青森産馬とは?重賞やG1でも活躍する名馬の軌跡を振り返る

青森産馬とは?

競走馬の産地と言ったら北海道が有名ですが、実は本州でも九州や青森、そして関東でも競走馬の生産は行われています。

数は決して多くないものの、その中には中央競馬での活躍を果たした名馬やG1タイトルに輝いた馬も存在します。

本記事では、青森産馬の特徴や、輝かしい成績を残した実力馬たち、そして2025年現在青森を支える種牡馬や注目の現役馬について詳しく解説していきます。

目次

青森産馬とは?馬産地としての特徴

青森産馬とは?

競走馬の生産地といえば北海道が圧倒的なシェアを占めていますが、実は青森県にも競走馬の生産を行っている牧場が存在します。

数こそ少ないものの、青森では独自の育成スタイルや環境を活かして、中央競馬で通用する実力馬が誕生してきました。

最初に、青森産馬の特徴について見ていきましょう。

青森県での馬産の歴史と現状

青森県は、北海道や九州と比べると馬産地としての知名度は高くありません。

しかし、競走馬の生産自体は古くから行われており、県内各地域で競走馬の生産が行われています。これらの牧場は、家族経営の小規模なスタイルが多く、限られたリソースの中で一頭一頭を丁寧に育てる方針を貫いています。

地理的には北海道に近く、気候も冷涼で馬にとって過ごしやすい環境が整っています。

また、北海道よりも機構が穏やかで雪も降らないため、昼夜放牧ができるメリットもあります。

青森では派手さはないものの、息の長い馬を育てる環境が培われてきました。

少数精鋭の育成力が武器

青森の牧場は1年あたり数頭程度しか生産しないケースがほとんどです。

競走馬の量産とは無縁の環境ですが、その分、生産者が1頭ずつに注ぐ時間と手間は極めて濃密です。

馬体の成長過程や性格の変化を細かく把握し、無理のない調教や管理が行われています。

その結果、青森産馬はタフで崩れにくく、持久力に優れた馬が多いと言われています。

競走馬としての「華やかさ」よりも、「実戦での粘り強さ」や「安定感」を武器に活躍している青森産馬も少なくありません。

北海道との交流・連携も

現在、青森の生産者たちは、北海道の大手牧場と連携を取りながら、生産・育成の質の向上に取り組んでいます。

たとえば、種付けシーズンには繁殖牝馬を北海道の種牡馬スタンドに送るケースもあり、血統面での強化が進められています。

また、生産馬の一部は北海道で育成され、デビュー前の調教を受けるなど、柔軟な役割分担も行われています。

こうした交流は、青森が孤立した地方ではなく、中央競馬や北海道と連携しながら地道に成果をあげている馬産地であることを物語っています。

G1や重賞で活躍した青森産馬たち

G1や重賞で活躍した青森産馬たち

全国の競馬ファンにとって「青森産馬」という響きはまだ馴染みが薄いかもしれませんが、実は重賞やG1レースで結果を残した実力馬も存在しています。

青森の小規模牧場から中央の舞台に駆け上がった名馬たちは、産地としての可能性を証明する存在です。

ここでは、青森の誇りともいえる代表的な活躍馬を4頭紹介していきます。

グリーングラス

生年月日1973年4月5日
性別
インターメゾ
ダーリングヒメ
母父ニンバス
生産牧場諏訪牧場
戦績26戦8勝
主な勝ち鞍菊花賞 1976年
天皇賞(春) 1978年
有馬記念 1979年
アメリカジョッキークラブカップ 1977年
日本経済賞 1977年
獲得賞金3億2,845万1,400円

1970年代後半に活躍した馬で、テンポイントやトウショウボーイと並んで「TTG」という3強の一角として台頭していました。

現役時代は最後の一冠である菊花賞を勝利し、古馬になってからも長く活躍、引退レースとなった有馬記念も勝利し、有終の美を飾っています。

引退後、種牡馬入りしてからはライバルトウショウボーイほど産駒に恵まれませんでしたが、種牡馬引退後は佐賀県に移り、28歳まで余生を全うしました。

タムロチェリー

生年月日1999年4月2日
性別
セクレト
ミスグローリー
母父サクラユタカオー
生産牧場諏訪牧場
戦績16戦3勝
主な勝ち鞍阪神JF(G1) 2001年
小倉歳ステークス(G3) 2001年
獲得賞金1億41万3,000円

タムロチェリーは2001年の阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)を制した牝馬です。

2024年時点で、グレード制導入後に唯一G1レースを勝利した青森産馬として、青森産馬の可能性を広げました。

ただし、翌年以降は2歳のころのパフォーマンスを引き出せずに引退しています。

繁殖牝馬としては3頭の仔に恵まれ、2番仔の屯ブライトの仔であるミライヘノツバサが2020年のダイヤモンドステークスを最低人気で優勝しました。

サルサディオーネ

生年月日2014年5月3日
性別
ゴールドアリュール
サルサクイーン
母父リンドシェーバー
生産牧場荒谷牧場
戦績55戦13勝
主な勝ち鞍日本テレビ盃(Jpn2) 2021年
さきたま杯(Jpn2) 2022年
マリーンカップ(Jpn3) 2020年
クイーン賞(Jpn3) 2020年
スパーキングレディーカップ(Jpn3) 2021年
獲得賞金3億5,572万7,000円

サルサディオーネは交流重賞で活躍した逃げの牝馬で、地方交流重賞を中心に5勝を挙げたダートの実力馬です。

得意の逃げで牡馬に引けを取らない活躍を見せた上、最終的には9歳まで活躍しています。

息の長い活躍を見せたと同時に青森産馬の底力を競馬界に示しました。

引退後は北海道の様似町にある牧場で繁殖牝馬となっています。

ミライヘノツバサ

生年月日2013年4月27日
性別
ドリームジャーニー
タムロブライト
母父シルバーチャーム
生産牧場諏訪牧場
戦績25戦5勝
主な勝ち鞍ダイヤモンドステークス(G3) 2020年
獲得賞金1億4,486万8,000円

先ほど取り上げたタムロチェリーの孫にあたるミライヘノツバサは、2020年のダイヤモンドステークスの勝ち馬です。

ダイヤモンドステークスは16頭立ての16番人気、単勝オッズ325.5倍の最低人気でしたが、最後の直線では内から進出してメイショウテンゲンとの叩き合いをハナ差で勝利し、優勝しました。

2024年終了時点で、重賞レースにおける歴代3番目の高配当を叩き出したと同時に、近走目立たない中での復活で競馬史にその名前を刻んでいます。

2020年に引退し、その後は東京競馬場で誘導馬となっています。

【2025年版】青森で馬産業を支える種牡馬

青森で馬産業を支える種牡馬

青森県の馬産地は、規模こそ小さいものの、質の高い競走馬を送り出してきた背景には「優れた種牡馬の導入」も欠かせません

2025年現在、青森では中央で活躍した実力馬たちが種牡馬として繋養されており、次世代のスター誕生に向けて静かに準備が進んでいます。

ここでは、青森で新たな命を繋ぐ主要な種牡馬たちを紹介します。

ウインバリアシオン

生年月日2008年4月10日
性別
ハーツクライ
スーパーバレリーナ
母父Storm Bird
生産牧場ノーザンファーム
戦績23戦4勝
主な勝ち鞍青葉賞(G2) 2011年
日経賞(G2) 2014年
獲得賞金5億7,994万6,000円

ウインバリアシオンはノーザンファームの生産馬で、現役時代はG1の勝利こそありませんでしたが、ダービー・菊花賞・天皇賞(春)・有馬記念で2着入線した実力馬です。

このうち、天皇賞(春)を除いた3戦はオルフェーヴルのために敗れており、生まれる時代がオルフェーヴルと被らなければ、クラシックタイトルかグランプリホースの座を手にしていたかもしれません。

引退後は、青森での種牡馬入りが決まり、2025年時点でも種牡馬として活躍しています。

サブノジュニア

生年月日2014年3月15日
性別
サウスヴィグラス
サブノイナズマ
母父カコイーシーズ
生産牧場藤沢牧場
戦績44戦12勝
主な勝ち鞍JBCスプリント(Jpn1) 2020年
獲得賞金1億7,562万円

大井の生え抜きであるサブノイナズマは南関を代表する短距離馬として活躍していました。

実績を重ねてからは、地方重賞や交流重賞にも積極的に参戦し、2020年のJBCスプリントは8番人気の低評価でしたが、マテラスカイやコパノキッキング、モズスーパーフレア相手に勝利し、金星を手にしています。

引退後は北海道で種牡馬入りしていましたが、2025年から青森に渡りました。

スピルバーグ

生年月日2009年5月12日
性別
ディープインパクト
プリンセスオリビア
母父Lycius
生産牧場社台ファーム
戦績18戦6勝
主な勝ち鞍天皇賞(秋)(G1) 2014年
獲得賞金3億2,920万1,000円

ディープインパクト産駒のスピルバーグは2014年の天皇賞(秋)の勝ち馬です。

得意の東京コースで3連勝してオープン入りし、天皇賞(秋)は重賞未勝利馬ということもあって5番人気でしたが、三冠牝馬のジェンティルドンナ相手に勝利し、初重賞&初G1制覇を成し遂げています。

なお、2024年時点で天皇賞(秋)を制したディープインパクト産駒はスピルバーグ1頭のみです。

引退後は北海道で種牡馬入りしていましたが、2022年に青森の東北牧場に移動し、現在も青森で供用されています。

青森産馬の現状:青森産馬は強い?

青森産馬は強い?

青森産馬と聞くと「数が少ないから目立たない」「中央では厳しいのでは?」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、少数ながらも着実に実績を積み上げてきたのが青森産馬の真の姿です。

ここでは、生産頭数という量の面と、競走成績や育成技術といった”の面、両方から青森産馬の今を掘り下げてみましょう。

青森産馬の年間生産数は100に満たない

日本における2024年のサラブレッド生産頭数は7,925頭。このうち、北海道産馬が7,742頭で全体の97.7%を占めています。

対して、青森県で生まれたサラブレッドはわずか76頭(約1.0%)にとどまっており、生産数ではごく一部の存在にすぎません。

ちなみに、九州産馬も89頭と同様に少数派です。こうした数字だけを見ると、青森はマイナーな産地と思われがちですが、それでも重賞勝ち馬やG1馬が登場している点が、この地域の底力を示しています。

青森の生産・育成レベルは高い

青森県は全国の競走馬生産頭数のわずか1%前後にとどまっていますが、これまでに多くの実力馬を輩出してきた点は注目に値します。

1976年の菊花賞を制したグリーングラスを皮切りに、翌1977年にはカネミノブが有馬記念を優勝しました。その後も、ビゼンニシキ、ドルフィンボーイ、マイネレーツェルなど、青森県から多くの重賞勝ち馬が誕生しました。

近年は生産規模の縮小に伴い勢いこそ落ち着いていますが、2004年にはエスプリシーズが川崎記念を制し、2016年にはキョウエイギアがジャパンダートダービーを制覇しています。ちなみに、その母ローレルアンジュも青森産馬としてエンプレス杯を制した実績があります。

さらに、交流重賞5勝を挙げた牝馬サルサディオーネは9歳まで第一線で走り抜き、2020年のダイヤモンドステークスでは、ミライヘノツバサが16番人気・単勝325.5倍という大波乱の勝利を演じました。

こうした例からも、少数ながら重賞級の馬が安定して生まれていることがうかがえます。

北海道の大規模牧場のように馬質に恵まれているわけではありませんが、それでも青森の育成環境と技術の高さが、堅実な実績につながっているのです。

生産頭数こそ少ないものの、青森の馬産レベルは確実に維持されているといえるでしょう。

まとめ:青森産馬の可能性に注目しよう

青森産馬のまとめ

青森県は競走馬の生産頭数こそ少ないものの、長年にわたって中央・地方問わず活躍馬を輩出してきました。

名馬グリーングラスをはじめ、近年ではキョウエイギアやサルサディオーネなど、実績を残した馬が続いています。

2025年現在では、ハヤテノフクノスケのような将来有望な現役馬も登場し、青森の馬産地としての存在感は静かに広がりつつあります。

数では北海道に劣りますが、質は負けていない青森産馬の今後の活躍に注目したいです!

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