近年、日本馬が海外競馬に挑戦する機会が増えました。
その背景には、国際競走の距離感が縮まったことや、海外育成環境の整備に加え、2022年以降の急激な円安による海外競馬の賞金優位性などが挙げられます。
世界には数多くのレースが存在しますが、中には驚くほど高額な賞金が設定されているレースも存在します。
そこで、この記事では世界中の競馬レースの中から、1着賞金が高いレースをランキング形式でまとめました。世界のレース賞金額にご興味がある方は、ぜひご一読ください。
※ 2025年2月21日の為替レートで、1アメリカドル=150円、1オーストラリアドル=95円、1ユーロ=156円で計算しています。
競馬のレース賞金ランキングトップ10
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2025年時点で世界のレースランキングトップ10は下記の通りです。
- サウジカップ
- ドバイワールドカップ
- ジ・エベレスト
- ブリーダーズカップクラシック
- ドバイシーマクラシック
- ジャパンカップ
- 有馬記念
- ゴールデンイーグル
- メルボルンカップ
- 凱旋門賞
それぞれのレースを解説します。
1位:サウジカップ
開催国 | サウジアラビア |
開催競馬場 | キングアブドゥルアジーズ競馬場 |
創設 | 2020年 |
グレード | G1 |
コース | ダート1,800m |
出走条件 | 北半球産4歳以上 南半球産3歳以上 |
負担重量 | 4歳以上:57kg 南半球産:3歳 牝馬2キロ減 |
総賞金 | 20,000,000アメリカドル (約30億円) |
1着賞金 | 10,000,000アメリカドル (約15億円) |
世界最高峰の賞金額を誇るレースは、サウジアラビアで開催されるサウジカップです。
2020年に創設された歴史の浅いレースでありながら、サウジカップデーのメインレースとして開催されています。
最強の中距離ダート馬を決める一戦として位置づけられていますが、何よりも注目されるのはその賞金額です。
総賞金は2,000万アメリカドル(約30億円)、1着賞金は1,000万アメリカドル(約15億円)と、他の主要なレースを大きく上回る高額賞金が設定されています。
このレースに勝利するだけで、獲得賞金ランキングで上位にランクインすることも可能です。例えば、2023年のサウジカップを制したパンサラッサは、この勝利だけで一躍トップ10入りを果たしました。
世界的に見ても破格の賞金を誇るだけでなく、近年は円安の影響もあり、サウジカップに挑戦する日本馬も増えています。
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2位:ドバイワールドカップ
開催国 | アラブ首長国連邦(UAE) |
開催競馬場 | メイダン競馬場 |
創設 | 1996年 |
グレード | G1 |
コース | ダート2,000m |
出走条件 | 北半球産4歳以上 南半球産3歳以上 |
負担重量 | 4歳以上:57kg 南半球産3歳:54kg 牝馬2kg減 |
総賞金 | 12,000,000アメリカドル(約18億円) |
1着賞金 | 6,960,000アメリカドル(約10億4,400万円) |
ドバイワールドカップは、アラブ首長国連邦(UAE)で開催される中距離ダートのG1競走です。
1996年に創設されたこのレースは、当時の総賞金400万アメリカドルという破格の金額で注目を集めました。その後、賞金額はさらに上昇し、1200万アメリカドルに達したことで、長らく世界最高の賞金レースとして位置づけられてきました。
しかし、2020年にサウジカップが創設されると、最高賞金の座はそちらに譲ることとなりました。近年は、高額賞金レースの創設や既存レースの賞金上昇により、ドバイワールドカップの賞金はかつてほど突出したものではなくなっています。
それでも、世界最高峰のダート馬を決める一戦という位置づけは揺るがず、地元ドバイ勢に加え、日本、欧州、そしてダートの本場アメリカなど、世界中からダートの精鋭が集結し、見ごたえのあるレースとして現在も高い人気を誇っています。
なお、ドバイワールドカップで勝利した日本馬には、ヴィクトワールピサとウシュバテソーロがいます。ヴィクトワールピサが勝利した年はオールウェザーでの開催だったため、純粋なダートでの勝利はウシュバテソーロが史上初となりました。
3位:ジ・エベレスト
開催国 | オーストラリア |
開催競馬場 | ロイヤルランドウィック競馬場 |
創設 | 2017年 |
グレード | G1 |
コース | 芝1,200m |
出走条件 | 3歳以上 |
負担重量 | 馬齢重量 |
総賞金 | 20,000,000オーストラリアドル(約19億円) |
1着賞金 | 7,000,000オーストラリアドル(約6億6,500万円) |
オーストラリアのジ・エベレストは、2017年に創設された比較的新しいレースですが、世界最高峰の芝競走として位置づけられています。
オーストラリア国内では、歴史あるメルボルンカップを上回る賞金額が設定され、最も権威のあるレースの一つといえるでしょう。
毎年10月に芝1,200mのコースで開催され、世界で最も賞金が高い芝レースであると同時に、トップクラスの短距離重賞としても知られています。
創設当初は格付けのないレースでしたが、1着賞金5,800,000オーストラリアドル(約5億5,100万円)という高額賞金が設定されていたことに加え、有力馬が多数参戦したことから、2024年にはG1に格上げされました。
開催時期が日本のスプリンターズステークスと近いため、これまで日本馬の参戦はありませんが、日本からオーストラリアに移籍したブレイブスマッシュが2017年のジ・エベレストで3着入線しています。
4位:ブリーダーズカップクラシック
開催国 | アメリカ |
開催競馬場 | 持ち回り |
創設 | 1984年 |
グレード | G1 |
コース | ダート10ハロン(約2,012m) |
出走条件 | 3歳以上 |
負担重量 | 4歳以上牡馬:126ポンド(約57,1kg) 3歳牡馬:122ポンド(約55.3kg) 牝馬3ポンド(約1.4kg)減 |
総賞金 | 7,000,000アメリカドル(約10億5,000万円) |
1着賞金 | 3,640,000アメリカドル(約5億4,600万円) |
ブリーダーズカップクラシックは、アメリカで開催される競馬のレースです。
毎年10月下旬から11月上旬に開催され、アメリカ競馬の祭典であるブリーダーズカップワールドサラブレッドチャンピオンシップのメインレースを務めます。
上半期の最強ダート馬を決めるレースがドバイワールドカップだとすれば、下半期の最強馬を決めるのはこのブリーダーズカップクラシックと言えるでしょう。
ブリーダーズカップクラシックの最大の特徴は、毎年開催競馬場を変える持ち回り制を採用していることです。
開催競馬場が毎年変わるため、出走馬のコース適性が問われやすく、連覇を達成した馬は2000年と2001年の勝ち馬ティズナウのみです。
日本馬も参戦していますが、まだ勝利はなく、2023年のデルマソトガケの2着が最高成績となっています。
5位:ドバイシーマクラシック
開催国 | アラブ首長国連邦(UAE) |
開催競馬場 | メイダン競馬場 |
創設 | 1998年 |
グレード | G1 |
コース | 芝2,410m |
出走条件 | 北半球産4歳以上 南半球産3歳以上 |
負担重量 | 北半球産3歳:56.5kg 南半球産3歳:53kg 北半球産4歳以上および南半球産5歳以上:57kg 牝馬2kg減 |
総賞金 | 6,000,000アメリカドル(約9億円) |
1着賞金 | 3,480,000アメリカドル(約5億2,200万円) |
ドバイシーマクラシックは、アラブ首長国連邦(UAE)で開催される芝の中距離レースです。
ドバイワールドカップと同日に開催され、当日の芝レースでは最も賞金が高いレースとなっています。
1998年に創設され、当初はG2でしたが、2002年にG1に昇格しました。2011年からは、従来のナド・アルシバ競馬場からメイダン競馬場に開催場所を移しています。
日本馬との相性が良いレースとしても知られており、ハーツクライ、ジェンティルドンナ、シャフリヤール、そしてイクイノックスが勝利しています。
特にイクイノックスは、2分25秒65のレコードタイムで勝利し、世界リーディングトップの座を単独で獲得しました。
ちなみに、距離が2,410mと中途半端なのは、メイダン競馬場の芝コースが1周2,400mであり、競馬場の構造上の理由からゴール前に発馬機を設置できないためです。
6位:ジャパンカップ
開催国 | 日本 |
開催競馬場 | 東京競馬場 |
創設 | 1981年 |
グレード | G1 |
コース | 芝2,400m |
出走条件 | 3歳以上 |
負担重量 | 定量 |
総賞金 | 10億8,500万円 |
1着賞金 | 5億円 |
ジャパンカップは、日本で最も権威のある国際G1競走の一つであり、1981年に創設されました。
当初は「日本国内で日本馬と世界の強豪馬が競い合うレースを創設する」という目的を持って設立されました。
創設当初は、外国馬が圧倒的な強さを見せていましたが、近年では日本の芝コースの高速化に対応できるスピード豊かな日本馬が台頭し、勝利を重ねています。
一方で、パワー型の海外馬の参戦は減少し、2019年には史上初となる日本馬のみによるレースとなりました。
こうした状況を受け、2022年には1着賞金が3億円から4億円に増額され、翌2023年にはさらに1億円増額され、5億円となりました。
近年、海外の高額賞金レースが増加していることを受けて、ジャパンカップの格式を維持し、国内外の有力馬を誘致するための措置と考えられます。
今後もジャパンカップにどのような有力馬が参戦するのか、注目が集まります。
6位:有馬記念
開催国 | 日本 |
開催競馬場 | 中山競馬場 |
創設 | 1956年 |
グレード | G1 |
コース | 芝2,500m |
出走条件 | 3歳以上 |
負担重量 | 定量 |
総賞金 | 10億8,500万円 |
1着賞金 | 5億円 |
有馬記念は、12月下旬に開催される年末のグランプリレースです。
このレースの最大の特徴は、ファン投票によって出走馬が選出されることです。プロ野球のオールスターゲームを参考にしたこのシステムは、多くのファンに支持され、投票期間中から大きな盛り上がりを見せます。
ファン投票で上位に選ばれた馬は優先的に出走権を得られますが、中山競馬場の芝2,500mというコースは、スピードだけでなくスタミナも求められるため、長距離実績や中山競馬場での実績が乏しい馬は、たとえファン投票で選ばれても出走を回避することが少なくありません。
そのため、年によって有力馬が集まることもあれば、そうでない年もあります。
しかしながら、有馬記念はもともと一年の締めくくりとして開催されていたこともあり、大々的な広告が展開され、普段競馬に触れない人でも有馬記念だけは購入するという人も多くいます。
一年のお祭りとも言える有馬記念は、多くのファンが注目するレースであることに変わりありません。
8位:ゴールデンイーグル
開催国 | オーストラリア |
開催競馬場 | ローズヒルガーデンズ競馬場 |
創設 | 2019年 |
グレード | なし |
コース | 芝1,500m |
出走条件 | 北半球産3歳 南半球産4歳 |
負担重量 | 北半球産3歳:56.5kg 南半球産4歳:57.5kg 牝馬2kg減 |
総賞金 | 10,000,000オーストラリアドル(約9億5,000万円) |
1着賞金 | 5,250,000オーストラリアドル(約4億9,875万円) |
ゴールデンイーグルはオーストラリアで開催される芝1,500mのレースです。
創設は2019年なので歴史の浅いレースです。しかしながら、設立当初から高額レースに指定されており、1着の賞金は約5億円に指定されています。
日本で最も1着賞金の高いジャパンカップと有馬記念も1着賞金が5億円なので、ほとんど差がないです。
創設から長らくグレードの付かないレースとして開催されていましたが、G1申請は行っているようで、2025年にもしかしたらG1昇格するかもしれません。
日本競馬でもそこまで知名度はありませんでしたが、2023年に日本調教馬のオオバンブルマイが優勝したことで一気に注目されるようになりました。
9位:メルボルンカップ
開催国 | オーストラリア |
開催競馬場 | フレミントン競馬場 |
創設 | 1861年 |
グレード | G1 |
コース | 芝3,200m |
出走条件 | 3歳以上 |
負担重量 | ハンデ |
総賞金 | 8,560,000オーストラリアドル(約8億1,320万円) |
1着賞金 | 4,400,000オーストラリアドル(約4億6,100万円) |
メルボルンカップは、オーストラリアで開催される芝3,200mの長距離競走です。
1861年に創設された歴史あるレースで、ジ・エベレストが創設されるまではオセアニア地区で最高の賞金レースでした。
オーストラリア国内では最も格式の高いレースとして知られ、メルボルンカップ開催日は、開催競馬場周辺が祝日になるほどです。
そんなメルボルンカップはG1レースでありながら、ハンデキャップ競走に指定されています。
実績のある馬でも、牝馬であっても重いハンデを背負うことになるため、勝利は容易ではありません。
日本馬は2006年にデルタブルースが優勝しており、2024年にはワープスピードが勝ち馬と僅差の2着に入線しました。
10位:凱旋門賞
開催国 | フランス |
開催競馬場 | パリロンシャン競馬場 |
創設 | 1920年 |
グレード | G1 |
コース | 芝2,400m |
出走条件 | 3歳以上牡・牝馬 |
負担重量 | 3歳:56.5kg 4歳以上:59.5kg 牝馬1.5kg減 |
総賞金 | 5,000,000ユーロ(約7億8,000万円) |
1着賞金 | 2,857,000ユーロ(約4億4,569万2,000円) |
凱旋門賞は、フランスで開催される芝の中距離レースで、世界最高峰のレースの一つに数えられています。
その歴史は1920年に遡り、第一次世界大戦で衰退したフランス競馬の再興を目的として創設されました。国際競走に指定されているため、ヨーロッパ全体から有力馬が集まり、日本馬も1960年以降、度々参戦してきました。
しかし、2024年までに日本馬は32頭(35回)出走したものの、最高成績は2着であり、いまだ凱旋門賞制覇は達成されていません。
日本馬はスピードに長けた馬が多い傾向にありますが、ヨーロッパの芝コースはパワーが求められるため、馬場の違いが好走に影響していると考えられています。
それでも、日本調教馬はこれまでに4回2着に入線していることから、今後悲願の凱旋門賞制覇を成し遂げる馬が現れる可能性は大いにあるでしょう。
競馬のレース賞金ランキングのまとめ
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今回は世界のレース賞金ランキングをまとめました。
今回のランキングトップ10をまとめると以下のような形となります。
順位 | レース名 | 総賞金(円) | 1着賞金(円) |
---|---|---|---|
1位 | サウジカップ | 約30億円 | 約15億円 |
2位 | ドバイワールドカップ | 約18億円 | 約10億4,400万円 |
3位 | ジ・エベレスト | 約19億円 | 約6億6,500万円 |
4位 | ブリーダーズカップクラシック | 約10億5,000万円 | 約5億4,600万円 |
5位 | ドバイシーマクラシック | 約9億円 | 約5億2,200万円 |
6位 | ジャパンカップ | 10億8,500万円 | 5億円 |
7位 | 有馬記念 | 10億8,500万円 | 5億円 |
8位 | ゴールデンイーグル | 約9億5,000万円 | 約4億9,875万円 |
9位 | メルボルンカップ | 約8億1,320万円 | 約4億6,100万円 |
10位 | 凱旋門賞 | 約7億8,000万円 | 約4億4,569万2,000円 |
近年はレースの賞金も上がっている上、為替レートも日々変動しているので、もしかしたら順位の変動があるかもしれません。
それでも、高額であることに変わりないので、今後も世界の舞台で日本馬の活躍に注目したいです。
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