみに繁殖牝馬としてエピファネイアやサートゥルナーリア、リオンディーズと3頭のG1馬をはじめ生涯で12頭を生んだシーザリオの産駒に青毛はいませんので、前述のとおり希少な毛色だといえそうです。
栗毛
※画像はnetkeibaより引用
栗毛は文字通り、栗色をした毛色を持つ競走馬でパドックなどで太陽の光に当たると黄金に輝くように見えてとても綺麗な馬体に映ります。
まさに”黄金の三冠馬”との異名を持ったオルフェーヴルがその代表馬といえるでしょう。その容姿から栗毛は特に人気が高いように思います。
また、被毛は黄褐色で長毛は被毛より濃い競走馬もいれば、淡く白色に近い競走馬まで様々ですし、栗毛でも長毛が白っぽく見える毛色の競走馬を尾花栗毛と呼んでいますが、分類はあくまでも栗毛です。代表的な競走馬はゴールドシチーが有名ですね。
その他にも代表馬として、1995年の年度代表馬マヤノトップガンやグランプリ3連覇の偉業を成し遂げたグラスワンダーなどが挙げられます。
栃栗毛
※画像はnetkeibaより引用
被毛が栗毛よりも少し黒味がかった黄褐色から黒色が濃い競走馬まで存在するのが、栃栗毛の特徴です。
また、長毛は栗毛と同様に被毛より濃い競走馬から白色に近い競走馬までいます。なお、栃栗毛は青毛と同じくとても希少な毛色です。
そんな栃栗毛の代表馬といえば、古くはサッカーボーイが有名でしょうか。
さらには、サクラローレルやマーベラスサンデーといった同世代で争った名馬たちが同じ栃栗毛だったことも非常に珍しいといえますね。
芦毛
※画像はnetkeibaより引用
被毛全体に白色の毛が混生されていて、若駒のころは黒味がかったグレーに近いです。
しかし、馬齢を重ねるにつれて白色の度合いが強くなり白くなっていく、いわゆる他の毛色と違って、生まれてから馬齢とともに色が変わっていくのが芦毛の大きな特徴です。
そのような毛色の特質を持つ芦毛馬は、見た目が重視され誘導馬にも選出されていますよね。特に馬齢を重ねた芦毛馬が白馬となりG1などの大レースに登場するシーンは、また違った角度から競馬を楽しむことができます。
なお、芦毛馬の代表馬といえば、オグリキャップやタマモクロス、メジロマックイーンにビワハヤヒデといった超名馬たちが挙げられます。
そんな晩年の彼らをみると、真っ白で白毛のようにとても綺麗でした。昨今では、ゴールドシップも真っ白なお父さんになっていますね。
白毛
※画像はnetkeibaより引用
馬体の大半が白色ですが、ピンク色の皮膚などに有色の斑点がある真っ白でない競走馬もいます。なお、芦毛と白毛の違いは、前述しました通り芦毛は馬齢を重ねるに従ってだんだんと白くなるのに対し、白毛馬は生まれた時から被毛が全体が真っ白な点が異なる部分です。
ただ、白毛は基本的に両親のどちらかが白毛の遺伝子を持っていなければ、産駒に伝わりませんが、稀に突然変異で生まれる場合がありますが、現代科学でもその理由は解明されていません。その代表馬は間違いなくソダシでしょう。
かつて白毛は体質が弱く競走馬に向かないとされていましたが、その傾向をも覆す芝G1通算3勝を挙げたソダシの活躍は、今後も白毛一族を継承する大きな起点となりそうです。
競走馬の毛色のまとめ
これまで日本競馬の血統史を大きく塗り替えたといわれているノーザンテーストは栗毛、さらにサンデーサイレンスは青鹿毛でした。
しかし、ノーザンテーストの代表産駒であるダイナガリバーは鹿毛でしたし、サンデーサイレンスの代表産駒ディープインパクトも鹿毛と、決してその産駒たちがすべて父の毛色を受け継いでいるのかというと、そうとは限りません。
よって、毛色は競走馬の能力には関係ないかも知れませんが、ただ、父と容姿が似ている、また母に容姿が似ている方が愛着はあるかと思います。
そんな毛色を血統表と見比べて、この黒鹿毛の馬は、鹿毛の父よりも黒鹿毛だった祖父の血の方が濃く出ているかも?といったような見方をするのも、また競馬の面白さの1つではないでしょうか。