競馬ファンなら一度は目にしたことがあるはずです。
競走馬のプロフィール欄に並ぶ「1月生まれ」「2月生まれ」といった早い誕生日。
実は、日本で活躍する多くの競走馬は1月から5月の間に誕生しています。
では、なぜこれほどまでに早生まれが多いのでしょうか?
本記事では、競馬界における年齢の数え方や、競走馬育成の実情、さらにクラシック路線との関係から、早生まれが有利とされる背景をわかりやすく解説します。
競走馬の年齢は1月1日で加算される

競走馬の世界では、生まれた日がいつであっても、すべての馬が毎年1月1日に一斉に歳をとるという特有のルールがあります。
この制度は国際的にも共通しており、競走馬の年齢を簡潔に管理し、レース編成を整えるために導入されています。
そのため、同じ2歳馬といっても、実際の月齢には大きな差があるのが現実です。
詳細について解説します。
実年齢ではなく競走年齢が基準
競馬では競走年齢が重要で、カレンダー上の1月1日がすべての馬の誕生日とみなされます。
たとえば、2022年1月1日生まれの馬も、同年5月生まれの馬も、2023年1月1日には一律で1歳として扱われるのです。
これはレース条件や出走資格の管理をスムーズにするためですが、月齢が異なる馬を同じ年齢で競わせることになるため、実質的に成長の早い馬が有利になる構造になっています。
少しでも早く生まれた方が肉体的に有利
同じ1歳馬でも、実際の月齢に3~4カ月の差があると、筋力や体格、精神面での成熟度にも差が出ます。
特に若駒戦やクラシック戦線では、調教の進み具合や仕上がりの早さが勝敗を左右する要素となるため、1月や2月に生まれた馬のほうが、5月生まれの馬よりも完成度が高くなる傾向があります。
そのため、少しでも早く生まれた方が競走馬として有利に働くと考えられているのです。
日本のサラブレッドが3〜4月に多く生まれる理由

競走馬の誕生時期を決める最大の要因は、種付け(交配)のタイミングと妊娠期間です。
多くのサラブレッドが3〜4月に誕生するのは、馬の繁殖サイクルが自然の光と深く関係しているからです。
繁殖の準備は冬の終わりから本格化し、11カ月の妊娠期間を経て、春に出産のピークを迎えるのが一般的な流れとなっています。
詳細について解説します。
交配は2月中旬~6月上旬が基本
サラブレッドの繁殖期は自然の季節変化に強く左右されます。
日照時間が長くなる春に発情が促進されるため、種付けのピークは2月中旬から6月上旬に集中します。
この期間に交配された繁殖牝馬は、およそ11カ月後に出産するため、子馬の誕生日は翌年の1月末から5月頃にかけて集中するのです。
とくに早生まれを狙う生産者は、2〜3月に種付けを済ませるよう計画しています。
妊娠期間は約11カ月
馬の妊娠期間は平均して340日、約11カ月とされています。
たとえば、3月に種付けを行った場合、出産は翌年の2月末から3月上旬が目安となります。
この長い妊娠期間を考慮し、生産者はクラシック戦線で活躍できるよう、なるべく早い時期に種付けを完了させようとします。
その結果、自然と競走馬の誕生日は春先、つまり3月〜4月に集中するのです。
早生まれのメリットとは?

競走馬にとって早生まれであることは、単なる偶然ではなく明確なアドバンテージとなります。
特にデビュー前後の育成段階や、2歳戦・クラシック路線においては、成長スピードが結果に直結するため、早く生まれた馬のほうが実戦で有利に働く場面が多くなるのです。
ここからは、さらなる早生まれのメリットについて解説します。
2歳戦から仕上がりやすい
JRAでは、夏の2歳新馬戦から実戦が始まりますが、この時点で馬の肉体的な成長はまだ発展途上です。
そのため、1月や2月生まれの馬は他馬より月齢が進んでおり、筋力や精神面の成熟度で先行できる傾向があります。
特にスピード勝負になりやすい短距離の2歳戦では、仕上がりの早さが勝敗を大きく左右します。
クラシック戦線に間に合わせやすい
桜花賞や皐月賞、日本ダービーなどのクラシック競走は3歳の前半に実施されます。
この時期に馬体が完成しており、調教も順調にこなせる早生まれの馬は、本番までにしっかりと仕上げることができます。
一方、遅生まれの馬は成長が追いつかず、デビューが遅れたり調整に苦労するケースもあり、クラシックで勝ち負けするには早生まれのほうが有利とされています。
1月生まれが少ない理由

理論的には1月1日生まれの競走馬が最も年齢的に有利ですが、実際には1月生まれの馬はあまり多くありません。
それは、生き物としての馬の生理的な特性や、自然環境との関係が深く関わっています。
なぜ、1月生まれが少ないのか、解説します。
繁殖牝馬の発情タイミングと関係
馬は季節繁殖動物と呼ばれ、日照時間の長さによって発情周期が左右されます。
冬至に近い12月〜1月は日照時間が最も短く、繁殖牝馬の発情が起こりにくい時期です。
そのため、この時期に種付けして1月上旬に出産させることは、繁殖管理上きわめて難易度が高く、現実的ではありません。
1月に生まれる馬もいますが、その数はごく少数にとどまります。
まとめ|早生まれが多いのは合理的な戦略

競走馬に早生まれが多いのは、単なる偶然ではなく、年齢制度・レース体系・生理的な繁殖条件が絡み合った結果です。
1月1日を基準に年齢が加算される競馬界では、同じ1歳馬でも月齢差が成績に直結することから、生産者や育成牧場は計画的に早生まれを目指します。
また、クラシック路線を見据えた仕上げの早さも重視されるため、早生まれは育成・実戦の両面でアドバンテージを持つ存在といえるでしょう。
生年月日も馬券戦略では意外と役立つことがあります。
予想の際は、生年月日も参考にしてみると、新たな競馬の面白さに気付けるかもしれませんよ。
