生産者以外の者が競走馬を購入する方法として、生産者と馬主が直接やり取りする”庭先取引”やセリ市などで購入する”競売取引”などが挙げられます。
そんなセリ市の中でも特に有名なのが、毎年7月上旬に北海道苫小牧市にあるノーザンホースパークで開催されるセレクトセールです。
昨今では、数億円で取引されることも珍しくないため、毎年、落札金額も然り、その動向は大きく注目されています。
そこで今回は、セレクトセールについて紹介していきたいと思います。
日本最大級のセリ市と呼ばれるセレクトセールの仕組みや過去に取引された高額馬などを知ることで、より一層セレクトセールが楽しめると思いますので、ぜひ最後までご一読ください。
セレクトセールの概要
まず、セレクトセールとは、日本競走馬協会が主催するセリ市のことをいいます。
1998年に創設されたセレクトセールは、毎年7月上旬、2日間に渡りノーザンホースパーク内インドア乗馬場特設会場にて、1日目が1歳馬、2日目に当歳馬(0歳馬)の順に開催されます。
なお、セレクトとは上場される競走馬を主催者側で厳選していることを意味しますので、セレクトセールとの名が付きました。
そして、セレクトセールでは、従来のセリ市でなかなか目にすることができなかった良質馬を上場することでサラブレッド流通の活性化を図ることが目的とされています。
それが可能となったのは主催者である日本競走馬協会が、社台グループを中心として設立されたためですので、セール会場もノーザンホースパーク内となっているわけです。
さらに社台グループの牧場から毎年多くの競走馬が上場され、高額で落札された競走馬の大半が、社台グループの生産馬となっていますので、通称『社台のセリ市』と呼ばれたりもします。
ただ、前述しましたが、セレクトセールによって、良血馬の購入が可能となった現在では、サラブレッドの流通の活性化に大きくつながっています。
そう考えると、日本競馬において、社台グループの功績は計り知れないものですね。
【2024年】セレクトセールの開催日
2024年のセレクトセール開催日程は、2024年7月8日(月)と9日(火)が予定されています。
初日の8日に1歳馬、9日には当歳馬で、それぞれ約240頭ずつが上場される予定です。
特に当歳馬では、アメリカの歴史的名馬フライトラインの初年度産駒が初上場されますので、注目したいですね。
セレクトセールは誰でも参加できる?
そんなセレクトセールには、どうやって参加できるの?と思われた方もいらっしゃるかと思いますが、セレクトセールには誰でも入ることはできず、来場者資格という規定があります。
それは、購買者と随行者に限るといったもので、さらには購買者1名につき、随行者は2名までとされています。
また、座席についても定められており、セール会場の座席およびセール会場内の購買者席は、前年に購買された方、また、前年から2年間遡っての2年間で3頭以上購買された方以外は自由席となっています。
よって、購入意思がなく、見学だけでは入ることができないということですね。
セレクトセールの特徴とは?
世界的にみると、セリ市は1歳馬が中心で当歳馬のセリ市は盛んではありません。
それは、生まれて間もない当歳馬に対し、不確定要素が多すぎること、その先の成長過程や競走馬として無事にデビューできるかなど、高いリスクを背負うためです。
しかし、このセレクトセールでは、逆に当歳馬セッションに注力したことで今では、世界トップクラスの”当歳馬セリ市”と認識され、日本のみならず海外のバイヤーが多く来日するほどです。
また、競走馬のセリの仕組みは、その名の通り、公開の場で買い手に競らせて売買する方式となっています。
そして、売り手は、最も高い価格を提示した買い手に売却することになります。
しかし、その価格が売り手の希望価格に満たない場合や上場馬に対してまったく手が上がらない、声がかからなかった場合は『主取り』となり、これは、売主が引き取ることを意味します。
ちなみに、あのサンデーサイレンスもアメリカのセリ市にて、主取りになっています。そのため、上場された全ての馬が売れるとは限りません。
なお、のちほど紹介しますが、これまでの歴代最高額はキングカメハメハ産駒の牝馬をグローブエクワインマネージメントが、驚愕の”6億円”で購入しました。
過去の歴代購入総額トップ5
セレクトセールは、2024年で27回目を迎えますが、これまで数々の馬主が購入され、高額馬については、都度話題になりました。
そこでセレクトセールにおける歴代購入総額トップ5の馬主の方を以下の表にまとめました。
順位 | 馬主名 | 歴代総額 | 主な購入馬 |
1位 | 金子 真人氏 | 180億3,900万円 | ディープインパクト、キングカメハメハ |
2位 | ダノックス | 170億1,950万円 | ダノンデサイル、ダノンエアズロック |
3位 | 近藤 利一氏 | 123億1,705万円 | アドマイヤビルゴ、リアド |
4位 | 里見 治氏 | 115億4,400万円 | サトノソロモン、サトノジェネシス |
5位 | 島川 隆哉氏 | 96億1,450万円 | トーセンダンス |
歴代購入総額のトップは、いわずと知れた馬主・金子真人氏です。
特に2001年には、キングカメハメハを7,800万円で購入し、翌2002年にもディープインパクトを7,000万円で落札するなど、のちの名馬たちを優れた相馬眼で数多く購入されています。
第2位は『ダノン』の冠名で知られている株式会社ダノックスです。
直近では、2022年に当時1歳だった2024年のダービー馬ダノンデサイルを1億3500万円で落札しています。
なお、これまでに50頭以上の億超え馬を競り落としているダノックスですが、特に2022年の1歳馬セッションで落札したモシーンの2021は、のちのダノンエアズロックで落札価格は4億5000万円でした。これは、歴代落札価格の第7位となる記録です。
次に第3位は、セレクトセール歴代第2位となる落札価格5億8000万円のアドマイヤビルゴをはじめ多くの高額馬を落札している『アドマイヤ』の冠名で有名な近藤利一氏でした。
また、第4位は『サトノ』の冠名でお馴染みの里見治氏で、第5位は『トーセン』の島川隆哉氏でした。なお、島川氏は、2002年の当歳セッションにて、G1馬ダンスパートナーやダンスインザダークの下にあたるダンシングキイの2002、のちのトーセンダンスを当時としては、異例の3億3500万円で落札しています。
セリ市の落札額ベスト5
億超えの落札も飛び交うセレクトセール。これまでの歴代最高落札価格は、前述の通り、ディナシーの6億円ですが、第2位以降も気になるところです。
そこで、2023年度までに行われた落札価格のランキングを以下の表にまとめました。
順位 | 馬名(性別) | 父 | 母 | 落札価格 | 落札年度 |
1位 | ディナシー(牝) | キングカメハメハ | トゥザヴィクトリー | 6億円 | 2006年 |
2位 | アドマイヤビルゴ(牡) | ディープインパクト | イルーシヴウェーヴ | 5億8,000万円 | 2017年 |
3位 | コンヴィクションⅡ(牡) | コントレイル | コンヴィクションⅡ | 5億2,000万円 | 2023年 |
4位 | ショウナンアデイブ(牡) | ディープインパクト | シーヴ | 5億1,000万円 | 2020年 |
5位 | ザサンデーフサイチ(牡) | ダンスインザダーク | エアグルーヴ | 4億9,000万円 | 2004年 |
第1位は、前述しました通り、破格の6億円で落札されたディナシーです。
ディナシーは、競走馬だけでなく、繁殖牝馬としても期待されましたが、幼駒時代に事故と遭遇したため、未出走のまま引退しました。また、母としてもここまで重賞勝ち馬を出していない厳しい状況下にあります。
続いて第2位のアドマイヤビルゴは、これまで重賞勝ちはありませんが、3歳時にアンドロメダステータス(L)、5歳でカシオペアステータス(L)とリステッド競走を2勝し、これまで1億3057万円を獲得しています。
ちなみに全兄にあたる1歳上のサトノソロモンも2016年の当歳セッションで最高額となる2億8000万円で落札されました。
次に第3位は、まだ記憶に新しいと思いますが、5億2000万円で落札されたコンヴィクションⅡの2023です。
父コントレイルの初年度産駒で生産牧場のノースヒルズが落札。代表の前田幸治氏が福永祐一厩舎に開業祝として預託すると発表したことは大きな話題を呼びました。
そして、第4位は、きょうだい馬もセレクトセールでの高額取引が目立つショウナンアデイブです。そのきょうだい馬にあたる半弟のムジェロは2億1000万円、ショウナンラピダスも2億2000万円の値が付きました。
ちなみにショウナンアデイブの獲得賞金は、2024年6月末時点で7,427万円となっています。
第5位も落札当時は、大きな話題となったザサンデーフサイチです。母は日本が誇る超名牝エアグルーヴで、一族には活躍馬が多数います。
ただ、ザサンデーフサイチ自身は、重賞勝ちもなく、期待を大きく裏切る格好となりましたが、引退後には、種牡馬入りを果たし、地方重賞馬を輩出しました。
なお、2023年時点で歴代高額落札馬ランキングに入った馬のG1勝利はありませんので、高額馬イコール走るとは断言できないところも競馬の面白さの1つですね。
まとめ
今回は、セレクトセールについて紹介しました。
改めて、値段に関係なく競走馬を購入する馬主の存在が日本競馬を支え、競馬ファンをはじめとする多くの方に夢と感動を与えてくれていることを実感しました。
そんな馬主の方には感謝するとともに、2024年のセレクトセールでも、どの馬主がどれだけの高額馬を取引するのか注目したいですね。