競馬ファンの間で「帯(おび)」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。
これは馬券に関する俗称で、100円が100万円以上になるような夢の高配当を指す言葉です。
今回は、初心者〜中級者に向けて、この「帯馬券」の意味や狙い方、実際の高額的中例、払い戻しの現実、税金の扱いなどを網羅的に解説します。
大金を手にするロマンとともに、注意すべきポイントもしっかり押さえていきましょう。
競馬の帯の意味

競馬における「帯(帯馬券)」とは、払い戻し金額が100万円を超える高額的中馬券のことです。
読み方は「おび」で、由来は札束を束ねる紙帯(帯封)から来ています。つまり、的中馬券の払い戻し金を現金で受け取る際に100万円単位の札束に銀行の帯封が巻かれることから、「帯を取る」「帯馬券を当てる」などと表現されます。
「帯」と呼ばれる明確な金額の定義はありませんが、一般的には一つの馬券で100万円以上の払い戻しを得た場合に使われます。
例えば100円で購入した馬券が100万円以上になれば「帯馬券」ですし、1点1万円の馬券で合計100万円超の払い戻しを得ても「帯を取った」と言えます。
ただし多くの場合、競馬ファンは100円あたりのオッズが10,000倍(100円が100万円)を超えるような破格の当たりに対して「帯」という言葉を用いており、10万円台の配当(万馬券)との差別化をしています。万馬券(まんばけん)が100円で1万円以上の配当を指すのに対し、帯馬券はその10倍のスケールというわけです。

競馬の帯馬券の取り方(狙い方)

「帯馬券を取るにはどうすればいいのか?」初心者であれば一度は考えるでしょう。
結論から言えば、帯馬券を狙って当てるのは非常に難しく、プロの予想家であっても狙って取れるものではありません。
とはいえ、高額配当が生まれやすいパターンや券種を知っておくことで、“帯チャンス”に近づくことはできます。
ここでは帯馬券を生む条件や高配当を狙いやすい券種、買い方のコツを解説します。
高配当が出やすいレースの条件を見極める
まず、波乱が起こりそうなレースを見極めることが重要です。
オッズを見て人気が割れているレースや、実力が疑わしい危険な人気馬がいるレース、反対に妙味のある穴馬が複数存在しそうなレースは荒れる要素があります。
たとえば出走各馬の単勝オッズが接近していて突出した1番人気が不在の場合、ファンの票が分散しているため波乱の可能性が高まります。また、キャリアの浅い新馬戦や条件戦、道悪など不確定要素の多いレースも高配当が飛び出しやすい条件です。
さらに、出走頭数が多いレースほど組み合わせが膨大になり配当も跳ね上がりやすい傾向があります。フルゲート18頭立てのレースでは、三連単の全組み合わせは4,896通りにもなります。
少頭数より多頭数のレースの方が高配当の期待値は上がるため、帯を狙うならできるだけフルゲートに近いレースを狙うのも一手です。
もちろん、その分的中は難しくなりますが、帯馬券の大半は大穴馬が複数絡むケースで生まれている点を念頭に置きましょう。
高額配当が狙える券種を選ぶ
馬券の種類も帯への近道かどうかに関係します。
ズバリ、もっとも高配当が期待できる券種はWIN5です。WIN5は指定された5レースすべての勝ち馬を当てるという難しい券種ですが、その分しばしば配当が数千万円から億単位になります。
次いで現実的なのは三連単(1着から3着まで着順通り当てる馬券)です。三連単は1レース完結の券種としては最高峰の難度で、しばしば100円で数百万円以上の払い戻しを生みます。
3番目は三連複(着順を問わず当たり馬3頭をすべて当てる馬券)で、三連単より的中しやすい反面、配当はやや抑えめですが、それでも大穴が絡めば帯に届く可能性があります。
もちろん、単勝や馬連などでも大量購入すれば払い戻しが100万円を超えることはあります。
しかし一般的には、少額(例えば100円)で帯を狙うならWIN5や三連単といった高配当が見込める券種を選ぶ必要があります。実際、帯馬券的中報告の多くはWIN5・三連単・三連複によるものです。

資金配分と買い方の工夫
帯を本気で狙うなら、ある程度の資金力と買い目の工夫も必要になります。
高配当を生むには複数の人気薄が絡むケースが多いため、「この穴馬とこの穴馬が来たら帯になりそうだ」という組み合わせを多点買いで拾っていく作業になります。
例えば三連単なら軸馬を決めた上で相手に穴馬を手広く流す、あるいは思い切って大穴同士のボックスを買ってみるといった戦略です。
WIN5でも、荒れそうなレースは人気馬をあえて外し中穴〜大穴まで複数印を打つなど、帯を意識した買い目構成があります。
ただし闇雲に点数を増やせば当然コストも増えます。
高額配当狙いには相応の投資額が必要という現実も覚えておきましょう。
資金に限りがある場合は、帯狙いの馬券は予算の一部に留め、他は手堅い馬券に充てるなどリスクヘッジも重要です。いずれにせよ、帯馬券は狙って当てられるものではなく結果的についてくるものと考え、あまり過度な期待をせず楽しむことが大切です。
実際、競馬歴が長いプロでも10,000倍超の配当を手にするのは滅多にないとされています。
100円→帯馬券の例【実際の高額的中エピソード】

「本当に100円が100万円以上になることなんてあるの?」と思う方もいるでしょう。競馬の歴史を紐解くと、100円が百万円台どころか数千万円規模になった例も存在します。
ここでは2025年4月までの間に実際に記録された高額払い戻しの例をいくつか紹介します。
史上最高の帯馬券(中央競馬)
JRAにおける歴代最高配当は、2012年8月4日の新馬戦で飛び出した2,983万2,950円(100円あたり)という三連単の払戻金です。
勝利したのは14番人気のミナレットで、2~3着にも14番人気の馬が入線したため、オッズは実に29,832倍にも達しました。これは100円が約3000万円になった計算で、まさに伝説的な帯馬券です。
G1レースでの帯馬券
大レースでも波乱が起きれば帯馬券が誕生します。
例えば2008年の秋華賞では、11番人気のブラックエンブレムが優勝した結果、三連単の配当が1,098万2,020円(約10,982倍)に達しました。
また2015年のヴィクトリアマイルでも5番人気ストレイトガールが勝ち、3着にも最低人気のミナレット入ったため三連単2,070万5,810円(約20,705倍)という高配当になっています。
このように、G1でも人気馬総崩れになれば一気に配当は跳ね上がり得るのです。
ちなみにミナレットは先ほど紹介した新馬戦の勝ち馬でもあるため、現在では穴馬の代名詞的存在となっています。
毎年出る数百万円超の払戻
帯馬券級の払い戻しは珍しいとはいえ、毎年のように100円で数百万円〜数千万円という的中は生まれています。
実際、2024年の中央競馬でも8月25日の新潟2R(未勝利戦)で三連単866万5,130円、12月7日の京都2R(未勝利戦)で767万6,210円など、100円が数百万円台になるケースが複数記録されています。
条件戦や新馬戦といった下級条件で人気馬総崩れになった場合や、地方競馬ではさらに高額配当が飛び出すこともあります。
WIN5史上最高配当
単一の馬券として過去最大の払い戻し額は、やはりWIN5で生まれました。
2021年3月11日のWIN5にて的中票わずか1票という大波乱となり、払い戻し金は5億5,444万6,060円(100円あたり)に達しWIN5史上最高記録を更新しました。
わずか100円の投票が約5億5千万円になった計算で、競馬の控除率上理論上のほぼ上限に近い驚異的な配当です。
このように夢のような的中を果たした人も現実に存在しますが、もちろん確率的には極めて低い(2021年の例では約792万票中1票)ことは肝に銘じておきましょう。
これらのエピソードからも分かるように、「帯」は確かに存在します。ネット上の掲示板(なんJなど)でも、誰かが「帯取った!」と書き込めば大いに話題になり、多くの祝福と驚きのコメントが寄せられます。
X(旧Twitter)でも帯封付きの札束や的中馬券の画像とともに高額的中報告が流れてくることがあり、いいねが殺到します。
しかし、その裏側には地道な研究や大量買い、あるいは運試しの果ての偶然があることを忘れてはいけません。
帯馬券の実態と払い戻し方法

「帯封付きの札束で本当に払ってもらえるの?」――帯馬券を的中させた人が直面するのが払い戻しのシーンです。
高額払い戻しと聞くと「身分証を提示させられるのでは?」「別室に連れて行かれるのでは?」と心配になるかもしれませんが、JRAの場合、100万円以上の払い戻しでも特別な手続きはなく、自動払戻機ではなく有人の窓口で現金を受け取るだけです。
実際に競馬場やウインズで100万円超の的中券を提示すると、担当の係員に窓口へ案内され、その場で現金を手渡しされます。
身分証明書の提示も不要で、公営競技である競馬は法律上払い戻し時に課税されないため、その場で税金が差し引かれることもありません。
払い戻し金が多額の場合、帯封付きの束を含め複数の札束で渡されます。実際に高額払い戻しを受け取った人の証言では、「自動払戻機ではなく小さな有人窓口から、人の手によって帯封付きの札束が出てくるのは感慨深いものだった」と語られています。
係員が現金を数えて用意し、「おめでとうございます」とともに束を渡される光景は、競馬ファンにとって憧れの瞬間と言えるでしょう。
受け取った現金は、そのまま封筒に入れてもらえる場合もありますが、基本的には自己責任で持ち帰ることになります。JRAでは高額払い戻し専用の警備サービス等は特に用意していません。
希望すれば警備員が出口まで付き添ってくれる場合もあるようですが、必ずではありません。したがって、大金を手にした際は周囲に悟られないよう注意し、可能ならすみやかに銀行など安全な場所に預けることをおすすめします。
なお、最近は即PATなどインターネット投票で馬券を購入しているケースも多く、その場合高額配当も自動的に自分の口座へ振り込まれます。
ネット投票なら現金を持ち歩くリスクは避けられますが、「帯封を握りしめる」体験はできないかもしれません。
ちなみに、競馬以外の公営競技(競輪・競艇・オートレース)でも基本的な払い戻し方法は同様です。
宝くじは当選金が高額になると後日振込対応になりますが、競馬はその場で現金化できてしまう点がスピーディーと言えます。
こうした「帯封の札束」を受け取る経験は、競馬ファンにとって最高の喜びの一つでしょう。
帯馬券と税金の知識

忘れてはならないのが税金の問題です。
競馬の払い戻し金は一時所得として税法上扱われるため、高額配当を得た年には確定申告が必要になる場合があります。
具体的には、一時所得には年間50万円までの特別控除があり、(収入金額 - 賭け金など支出 - 50万円)× 1/2という計算式で課税対象額が算出されます。
この課税対象額がプラスになれば他の所得と合算して所得税・住民税が課税される仕組みです。
例えば100円の馬券で100万円の払い戻しを得た場合を考えてみましょう。
払い戻し100万円から的中馬券購入費100円を差し引くと約999,900円の利益となり、そこから特別控除50万円を適用すると約499,900円。この半分の約249,950円が一時所得として課税対象となります(所得税の計算上、他の所得と合算)。
一方、払い戻し額が50万円以下であれば控除内に収まるため、結果的に税金はかかりません。
つまり、一度に得た利益が50万円を超えるかどうかが申告の目安となります。
注意したいのは、ハズレ馬券は基本的に経費と認められない点です。
一時所得の計算では、その的中馬券を購入するため直接要した費用(賭け金)のみ控除できます。
日頃から多数の馬券を購入していても、当たりに繋がらなかった馬券代は経費計上できないのです。過去に、大量購入で的中を積み重ねていた競馬ファンが「外れ馬券も必要経費」と主張して裁判になった事例がありますが、営利目的かつ継続的な投資と認められる特殊な場合を除き、通常の趣味の範囲では外れ馬券は経費にできません。
したがって“帯”レベルの払戻金を手にした際には、その馬券の購入額程度しか差し引けないため、思った以上に大きな課税所得が発生し得ることに注意しましょう。
では、仮に帯馬券を当てたものの申告しなかったらどうなるか?
この場合、基本的には税務署に把握される可能性が高いと言えます。
特に即PAT等のインターネット投票で購入・的中した場合、その履歴はJRAおよび銀行口座に残るため、当局が調査すれば高額払戻金を受け取った事実はすぐ判明します。
また、現金で受け取った場合でも、SNS等で自慢するとそれを手掛かりに税務署から連絡が来るケースもあります。事実、WIN5で数億円規模の払戻金を得ながら申告せず、後に発覚して追徴課税を課された例も報道されています。
2018年にはWIN5で計約2億8千万円を的中させた人が約1億6千万円の所得を申告せず、発覚したというニュースがありました。このように高額配当を得たら必ず確定申告を行うこと、そして無用な発信で目を付けられないよう注意することが重要です。
税率自体は他の所得と同じ累進課税(所得税+住民税)となりますが、帯馬券クラスの利益が出ると高額の税負担となり得ます。後になって「せっかく帯を取ったのに税金でガッポリ持っていかれた…」と嘆かないためにも、最初から税金分をプールしておく、あるいは思い切って翌年のためにふるさと納税等で節税する、といった対策も検討しましょう。
いずれにせよ「払戻金=手取り」ではない点を覚えておいてください。
帯馬券を的中させた喜びも、一時所得の計算書類を前にすると少し薄らいでしまうかもしれませんが、そこは嬉しい悲鳴というものです。

エピソード:帯馬券にまつわる話あれこれ

帯馬券は競馬ファンにとって憧れですが、その周辺には様々なエピソードが存在します。
ここでは、高額的中を巡る興味深い話をいくつか紹介します。
度々帯を射止めた強者
あるギャンブル仲間に、単勝や複勝で大金を張って帯封ゲットを何度も経験した強者がいました。
彼は毎回数十万円単位の軍資金を用意しては勝負し、見事に何度も帯馬券を射止めたのです。
高額払い戻しの際は決まって友人を誘って平日の競馬場へ行き、有人窓口で帯封付き札束を受け取るのがお約束でした。
友人いわく「小さな窓口から出てくる帯封付きの現金は、他人事ながら感慨深いものがあった」そうで、彼は札束を鷲掴みにするとニヤリと笑って祝いに万札を何枚か渡してくれたと言います。
まるで映画のワンシーンのようですが、現実にそうした「帯」を掴む猛者もいるのです(※なお、この人物はその後消息不明になっており、勝ち続けることの難しさも感じさせます…)。
ビギナーズラックの帯
一方で、「競馬を始めて最初の週末に帯馬券を当ててしまった」という幸運すぎる初心者の話も耳にします。
たまたま買った三連単が大穴決着で100円が120万円に化けた、といったケースです。
周囲からは羨望の眼差しで見られますが、当人は価値がピンと来ず帯封の札束をカバンに突っ込んで持ち帰ったなんて話も…。
もっとも、そういった方がその後も順調に勝ち続けられるかというと別問題です。
先ほどの猛者の友人も「自分はビギナーズラックで一度帯封を手にした以外、まるで縁がない」と語っていました。
最初の帯体験があまりにできすぎると、後の現実とのギャップに苦しむかもしれません。
ネット時代の帯報告
昨今ではX(旧Twitter)やブログ、YouTubeなどで帯馬券的中の報告を見る機会も増えました。
YouTuberがWIN5を的中させて何百万もの払戻金を公開したり、競馬系ブログで「◯◯記念で帯取りました!」と画像付きで報告したりと、ネット上でも帯封が拝めます。
しかし前述の通り、SNSでの自慢は税務署のチェック対象にもなり得ます。
高額的中は嬉しいものですが、公言するリスクもあると知っておきましょう。また、ネット上には的中自慢の嘘や誇張も混じります。
画像加工で払い戻し画面を偽造する例もあるため、何でも鵜呑みにしないことも大切です。
実際に帯馬券を当てた人ほど慎重で、ひっそりと喜びを嚙み締めているものかもしれません。
競馬の帯馬券のまとめ

競馬における「帯(帯馬券)」は、100円が100万円以上になるような超高額配当の象徴です。
初心者にとっては夢物語のように聞こえるかもしれませんが、実際に競馬では万が一にもそうしたドラマが起こり得ます。
帯馬券を手にした瞬間の喜びは計り知れず、多くのファンが一度はその快感を味わってみたいと願うものです。
しかし、帯馬券は狙って簡単に当たるものではないことも事実です。
高配当が生まれる背景には、人気馬の凡走や穴馬の激走といった偶発的要素が絡み、予測は非常に困難です。
帯を狙うならばレース選びや券種選択、買い目の工夫などポイントはありますが、最終的には運の要素が大きいでしょう。
「競馬で一発当てて人生を変えたい」というロマンは競馬の魅力ですが、期待しすぎず余裕資金の範囲で楽しむことが肝要です。
そして、幸運にも帯馬券を的中させた際には、払い戻し方法や税金面の対応まで含めて冷静に対処しましょう。
高額払い戻しはその場で現金を受け取れますが、防犯と資金管理に注意が必要です。また、一時所得として後日の申告・納税義務がある点も忘れずに。せっかく掴んだ帯封を無用なトラブルで失わないよう、浮かれず計画的に扱いましょう。
競馬の醍醐味は何と言ってもこの大穴的中の夢にあります。
万馬券、そして帯馬券…ロマンあふれる高配当への挑戦も競馬の楽しみ方の一つです。
知識を蓄えつつ運にも恵まれれば、あなたもいつか「帯」を手にする日が来るかもしれません。その日を夢見て、競馬を末永く健全に楽しんでください。