皆さんは、競走馬の出走登録が出走可能枠を超えてしまった場合、優先される出走馬の決め方について知っていますか?
これは、収得賞金が多い順や優先出走権を得た馬などによって出走馬が決定されますが、この賞金が同じ場合は抽選にて決められます。
また、国際競走については、最大8頭まで外国馬が優先して出走可能など、G1レースのみならず、重賞や条件戦においても出走馬を決定する条件があるのです。
そこで今回は、競馬における出走馬の決め方について、詳しく説明していきたいと思います。
さらには、優先出走権やその他出走馬の決め方に付随する条件なども合わせてご紹介しますので、ぜひ最後までお読みいただき、競馬の知識を深めてみてください。
※なお、中央競馬(以下JRA)と地方競馬で出走馬の決定は異なりますが、本記事ではJRAのみを対象としていますので、ご了承ください。
G1レースの出走馬の決め方について
最初にG1レースの出走馬の決め方について解説します。
まずは、以下の表をご覧ください。
この表は、2024年現在、日本競馬のG1レースにおける出走順位の決め方をまとめたものです。
条 件 | 決定順(〇数字の小さい順に優先されます) | ||||
① | ➁ | ③ | ④ | ⑤ | |
2歳 | 外国馬 | ※2 | 収得賞金の多い順 | ||
3歳※オークス以外 | ※1 | 外国馬 | ※2 | 収得賞金の多い順 | |
オークス | ※1 | 外国馬 | 収得賞金の多い順 | ||
宝塚記念・有馬記念 | ファン投票 | 外国馬 | 出走馬決定賞金の多い順 | ||
フェブラリーS チャンピオンズC | レーティング | ※1 | 外国馬 | 出走馬決定賞金の多い順 | |
ジャパンカップ | レーティング | 外国馬 | 出走馬決定賞金の多い順 | ||
上記以外の古馬G1レース | レーティング | ※1 | 外国馬 | ※2 | 出走馬決定賞金の多い順 |
J・G1レース | 外国馬 | 出走馬決定賞金の多い順 |
※1,トライアル競走や前哨戦など、該当レースへの優先出走権(以下別途説明)を得た馬が対象となります。
※2,該当レースへの優先出走権が付与されるレースで優先出走権を得た地方所属馬が対象となります。
なお、表内のファン投票とは、特別登録馬の中でファン投票の得票数が多い上位10頭の馬を指し、またレーティングとは、出走登録を済ませた馬の中でレーティング順位の上位5頭が対象です。
また、上位のクラスの馬は優先して出走可能なため、3勝クラスの馬が同じレースに特別登録したオープン馬の出走馬決定賞金を上回った場合でも出走馬決定順は、オープン馬が上位となります。
たとえば、古馬オープンのレースにおいて、出走馬決定賞金が3,000万円の3勝クラスの馬と、出走馬決定賞金が2,000万円のオープン馬がいたと仮定します。その場合、後者が決定順で上位となるのです。
なお、出走馬決定賞金とは、収得賞金に指定された期間の収得賞金を加算することで求められる賞金のことをいい、計算式としましては、出走馬決定賞金=収得賞金+直近1年間の収得賞金+直近2年間のG1レースおよびJG1レースの収得賞金で算出されます。
条件レースの出走馬の決め方
続いては、G1レース以外の重賞、特別戦、条件レースについての出走順位の決め方について説明します。
まず、出走順位決定の本則としては、優先出走権を持っている馬を処理した後、各レースの出走馬決定順序を踏まえて、出走馬が決定されます。
以下、各レース別に条件をまとめました。
平地3歳以上の重賞・リステッド競走および障害オープン競走での順位付けについて
平地3歳以上の重賞・リステッド競走および障害オープン競走での競走馬の同じクラス内での順位付けは、収得賞金に直近1年間で加算した収得賞金を加え、直近2年間でのG1レースおよびJG1レースで加算された収得賞金にて、出走馬決定賞金を用いて決定されます。
2歳および3歳オープン
これは至ってシンプルで、収得賞金が多い順に決定されます。
ただし、2歳の夏季G3レースで同額だった場合、新馬戦での勝敗が左右することになります。
3歳以上平地オープン(重賞およびリステッド除く)
以下の順番で出走順が決まります。
- オープンクラスで直近2か月以内に前走3着以内に入った馬
- オープンクラスで転籍後初戦の馬
- オープンクラスで出走間隔が長い順
- 未出走馬
- 未勝利馬
3歳以上3勝クラス
以下の順番で出走順が決まります。
- 3勝クラスで直近1か月以内に前走3着以内に入った馬
- 3勝クラスで転籍後初戦の馬
- 3勝クラスで出走間隔が長い順
- 未出走馬
- 未勝利馬
3歳以上2勝クラス
以下の順番で出走順が決まります。
- 2勝クラスで直近1か月以内に前走5着以内に入った馬
- 2勝クラスで転籍後初戦の馬
- 2勝クラスで出走間隔が長い順
- 未出走馬
- 未勝利馬
障害未勝利戦
障害競走の未勝利戦は下記の順番で出走馬が決まります。
- 1か月以内に前走5着以内に入った馬
- 転籍後初戦の馬
- 出走間隔が長い馬
競馬の出走馬を決める自ブロック制とは
3歳以上1勝クラスと未勝利戦では『自ブロック制』という制度が加えられます。
『自ブロック制』とは、簡単にいいますと未勝利戦、1勝クラスのレースにおいては、関東圏では関東馬(美浦トレーニングセンター所属の馬)、関西圏では関西馬(栗東トレーニングセンター所属の馬)の出走が優先されるというものです。ただし、工事などで振替開催がある場合はそれが加味されます。
なお、関東圏とは、主場が東京、中山、福島、新潟開催の時であり、逆に関西圏とは、主場が京都、阪神、中京、小倉開催の時となります。なお、北海道(函館、札幌)開催には、この東西の自ブロック制が存在しません。
関東圏(美浦) | 東京・中山・夏季開催の福島および新潟(ただし2場開催期間除く) |
関西圏(栗東) | 京都・阪神・夏季開催の中京および小倉 |
もう少し詳しく説明します。
たとえば、秋の東京、京都、福島といった3場開催の場合、関東圏の主場は東京となり、関西圏は京都となります。そのため、福島は第3場目(ローカル)となり、自ブロック制の対象外となるわけです。
また、新潟と札幌開催といった東西どちらかに1つしかない2場開催期間では、本来なら関東圏の主場は新潟開催となりますが、関西圏の主場開催がないため、新潟開催=ローカル、札幌開催=ローカルという扱いになります。
なお、このような制度の目的は、東西の格差を最小限に抑え、少しでも出走機会を確保しようという部分から制定されています。
それは、現在の日本の競馬では『西高東低』といわれているのが主な原因だと考えられますが、これは決して関東の馬が弱いといっているのではありません。
それは近年の競馬をみてもお分かりかと思いますが、イクイノックスやアーモンドアイ、グランアレグリアといった関東所属馬でも素晴らしい名馬が誕生しています。
ただ、あくまでも全体的な成績という意味では、関西馬の成績が良いという傾向があります。
そのため、出走や勝ち上がりをある程度確保するためにこの制度があると思われます。
なお、地方もしくは海外からJRAへ転入した転籍後初戦の馬に対しては、自ブロック制は適用されません。
少し予備知識としての説明が長くなりましたが、続いて3歳以上1勝クラスからの説明に移ります。
3歳以上1勝クラス
ブロック区別がある場合は以下の通りとなります。
- 1勝クラスで直近1か月以内に前走5着以内に入った自ブロック制に該当する馬
- 1勝クラスで転籍後初戦の自ブロック制に該当する馬
- 1勝クラスで出走間隔が長い自ブロック制に該当する馬
- 未出走の自ブロック制に該当する馬
- 未勝利の出走間隔の長い自ブロック制に該当する馬
ブロック区別がない場合は以下の通りとなります。
- 1勝クラスで直近1か月以内に前走5着以内に入った馬
- 1勝クラスで転籍後初戦の馬
- 1勝クラスで出走間隔が長い馬
- 未出走馬
- 未勝利馬で出走間隔が長い馬
平地未勝利戦
ブロック区別がある場合は下記の通りとなります。
- 1か月以内に前走5着以内に入った自ブロック制に該当する馬
- 未出走の自ブロック制に該当する馬
- 未勝利の自ブロック制に該当する馬
ブロック区別がない場合は下記の通りとなります。
- 1か月以内に前走5着以内に入った馬
- 未出走馬
- 未勝利馬
競馬の出走馬を決める優先出走権について
競馬には優先出走権というルールがあります。
優先出走権というのは読んで字のごとく、『ほかの馬よりも優先して出走できる権利』のことです。
ところが、競馬の優先出走権にはいくつか種類が存在しています。
ここからは下記3つの優先出走権について解説します。
- 除外における優先出走権
- ハンデ戦における優先出走権
- トライアルレースにおける優先出走権
- 宝塚記念と有馬記念の優先出走権
除外における優先出走権について
競馬は時折出走可能枠に対してそれ以上の出走登録がある場合があります。
そして、出走頭数が多く抽選などで『除外』された馬に対しての優先出走権が存在しています。
除外による優先出走権の付与については、以下の通りです。
- 出走馬確定の結果『除外』となった馬に対し、除外から2か月以内に同条件のレースに限り優先出走権が付与される。
- 除外による優先出走権が付与されたのち、抽選によって再び除外となった場合、その日からさらに2か月間は、上記の権利よりも優先される優先出走権が付与されるが、それ以降も同様に除外されると同条件で優先される権利が付与される。
- 最後の除外から2か月を過ぎてしまうと、優先出走権の権利は消滅する。
ただし、新馬戦やオープン競走については、出走間隔や前走の成績による出走順の優遇はありません。
以上が条件レース別における出走順位の決め方についての説明となります。
多少複雑なところはあると思いますが、少しでも覚えておけば、馬券の組み立てなど役に立つ部分があるかも知れません。
ハンデ戦における優先出走権について
次にハンデキャップ戦における優先出走権に関して説明します。
まず、前提としまして、先述しました通り、ここでは優先出走権を持っている馬を除いた上でハンデ上位3頭については、優先出走権を認めるものと考えてください。
ただし、ハンデが同順位の馬で並んだ場合は、抽選で優先出走権を決められます。
なお、このハンデ計算については、アローワンス(年齢によるものと性別によるもの)と南半球産の減量を加味します。以下がその表となります。
馬齢 | 性別 | 斤量 |
古馬 | 牡馬 | 58kg |
牝馬 | 56kg | |
3歳 | 牡馬・せん馬(北半球産) | 57kg |
牝馬(北半球産) | 55kg | |
牡馬・せん馬(南半球産) | 55kg | |
牝馬(南半球産) | 53kg |
また、例年8月に施行されている2,000メートルのハンデ戦につきましては、すべて同じハンデとみなされ、同時期に開催されるワールドオールスタージョッキーズ(以下WASJに省略)は除き、さらにWASJでは、南半球産の減量は適用されませんので、ご注意ください。
トライアルレースの優先出走権について
続いては、G1レースにおけるトライアルレースおよびステップレースの優先出走権についての説明です。
以下の表内にあるG1レースについては、表内の優先出走条件を満たした場合のみ、優先出走権が認められます。
対象レース名 | 該当レース名 | 優先出走条件 |
桜花賞 | チューリップ賞(G2) | 3着以内※ただし、未勝利・未出走馬の場合は、2着以内とする。 |
フィリーズレビュー(G2) | ||
アネモネステークス(L) | 2着以内※ただし、未勝利・未出走馬の場合は1着馬のみとする。 | |
皐月賞 | 報知弥生ディープインパクト記念(G2) | 3着以内※ただし、未勝利・未出走馬の場合は、2着以内とする。 |
スプリングステークス(G2) | ||
若葉ステークス (L) | 2着以内※ただし、未勝利・未出走馬の場合は1着馬のみとする。 | |
NHKマイルカップ | ニュージーランドトロフィー(G2) | 3着以内※ただし、未勝利・未出走馬の場合は、2着以内とする。 |
アーリントンカップ(G3) | ||
オークス | 桜花賞(G1) | 5着以内 |
フローラステークス(G2) | 2着以内 | |
スイートピーステークス(L) | 1着馬のみ | |
日本ダービー | 皐月賞(G1) | 5着以内 |
青葉賞(G2) | 2着以内 | |
プリンシパルステークス(L) | 1着馬のみ | |
秋華賞 | 紫苑ステークス(G2) | 3着以内 |
ローズステークス(G2) | ||
菊花賞 | セントライト記念(G2) | 3着以内 |
神戸新聞杯(G2) |
続いて、以下の古馬G1レースについては、それぞれ該当レースの1着馬のみ優先出走権が与えられます。
対象レース名 | 該当レース名 |
フェブラリーステークス | 東海ステークス(G2)根岸ステークス(G3) |
高松宮記念 | 阪急杯(G3)オーシャンステークス(G3) |
大阪杯 | 中山記念(G2)金鯱賞(G2) |
天皇賞・春 | 阪神大賞典(G2)日経賞(G2) |
ヴィクトリアマイル | 阪神牝馬ステークス(G2)福島牝馬ステークス(G3) |
安田記念 | マイラーズカップ(G2)京王杯スプリングカップ(G2) |
スプリンターズステークス | キーンランドカップ(G3)セントウルステークス(G2) |
天皇賞・秋 | オールカマー(G2)毎日王冠(G2)京都大賞典(G2) |
エリザベス女王杯 | 府中牝馬ステークス(G2) |
マイルチャンピオンシップ | 富士ステークス(G3)スワンステークス(G2) |
チャンピオンズカップ | みやこステークス(G3)武蔵野ステークス(G3) |
※重賞レース名およびグレード格付けについては、2024年現在のものです。
宝塚記念と有馬記念における優先出走権について
最後に宝塚記念および有馬記念における優先出走権について説明します。
こちらは先述した通り、各レースに定められている出走馬の決定順に記載しましたが、第1回特別登録を行った馬の中でファン投票上位10頭は出走順位が上位となります。
これを第1優先順位とし、続いて上記の表の通り、外国馬、出走馬決定賞金の多い順に出走馬が決定されます。
競馬の出走馬のまとめ
今回は、競馬における出走馬の決め方および優先出走権などについて紹介しました。
内容的には、少し複雑な部分も多かったと思いますが、少しでも出走馬を決定するルールを理解すれば、さらに競馬が面白くなると思います。
特にG1レース出走が懸かったトライアルレースなどでは、出走馬の決め方を知っているだけでレースの見方が変わってくると思いますので、是非とも参考にしてみてください。