競馬を楽しんでいると、「控除率」という言葉を目にする機会があります。
これは馬券の売上からJRAなどの主催者が差し引く割合のことで、プレイヤーにとっては実質的な“ハンデ”のようなものです。
実はこの控除率こそが「競馬で勝ち続けるのは難しい」と言われる最大の理由のひとつです。
単勝や複勝などの券種ごとに控除率が異なるため、どの馬券を選ぶかによって回収率に大きな差が出ることもあります。
この記事では、控除率の基本から計算方法、券種ごとの一覧、海外競馬との違いまで、初心者でも理解しやすいよう丁寧に解説していきます。
競馬における控除率とは?基本の仕組みを解説
競馬の控除率とは、馬券を購入した金額のうち、主催者側が差し引く取り分を意味します。
この控除率があるため、全体の売上がすべて払い戻されるわけではありません。
ここでは、控除率と払い戻し率の関係や、なぜ「控除率があると勝てない」と言われるのか、その仕組みを分かりやすく解説します。
控除率と払い戻し率の関係
控除率とは、プレイヤーが購入した馬券の売上からJRAや地方競馬などの主催者が差し引く運営費や利益の割合のことです。
たとえば控除率が25%であれば、売上のうち75%が実際に的中者へ払い戻されます。
この75%の部分を「払い戻し率」と呼びます。
つまり、控除率と払い戻し率は表裏一体の関係にあり、控除率が高ければ高いほど、プレイヤーに還元される金額は減るということになります。
公営ギャンブルでは競馬のほかにも競輪・競艇などがありますが、払い戻し率の違いがそのままプレイヤーの期待値に直結します。
競馬は娯楽として楽しむものである一方で、資金をかけて勝負するゲームでもあるため、控除率の存在を正しく理解することは非常に重要です。
控除率が高いと「勝てない」と言われる理由
控除率が高いということは、馬券を買うたびにそれだけ損をしていることを意味します。
たとえば控除率が25%であれば、100円の馬券を買った時点で理論的には25円が引かれ、残りの75円を他の馬券購入者と奪い合う構造になります。
この時点で、何もしなくても損が発生しているため、長期的に見れば負ける確率が非常に高いといえます。
特に初心者の場合、人気馬ばかりを買い続けたり、買い目を増やしすぎて回収率が落ちたりすると、控除率の壁を超えることはほぼ不可能です。
逆に言えば、控除率という“見えない手数料”を把握して戦略を立てることが、競馬でプラス収支を目指すための第一歩となります。
券種ごとの控除率一覧と特徴【中央・地方競馬対応】
競馬の控除率は、すべての馬券に一律で設定されているわけではありません。
券種ごとに異なる数値が定められており、控除率の差がそのまま回収率の差にもつながることがあります。
ここでは、中央競馬(JRA)と地方競馬の主な券種ごとの控除率を一覧で紹介し、それぞれの特徴や注意点を解説します。
中央競馬の控除率一覧(JRA)
JRAが定める控除率は、券種によって明確に分かれています。
2025年時点の主な控除率は、単勝と複勝がそれぞれ20.0%、馬連とワイドが22.5%、3連複が25.0%、3連単が27.5%、WIN5が30.0%となっています。
この中でも単勝や複勝は最も控除率が低く、的中率も比較的高いため、初心者にも人気のある券種です。
一方で、3連単やWIN5などは高配当を狙える反面、控除率も高く設定されており、的中難易度の高さに加えて回収率も低下しやすい点がデメリットです。
馬券を選ぶ際には、自分の予想スタイルや的中精度に応じて、控除率とリターンのバランスを見極めることが重要になります。
地方競馬の控除率一覧
地方競馬においても、券種ごとに控除率は設定されていますが、JRAとは異なる傾向も見られます。
たとえばホッカイドウ競馬では、単勝・複勝が20.0%、馬連が25.0%、3連複や3連単は30.0%と、中央競馬よりも控除率が高めに設定されている券種が目立ちます。
これは運営側の収益確保や還元の仕組みによる調整であり、高配当狙いの券種では控除率が高い傾向があります。
また、南関東や岩手競馬など主催団体ごとに控除率が異なるため、同じ券種でも開催地によって実質的な回収率に差が出る可能性があります。
地方競馬を主戦場にしている人は、自分がよく購入する競馬場の控除率を事前に確認し、できる限り低控除率の券種を狙うことで、長期的な損失を抑えることができます。
単勝・複勝の控除率は有利?【シンプルな馬券の落とし穴】
競馬では、単勝や複勝の控除率が低めに設定されているため、「この馬券なら勝ちやすい」と思う方も多いかもしれません。
たしかに控除率だけを見れば魅力的ですが、それだけで選ぶと落とし穴にはまる可能性もあります。
ここでは単勝・複勝それぞれの控除率の利点と注意点を解説していきます。
単勝の控除率と実際の回収率
JRAにおける単勝の控除率は20.0%と比較的低く、全券種の中でもプレイヤーに有利な分類に入ります。
1着になる馬を1頭だけ当てればよいためルールもシンプルで、初心者にも人気のある馬券です。
しかし、的中率を高めようとして人気馬ばかりを買っていると、オッズが低くなり回収率は伸びません。
逆に高配当を狙って穴馬の単勝を連続で買う場合も、的中しない時間が長くなって資金が先に尽きてしまうことがあります。
単勝は控除率の面では優れているものの、予想の精度と資金配分の工夫が求められる馬券でもあります。
控除率が低い=必ず得をするというわけではないことを理解したうえで活用していくことが大切です。
複勝は最も控除率が低い?リスクとリターン
JRAにおける複勝の控除率は単勝と同じ20.0%に設定されていますが、実際には全馬の中から3着以内に入る馬を当てれば的中となるため、当てやすさでは最も優れている馬券のひとつです。
一方で、その分オッズは非常に低くなりやすく、特に人気馬が上位に来た場合の配当は100円がそのまま戻ってくる程度というケースもあります。
控除率が低くても、実際の払い戻し額が少なければ長期的に見てプラスにはつながりません。
また、的中率が高いぶん多くの人が購入しており、配当が分散されやすい傾向もあります。
複勝は、資金を大きく減らしたくない人や勝負の皮切りとしては良い選択肢ですが、控除率だけを見て「得な馬券」と判断してしまうのは危険です。
あくまで戦略の一部として、的中率と回収率のバランスを見ながら活用することが重要です。
海外の競馬と控除率の違い【ブックメーカーとの比較】
日本の競馬における控除率は、券種ごとに明確に設定されていますが、世界ではその仕組みが異なるケースもあります。
特に、イギリスやアメリカのように「ブックメーカー」が主流の国では、控除の考え方も大きく異なります。
ここでは、海外の控除率事情と、日本との違いについて見ていきましょう。
海外競馬(アメリカ・香港など)の控除率
海外の競馬でも、パリミュチュエル方式を採用している国では日本と似た仕組みで控除率が設定されています。
たとえばアメリカでは、州によって控除率が異なるものの、概ね15〜25%程度の範囲に収まっています。
香港では比較的控除率が低く、単勝で17.5%、連勝複式(日本でいう馬連)で17.5%、3連単に相当するトリプルで25%程度が標準です。
このように、日本よりもやや控除率が低い国もあり、海外競馬の方が「還元率が高くて有利」と言われることもあります。
ただし、海外競馬の方が投資リスクが少ないとは限らず、国ごとのオッズ構造や税制、レースレベルの違いも加味する必要があります。
純粋な控除率だけで比較するのではなく、全体的な仕組みを踏まえて分析することが大切です。
ブックメーカーのオッズと控除率の考え方
イギリスなどでは「ブックメーカー」と呼ばれる事業者がレースのオッズを提供しており、日本のような公営主催とは異なる構造になっています。
ブックメーカー方式では、胴元が独自にオッズを設定し、プレイヤーがその倍率で賭ける仕組みです。
この場合、控除率という明確な数字が存在するわけではなく、オッズの中にブックメーカーの利益分があらかじめ組み込まれています。
一般的には、すべての馬の勝利確率を足すと100%を超えるようにオッズが調整されており、その超過分が実質的な控除率に相当します。
たとえば全体で110%になるように設定されている場合、その10%がブックメーカーの利益となります。
この方式では、同じ馬でもブックメーカーごとに異なるオッズが提示されることがあるため、より高いオッズを探して比較する「オッズショッピング」が重要な戦略となります。
自由度の高い賭け方が可能な一方で、日本のような公的管理とは異なるリスクも存在します。
競馬の控除率は今後変わる?過去の変更事例と今後の見通し
控除率は固定された数値に見えますが、実は過去に何度か見直しが行われています。
時代の変化や売上の動向によって、控除率が再調整される可能性もあるため、プレイヤーとしてはその経緯や背景を知っておくと安心です。
このセクションでは、過去の変更事例を振り返りながら、将来的な見通しについても考えていきます。
過去の控除率変更のタイミングと理由
JRAでは、これまでに数回、控除率の見直しが行われています。
たとえば2004年には、馬連・ワイド・3連複の控除率が統一され、よりバランスの取れた運用が意識されました。
また、WIN5が導入された2011年には、控除率30.0%という高水準が採用され、大きな話題を呼びました。
これらの変更には、収益確保や馬券売上の安定化といった主催者側の事情が背景にあります。
加えて、的中率やオッズのばらつきに対応するために、控除率の調整で還元のバランスを取る必要が出てきたことも要因です。
主催者は長期的に安定した経営を目指しており、プレイヤーの期待と乖離しない範囲で調整を重ねてきた経緯があります。
将来的に控除率が下がる可能性はある?
今後、控除率が下がる可能性はゼロではありませんが、現状ではむしろ維持または微増の傾向が強いと考えられます。
近年、ネット投票の普及によって馬券購入者が増えた一方で、少子高齢化や若年層のギャンブル離れも進んでいます。
こうした背景から、主催者は収益性を確保しつつ、魅力あるレースづくりや還元キャンペーンなどでプレイヤーを維持しようとしています。
控除率を一律に下げてしまうと、主催側の運営資金が不足し、賞金や施設整備に影響を与えるおそれもあります。
そのため、期間限定でのポイント還元や特定レースでの実質的な払い戻し率アップといった柔軟な施策が現実的です。
プレイヤーとしては、こうした動向を把握し、控除率の変化や特例に注目しながら馬券戦略を立てることが求められます。
控除率から考える「勝てる競馬」の戦略とは
控除率は競馬の収支に大きな影響を与える要素です。
しかし、それだけを理由に「競馬では勝てない」と決めつける必要はありません。
ここでは、控除率の壁を理解したうえで、どのように立ち回れば回収率を上げられるか、実践的な戦略について考えていきます。
的中率×オッズのバランスを意識する
控除率の存在は避けられませんが、それでも競馬で利益を出している人は存在します。
そのポイントのひとつが、「的中率とオッズのバランスを取ること」です。
たとえば、的中率の高い複勝を軸に資金を増やしつつ、オッズの高い馬連や3連複をポイントで狙うといった戦略があります。
このように、安定性と爆発力を使い分けることによって、控除率による目減りを緩和できます。
また、単純に当てやすい馬券ばかりを買うのではなく、自分の予想スタイルに合った券種を選ぶことも重要です。
控除率の数字にとらわれすぎず、期待値の高い買い目を選ぶ意識を持つことで、回収率の向上が期待できます。
狙い目は「的中しにくいが控除率が低い券種」?
控除率だけで判断するなら、単勝や複勝は「お得な馬券」といえます。
しかし、オッズとの兼ね合いを見れば、的中率が低くてもトータルで回収率が高くなるパターンもあります。
たとえば、単勝20.0%の控除率で20倍以上の馬を狙って的中すれば、一撃で大きなリターンが得られます。
もちろん的中率は下がりますが、的中した際の回収率が控除率の不利を超えるような馬券であれば、長期的には利益につながる可能性があります。
また、同じ単勝や複勝でも、人気薄の馬に目を向けることで、他者とのオッズ差を活かした「価値のある買い方」ができます。
控除率が低い券種でも、どの馬を選ぶか、どういう配分で資金を使うかによって、結果は大きく変わってきます。
まとめ|控除率を理解して、無駄な損を減らそう
競馬の控除率は、馬券を購入するうえで無視できない仕組みです。
券種ごとの差や、中央・地方・海外との比較を理解しておくことで、回収率を少しでも有利に保つ戦略が立てやすくなります。
控除率は完全に避けられるものではありませんが、その存在を踏まえて馬券を選ぶことが、長く競馬を楽しむうえで重要なポイントです。
オッズと的中率のバランスを意識し、自分に合った券種や買い方を工夫することで、無駄な損を減らしながら堅実に楽しむことができるはずです。