「ダークホース」という言葉を耳にしたことはありませんか?
スポーツや音楽、さらには政治の世界でも、思わぬ活躍を見せた存在を「ダークホース」と呼ぶことがあります。
実はこの言葉、もともとは競馬用語が語源なのです。
競馬で“ダークホース”とは、実力が未知数ながらも、一発の可能性を秘めた「伏兵馬」のことを指します。
そこから転じて、現代では「無名ながら実力を秘めた存在」という意味で幅広く使われています。
本記事では、そんなダークホースの意味や由来、競馬での使われ方をわかりやすく解説します。
ダークホースとは?
「ダークホース」とは、もともと競馬が語源の言葉で、あまり知られていないのに意外な活躍を見せる存在を指します。
現在ではスポーツや選挙、芸能など幅広い分野で使われていますが、その原点は競馬にあります。
ここからは、競馬において「ダークホース」がどんな意味を持つのかを詳しく見ていきましょう。
競馬における「ダークホース」の意味
競馬で「ダークホース」と呼ばれるのは、実力が未知数で、人気が低いものの上位を狙える馬のことです。
ファンの間では「伏兵」や「穴馬」とも呼ばれ、前評判の高い人気馬を相手に思わぬ激走を見せる存在として知られています。
たとえば、前走で凡走した馬が一変して好走したり、重賞初挑戦の馬が実績馬を破るケースなどがそれにあたります。
競馬は展開や馬場、成長具合などの要素で結果が大きく変わるため、「どの馬にもチャンスがある」世界です。
その中で輝くダークホースの台頭こそ、競馬の醍醐味のひとつといえるでしょう。

一般的な意味
「ダークホース」という言葉は、現在では競馬だけでなく日常生活のさまざまな場面で使われる表現になっています。
たとえば、スポーツ大会で無名の選手が上位に進出したり、選挙で下馬評の低い候補が勝利したときなどに「今回のダークホースだ」と言われます。
また、芸能オーディションやビジネスの世界でも、注目されていなかった人物や企業が突如として注目を集める場面でよく使われます。
つまり、ダークホースとは“まだ知られていないけれど実力を秘めた存在”を指す、ポジティブな意味合いを持つ言葉なのです。
ダークホースの語源
「ダークホース」は、もともと競馬の世界から生まれた英語表現です。
今でこそ日常でも使われていますが、その始まりは一頭の無名馬の勝利にありました。
この言葉がどのように誕生し、なぜ「意外な成功者」を意味するようになったのか。
次の章で、競馬をルーツとする言葉の由来を詳しく見ていきましょう。
競馬がルーツの言葉
「ダークホース」という言葉は、19世紀のイギリス競馬で使われ始めました。
当時の競馬では、血統や戦績などの情報が十分に共有されておらず、どんな馬なのか分からない存在がしばしば出走していました。
そうした馬が有力馬を相手に思わぬ勝利を挙げたとき、人々はその馬を「dark horse」と呼んだのです。
「dark」は「暗い」よりも「未知の」「正体が分からない」といった意味を持つ言葉で、この表現がぴったり当てはまりました。
やがてこの用語は競馬を超えて、意外な成功者を表す慣用句として広く使われるようになったのです。
初出は小説『若き公爵(The Young Duke)』
「ダークホース」という表現が最初に登場したのは、1831年に出版されたイギリスの作家ベンジャミン・ディズレーリの小説『若き公爵(The Young Duke)』だといわれています。
作中では、主人公が出走馬のリストにも目を通していなかった“まったく無名の馬”が、驚きの勝利を収める場面が描かれています。
この一節がのちに注目を集め、思いがけない勝者を表す「ダークホース」という慣用句の起源になりました。
つまりこの言葉は、文学を通じて競馬の世界から一般社会へ広がった表現なのです。
ダークホースという言葉に込められたニュアンス
「ダークホース」という言葉は、単に“予想外の勝者”という意味だけではありません。
その背景には、「未知」「可能性」「まだ知られていない才能」といった前向きなニュアンスが含まれています。
次の章では、「dark」という言葉の本来の意味や、現代社会での使われ方を通して、ダークホースの持つ本質的な魅力を探っていきます。
「暗い」よりも「未知・曖昧」という意味
「dark」という英単語には「暗い」という意味のほかに、「よく分からない」「未知の」「はっきりしない」といったニュアンスもあります。
つまり、「ダークホース」は“暗い馬”ではなく、“正体の分からない馬”という意味が原点です。
この表現には、マイナスな印象よりも「まだ評価されていない」「秘めた力を持つ」といった前向きな意味合いが込められています。
そのため、思わぬ形で才能を発揮した人物やチームを指して使われることが多く、未知の可能性に光を当てるポジティブな言葉として広く親しまれています。
現代社会での応用例
「ダークホース」という言葉は、今では競馬以外の場面でも幅広く使われています。
たとえばスポーツでは、無名の選手やチームが大会で躍進したときに「今回のダークホース」と表現されます。
また、音楽や映画などのエンタメ分野では、注目度の低かった作品がヒットを記録した場合にも使われます。
さらにビジネスの世界では、新興企業が大手を脅かすような急成長を見せたときに「業界のダークホース」と呼ばれることもあります。
このように、現代では「隠れた実力者」「可能性を秘めた存在」を象徴するポジティブな言葉として定着しています。
競馬で語られる“ダークホース”の実例
競馬は展開や馬場、成長度合いなどによって結果が大きく変わるため、人気の有無にかかわらず思わぬ激走が生まれます。
そんな中で注目されるのが“ダークホース”と呼ばれる存在です。
ここでは、実力が未知数とされながらも大舞台で輝きを放ち、ファンを驚かせた馬たちの例を紹介します。
ウインカーネリアン
| 生年月日 | 2017年4月16日 |
|---|---|
| 性別 | 牡 |
| 父 | スクリーンヒーロー |
| 母 | コスモクリスタル |
| 母父 | マイネルラヴ |
| 生産牧場 | コスモヴューファーム |
| 戦績 | 33戦9勝 |
| 主な勝ち鞍 | スプリンターズステークス(G1) 2025年 関屋記念(G3) 2022年 東京新聞杯(G3) 2023年 |
| 獲得賞金 | 5億1,973万6,500円 |
ウインカーネリアンは、若い頃から地道にキャリアを積み重ねてきた叩き上げの名馬です。
皐月賞では17番人気ながら4着と健闘し、実力を秘めた存在として注目されましたが、その後は蹄葉炎による長期離脱もあり、G1の舞台ではなかなか結果を残せませんでした。
それでも復帰後に関屋記念や東京新聞杯を制し、年齢を重ねても衰えない走りを見せ続けます。
そして迎えた2025年のスプリンターズステークス。8歳、11番人気、しかも大外枠という厳しい条件の中で、ウインカーネリアンは鞍上・三浦皇成とともに果敢に先行。
直線では人気馬たちを抑え、ジューンブレアとの叩き合いを制して悲願のG1初制覇を果たしました。
18年目でJRA G1初勝利をつかんだ三浦騎手とともに、遅咲きのダークホースが栄光をつかむ――そのドラマは、多くのファンの胸を熱くさせました。
テンハッピーローズ
| 生年月日 | 2018年2月26日 |
|---|---|
| 性別 | 牝 |
| 父 | エピファネイア |
| 母 | フェータルローズ |
| 母父 | タニノギムレット |
| 生産牧場 | 社台ファーム |
| 戦績 | 27戦6勝 |
| 主な勝ち鞍 | ヴィクトリアマイル(G1) 2024年 |
| 獲得賞金 | 2億8,299万3,300円 |
テンハッピーローズは、G1未勝利どころか重賞でも結果を残せず、“あと一歩届かない馬”と評されてきました。
デビュー当初から素質は高く評価されていたものの、成績は安定せず、長くオープン戦で善戦を繰り返す日々が続きます。
しかし、6歳で挑んだ2024年のヴィクトリアマイルで、その評価を大きく覆しました。
単勝208.6倍、14番人気という低評価で迎えた一戦。
道中は中団後方に構え、直線で鞭に応えると一気に加速。
外から鋭く伸びて人気馬フィアスプライドを差し切り、G1初挑戦にして見事な優勝を果たしました。
鞍上の津村明秀騎手にとっても、デビュー21年目でのJRA G1初制覇。
誰もが予想しなかった勝利は大波乱を呼び、3連単は91万円超の高配当を記録しました。
まさに“伏兵から主役へ”――テンハッピーローズは、ダークホースの代名詞となる走りを見せたのです。
ペプチドナイル
| 生年月日 | 2018年4月24日 |
|---|---|
| 性別 | 牡 |
| 父 | キングカメハメハ |
| 母 | クイーンオリーブ |
| 母父 | マンハッタンカフェ |
| 生産牧場 | 杵臼牧場 |
| 戦績 | 26戦8勝 |
| 主な勝ち鞍 | フェブラリーステークス(G1) 2024年 |
| 獲得賞金 | 3億5,084万6,000円 |
ペプチドナイルは、芝で結果を残せずダートへ転向して開花した遅咲きの実力馬です。
重賞では惜敗が続き、「善戦止まり」と評されていましたが、2024年のフェブラリーステークスでついに輝きを放ちました。
当日は11番人気という低評価。東京ダート1600mも初挑戦という条件の中、鞍上・藤岡佑介騎手は持ち味である“長くいい脚を使う走り”を信じ、序盤から好位を追走。
直線では粘り強く抜け出し、タガノビューティーやガイアフォースらの追撃を振り切って先頭でゴールしました。
気負うことなく自然体で走り抜いた姿は、まさに伏兵の勝利。
藤岡騎手にとっては6年ぶりのG1制覇であり、単勝11番人気という大波乱を演出しました。
どんな条件でも持ち味を貫き、王者不在の混戦を制したペプチドナイル――その勝利は、“静かなるダークホース”の象徴として今も語り継がれています。
まとめ|ダークホースとは“未知の可能性を秘めた存在”
「ダークホース」とは、単なる人気薄ではなく、まだ評価されていない実力を秘めた存在を意味します。
競馬の世界では、ウインカーネリアンやテンハッピーローズ、ペプチドナイルのように、誰もが予想しなかった活躍で頂点に立つ馬たちがいます。
彼らの共通点は、決して諦めず、自分のスタイルを貫いて結果を出したこと。
思わぬ伏兵が主役に躍り出る瞬間こそ、競馬の最大の魅力です。
そして「ダークホース」という言葉は、私たち人間にも“まだ知られていない可能性を信じて挑戦する勇気”を教えてくれるのです。

