1984年以降、JRAが主催するレースには「グレード制」が用いられ、最高の格付けはG1レースとなります。
そして、2017年に大阪杯とホープフルステークスがG1レースに昇格したことで現在、平地G1が24レース、障害G1が2レースと全部で26レースとなりました。
その中でも特に秋競馬のG1レース後半戦は年末の大一番につながるレースから、それぞれの路線ナンバーワンを決めるレースまで多岐に渡ります。
そこで今回は、前回に引き続き秋G1レース(後編)をお届けします。
本記事を読んでいただき、より一層秋競馬のG1後半戦を楽しんでもらえればと思いますので、ぜひ最後までご高覧ください。
- 秋に開催されるG1(ジャパンカップからホープフルステークス)の情報が分かります。
- 過去の秋のG1の勝ち馬が分かります。
- 過去のレースの中でも特に印象深いエピソードをまとめました。
ジャパンカップ
日本競馬として「世界に通用する強い馬作り」を基に海外の強豪馬を招待して競わせることを趣旨に1981年に創設され、毎年11月下旬に東京競馬場の芝2,400メートルを舞台に行われています。
レースの特徴として、第1回大会からの10年間は、海外招待馬8勝に対し、日本馬は1984年のカツラギエースと1985年のシンボリルドルフの2勝と海外招待馬の強さが目立ちました。
しかし、近年では日本馬の活躍が多く見られ、創設当初とは完全に形勢が逆転しています。
過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
アーモンドアイ | 2018年、2020年 |
コントレイル | 2021年 |
ディープインパクト | 2006年 |
スペシャルウィーク | 1999年 |
ジェンティルドンナ | 2012年、2013年 |
※JRAメモリアルヒーローファン投票より抜粋
世界の強豪馬が集結するレース
過去には、アメリカ年度代表馬のジョンヘンリーや凱旋門賞馬トニービン、モンジューなど世界の強豪馬が出走し、今では世界トップクラスのレースとしても注目を集めるレースとなりました。
中でも唯一ジャパンカップ連覇を達成したジェンティルドンナは、アーモンドアイに匹敵する日本競馬史上最強牝馬に値するのではないでしょうか。
チャンピオンズカップ
日本馬の海外ダートレースでの活躍などから、ジャパンカップダートとして2000年に創設。G1国際招待競走として東京競馬場にて第1回大会が開催されました。
なお、開催時期は2007年まで11月下旬、以降は12月上旬に開催となっています。
また、コースも創設から2002年を除いて2007年まで東京競馬場のダート2,100メートル、2008年から2013年までは阪神競馬場ダート1,800メートルで施行されていましたが、2014年から現在のチャンピオンズカップに改名されるとともに中京競馬場ダート1,800メートルで行われるようになりました。
過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
クロフネ | 2001年 |
ホッコータルマエ | 2014年 |
カネヒキリ | 2005年、2008年 |
チュウワウィザード | 2020年 |
クリソベリル | 2019年 |
※JRAメモリアルヒーローファン投票より抜粋
衝撃の7馬身差
ジャパンカップ同様、これまで数々のダート名馬が誕生しましたが中でも衝撃的だったのは、2001年の勝ち馬クロフネではないでしょうか。
2着との着差は歴代最高となる7馬身差で圧勝した衝撃から、今もなお、ダート歴代最強馬に挙げる方は多いと思います。
阪神ジュベナイルフィリーズ
1949年に関西に所属する3歳(現2歳表記、以下同じ)馬のナンバーワン決定戦として、阪神3歳ステークスの名称で創設。
その後、1991年より牡馬と牝馬の世代最強馬を確立させるため、同レースを牝馬限定戦に変更。
合わせてレース名も阪神3歳牝馬ステークスに改名され、2001年には馬齢表示国際基準に伴う変更にて、レース名を現在の阪神ジュベナイルフィリーズとなりました。
なお、創設当初は芝1,200メートルで行われていましたが、1962年より芝1,600メートルに変更され2006年より現行の阪神外回りコースとなり、開催時期は毎年12月上旬となっています。
過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
ラッキーライラック | 2017年 |
ブエナビスタ | 2008年 |
ウオッカ | 2006年 |
ヒシアマゾン | 1993年 |
ダノンファンタジー | 2018年 |
※JRAメモリアルヒーローファン投票より抜粋
母から娘、そして姉妹制覇へ
日本が誇る名牝・エアグルーヴ世代において、同レースを制したビワハイジから娘のブエナビスタが母仔2代制覇を成し遂げると、さらにブエナビスタの半妹ジョワドヴィーヴルも2011年に優勝。これは唯一の姉妹制覇となりました。
朝日杯フューチュリティステークス
1949年に関東地区の3歳馬ナンバーワン決定戦として創設され、2013年まで中山競馬場で行われてきましたが、2014年からは阪神競馬場に移行し、毎年12月中旬に施行されています。
また出走条件に関しては、1991年まで牡馬およびセン馬限定でしたが、2004年より牡馬および牝馬限定となりセン馬に出走権利がなくなりました。
さらに外国産馬は1971年から、地方競馬所属馬も1995年から、そして2010年の国際指定競走に伴い海外所属馬にも門出が開かれています。
なおレース名は、先ほどの阪神ジュヴェナイルフィリーズと同じ2001年より朝日杯3歳ステークスから現名称に変更され、施行距離は創設当初が芝1,100メートルで、1959年より芝1,200メートル、1962年以降は現在の芝1,600メートルに定着しました。
過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
サリオス | 2019年 |
グラスワンダー | 1997年 |
フジキセキ | 1994年 |
ナリタブライアン | 1993年 |
ダノンプレミアム | 2017年 |
※JRAメモリアルヒーローファン投票より抜粋
最強馬が名を連ねる
過去の勝ち馬をみますと、ナリタブライアンやグラスワンダーといった日本歴代最強馬がズラリと並んでいます。
中でも1994年の勝ち馬フジキセキは、サンデーサイレンスの初年度産駒として注目を集めましたが、翌年、屈腱炎のため早期引退。『幻の三冠馬』と謳われるほどの名馬でした。
中山大障害
1934年に東京競馬場の日本ダービーに匹敵する中山競馬場の名物レースとする目的で創設された障害競走で、現在は障害芝4,100メートルで行われています。
なお第1回は同年の秋に開催され、翌1935年から春と秋に分けて年2回開催となりました。
その後、1999年の障害競走グレード制導入によりJG1に格付けされ、負担重量も別定から定量に変更。また、開催時期も秋季から現行の有馬記念前日となり、”障害の有馬記念”として多くのファンに親しまれています。
過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
オジュウチョウサン | 2016年、2017年、2021年 |
アップトゥデイト | 2015年 |
ニシノデイジー | 2022年 |
マーベラスカイザー | 2012年 |
ユウフヨウホウ | 2001年 |
障害レースの総決算
障害レースの総決算だけあって何かとドラマ性が多い中山大障害ですが、2001年の勝ち馬ユウフヨウホウは、単勝115倍の最低人気ながらの大金星を挙げた中で、半兄のゴーカイは3年連続2着と兄弟でワンツー決着となりました。
また、2012年に勝利したマーベラスカイザーの鞍上・熊沢重文騎手は、障害グレード制度導入後初となる平地・障害の両方でG1制覇を達成。
そして2022年の勝ち馬ニシノデイジーは、母方にセイウンスカイとニシノフラワーといったオーナー由来の血統を残すといった執念ともいうべき、血統背景を持つ中でのG1勝利は感動的でした。
有馬記念
1956年に当時のJRA理事長だった有馬頼寧氏が提唱し『中山グランプリ』の名称で第1回大会が行われました。
しかし、翌年に有馬氏が逝去されると、その功績を称え、第2回大会から現行の有馬記念となり、距離は芝2,600メートルで施行されていましたが、第11回大会から芝2,500メートルになっています。ちなみに1着賞金はジャパンカップと同じく国内最高の5億円です。
なお、出走馬はファン投票や獲得賞金などで決まり、競馬ファンにとっては、年末恒例のグランプリレースであり、競馬はよく「金杯に始まり、有馬記念で終わる」と言われるほど、1年の総決算レースでもあります。
過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
オルフェーヴル | 2011年、2013年 |
オグリキャップ | 1988年、1990年 |
トウカイテイオー | 1993年 |
ディープインパクト | 2006年 |
キタサンブラック | 2017年 |
※JRAメモリアルヒーローファン投票より抜粋
その年の全ての感動をもたらす有馬記念
「奇跡の復活」「これが最後の衝撃」「これが男の引き際だ」など、競馬ファンだけでなく、今や国民的行事の1つでもあり、年末の風物詩とされるのが有馬記念です。
なお、サクラローレルが勝利した1996年の売上875億円は、ギネス記録にも登録される売上記録となっていますね。
ホープフルステークス
1984年に阪神競馬場の芝1,600メートルで行われた3歳牝馬限定のラジオたんぱ杯3歳牝馬ステークス(G3)が起源とし、その後幾度となく出走条件や距離、レース名の変更が行われました。
そして、2014年から中山競馬場の芝2,000メートルを舞台とし、レース名も現行のホープフルステークスに改名。
2017年にはG2からG1へ昇格し、名実ともに2歳馬の中距離王決定戦として位置付けられました。なお、開催時期については、毎年12月28日のJRA最終開催日に施行されています。
過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
コントレイル | 2019年 |
サートゥルナーリア | 2018年 |
ダノンザキッド | 2020年 |
ドゥラエレーデ | 2022年 |
レガレイラ | 2023年 |
将来の明暗が詰まった重要なレース
まだG1レースに昇格してから歴史が浅いレースですが、直近で思い出されるのは、2022年に14番人気ながら接戦を制したドゥラエレーデでしょうか。
この勝利は、ムルザバエフ騎手と池添学調教師にとって、嬉しいJRAのG1初勝利となりました。
東京大賞典
1955年に地方・大井競馬場のダート2,600メートル戦として施行され、1995年の第41回大会からは指定交流競走となり、JRAや地方競馬の他地区に所属する馬も出走可能となりました。
また1997年からは、ダートのグレード競走のJpn1に格付けされ、第57回大会から海外所属馬が出走可能な国際競走となったことで、地方競馬としては史上初となる国際G1レースの格付けを取得しています。なお開催時期は、毎年12月29日に行われています。
過去に勝利した主な名馬たち
競走馬名 | 優勝した年 |
ウシュバテソーロ | 2022年、2023年 |
オメガパフューム | 2018~2021年 |
ホッコータルマエ | 2013年、2014年 |
スマートファルコン | 2011年 |
コパノリッキー | 2017年 |
ダートレースの総決算
2023年から1着賞金が8,000万円から1億円に増額され”地方競馬の有馬記念”との意味合いがさらに強くなったダートレースの総決算が、この東京大賞典です。
その中でも同レースを4年連続で勝利したオメガパフュームの大記録が光り輝いていますね。
まとめ
今回は、秋のG1レース(後編)として、お届けしました。
冒頭にもお話しましたが、特に秋競馬のG1レースが、もっとも盛り上がりをみせるのは、秋競馬のG1レース後半戦だと思います。
そして、熾烈な戦いの先にある感動の連続を是非とも味わってみてください。