競馬において、負担重量とは、レースで競走馬が背負わなければならない重量のことをいい、斤量と呼ばれることもあります。
これは、騎手の体重にプラスして、鞍などの馬具を合計した数字で、出走している全ての競走馬が、決められた重量でレースに出走する必要があります。
そして、この負担重量に過不足が出ると、騎手が装着する安全ベスト内や鞍などに小さな鉛を装着し、重量を調整します。
ただし、それでも過不足が発生してしまうと、騎手の乗り替わりが発生する場合もあります。
そこで今回は、負担重量に区別される定量戦・別定戦・ハンデ戦について詳しく紹介していきたいと思います。
さらには、馬齢重量についても合わせて紹介しますので、是非とも参考にしてみてください。
競馬の定量戦とは?
定量戦とは、馬齢と性別を基準に負担重量を決定する方式です。
計算方式が馬齢と性別によって決まっており、負担重量による差がないレースです。つまり競走馬の実力差が、そのまま結果につながってくるレースです。
そのため、日本ダービーや有馬記念といったG1レースでは、定量戦で施行されることになります。それは、最も優秀なサラブレッドを決定するためのレースとの位置付けから負担重量が統一されているからですね。
こちらの表は、2024年5月12日に行われたヴィクトリアマイル(G1)の出馬表ですが、表内の赤丸部分のように各レースには、どのような条件か示されています。この場合ですと「定量」レースだということが分かります。
なお、定量戦では、競走馬の実力差をきっちり見極めることが要求されますので、一部例外を除いて定量戦の場合は、負担重量をあまり深く考える必要はないレースといえます。
競馬の別定戦とは?
別定戦とは、レースによって負担重量を決定する基準が設けられているレースのことをいいます。
定量戦で加味する馬齢や性別のほかに、獲得賞金額や勝利数によって負担重量が計算され、その結果、負担重量が上下することになります。
簡単にいいますと、勝利数が多い競走馬や賞金を多く稼いでいる競走馬に対して負担重量を重くするといった具合に負担重量が課せられます。
これは、強い競走馬=勝利数が多い、稼いでると判断されるためです。それにより、負担重量が決定されるわけですが、この定量戦の場合、もっとも負担重量が課せられたトップハンデを背負った競走馬が強い馬と判断できます。
さらに具体的な例を紹介します。
まず、賞金額による負担重量の計算方法として、日本の競馬は負担重量の基本が53キロとなっています。そこで収得賞金が1,600万毎に1キロ増加されます。
たとえば、収得賞金が5,000万円の競走馬がいたとします。
前述の通り、負担重量は1,600万円毎に1キロずつ増加させられますので、収得賞金5,000万円を1,600万円で割りますと、3.125となり、基本の負担重量53キロに3キロが加算され、その競走馬の負担重量は56キロ、これが出走条件となります。
また、勝利条件による負担重量については、以下の3つが挙げられます。
牡馬は57キロ、牝馬が55キロを基本として、
①1年以内にG1レースで1着となった競走馬は2キロ増 ※なお、牝馬限定G1は除かれます。
➁1年以内に牝馬限定G1またはG2レースの1着となった競走馬には1キロ増 ※ただし、これもG2レースの場合、牝馬限定を除きます。
③1年以上前にG1レースで1着となった競走馬は1キロ増 ※なお、牝馬限定G1及び2歳戦は除かれます。
これが、別定戦のルールとなりますので、馬券を購入する際は、負担重量をよく確認する必要があります。
競馬のハンデ戦とは?
ハンデ戦とは、文字通り強い競走馬と弱い競走馬の能力差を埋める措置を取るレースのことで、各競走馬の実績や状態を総合的にみた上で、JRAのハンデキャップ委員と呼ばれるハンデキャッパーが専門的な部分を考慮し負担重量を決定します。
よって、別定戦のような計算式がハンデ戦には存在しません。
なお、決定基準は出走する全競走馬が、横一線でゴールするように負担重量を決定する方針が取られています。
よって、大穴と呼ばれる人気薄の競走馬が激走する可能性が高いレースともいえます。逆に競走馬の実力を評価して、見極めるだけでは足りないのもハンデ戦の特徴に挙げられます。
ハンデ戦での馬券購入の際は、実力を元に評価された負担重量差を予想に加味して、穴馬を狙うと面白いかも知れません。
また、ハンデ戦に関しては、1キロ=0.2秒の差があるということも頭に入れて予想をしてみてください。

競馬の馬齢重量とは?
まず馬齢とは、競走馬の年齢のことをいいます。
従来は数え年で数えられていましたが、2001年度から、国際化の一環として、数え年から満年齢に変更されました。
よって、生まれた年を0歳と数え、その馬が生まれた年の1月1日から年齢が起算されます。
また、負担重量を競走馬の年齢によって定める方法を馬齢重量といいます。これは、2歳時と3歳時に同一年齢の競走馬だけのレース時のみ適用されます。
なお、馬齢重量に関しましては、以下の表を参考にしてみてください。
区分 | 2歳(9月まで) | 2歳(10月~12月まで) | 3歳 |
牡馬及び騙馬 | 55キログラム | 56キログラム | 57キログラム |
牝馬 | 55キログラム | 55キログラム | 55キログラム |
どうしてレース毎に定量や別定など、負担重量が異なるのか
続いては、レース毎に定量や別定戦などの負担ルールが異なるのかについて説明します。
それは、日本の競馬がギャンブル、いわゆる金銭を主体としたシステムだからです。
分かりやすく例えると、人間の中で世界最速を誇ったウサイン・ボルト選手と並みのランナーが100メートル競走をするとします。
ここで、どちらが勝つか賭けるとします。そうなれば、いったい誰が並みのランナーに賭けるでしょうか?
しかし、ボルト選手に500グラムの重りを付けて競走するとなれば、賭けは成立すると思いませんか。
これはあくまでも分かりやすく例えたイメージなので、実際にこのようなことはありませんが、競馬において定量や別定戦などの負担ルールが異なってくる理由は伝わったのではないかと思います。
そして、最後に負担重量についての補足として検量について紹介します。
検量とは、レース前とレース後で定められた負担重量に違反がないかどうかをチェックすることをいいます。
特に検量は、レース前よりもレース後の「後検量」を重視しています。
これは、よく競馬中継にて、レース後の勝利騎手インタビューの前に騎手が鞍などを持って検量室に入っていき、体重を量っているシーンを目にすることがあると思います。
あれが「後検量」と呼ばれるものです。
この「後検量」は、上位人気馬と上位入線馬(7着以内)と裁決委員が特に指定した騎手のみが対象となっており、もし負担重量よりも1キログラムを超えて軽かった場合、レース失格となります。なお、重たかった場合は罰金が発生しますが、レース失格とはなりません。
ちなみに負担重量に含まれるものとは、鞍・腹帯・靴下・鎧・ブーツ・勝負服・重りと騎手自身となっています。
また、負担重量に含まれないものは、ゼッケン・ヘルメット・ヘルメットカバー・ゴーグル・鞭・手綱・手袋・ブリンカーなどが該当します。
競馬の斤量のまとめ
今回は、競馬における負担重量(定量・別定・ハンデ・馬齢)について紹介しました。
どの項目も知っているのと知らないのでは、予想に影響する可能性が、少なからずあるかも知れません。この機会に少しでも知っていただき、是非とも参考にしてみてください。